えー……文章が思いつかないのと、普通にあまりの忙しさに身体が動きませんでした。
というわけで第9話でございます。
シナノは書くのが難しく遅くなりがちですが、公開された2205の予告をモチベに書いていきたいと思います。
全13話、そろそろクライマックスに入っていく頃ですね。
では、よろしくお願いします!
「やっぱり、増援の2隻が空母なのが問題ですね……」
「ええ。これだと依然、ガミラスに前線を頼まないといけなくなるわ」
「……ガミラスの損害は免れない……」
楠木の一言で沈黙が流れる。
「……。艦長。意見具申しても」
「そのために呼んだのよ。意見を聞かせて」
「本艦には主砲がありません。その分のエネルギーは、露天駐機やワープの時に飛行甲板を守るためのエネルギーに使われています」
3人が見るモニターにシナノが映し出される。
飛行甲板へのエネルギーの値を示すバーが下がる。
「本艦の飛行甲板の防御能力はこのエネルギーに支えられています。でも、前回の戦闘で本艦のパルスレーザーと艦砲は十分な効果を発揮できていませんでした。だから、本艦の火力を底上げしたい」
代わりに、砲塔と艦首パルスレーザーへのエネルギーが増える。
「艦砲へのエネルギー増加は回路の切り替えでなんとかなります。パルスレーザーはそうはいかない……本来別の回路で動いているものなので、根本的な改造が必要です。戦闘は続きますが、この改造の許可をいただけないでしょうか」
――艦橋。
「飛行甲板、波動防壁へのエネルギー供給を停止しました。これより20cm砲塔への回路切り替え、補強作業を開始します。艦首最上甲板パルスレーザー、1番から順に作業を開始します」
船務長のアナウンスの後、回路が遮断される音が響いた。
窓からは偵察として飛び去るコスモタイガー2個編隊の航跡。
代わりに、偵察に出ていたガミラス機が帰還してくるのが見える。
「ガミラス指揮艦より入電。系外に小規模ながら重力場の乱れを確認」
前回の一件の後、ガミラス側の指揮系統を確立させるため、シナノの下にガミラス指揮艦というものを定めた。
平時は指揮艦を通してやりとりを行い、有事の際は指揮艦を臨時の旗艦とする取り決めである。
また、撤退の際はシナノと地球艦艇が殿となりガミラスを優先的に後退させる事も定められた。ガミラス側はこれに反対したが、沙耶の説得で承認されたのだ。
指揮艦となったのは旗艦能力を持つゲルバデス級であった。これにより、艦隊は2方面作戦をはじめとした柔軟な作戦が可能となる。
「偵察隊へ、ガミラスが観測した重力場の乱れの調査を行え。艦隊は現状を維持しつつ、交戦準備」
尊の指示と同時に、周囲に展開するガミラス艦隊の目がオレンジへと変わる。
「レーダーに感、前方に大規模なワープアウト反応!」
「偵察隊より、敵総数不明ながら、我が艦隊の3倍以上は確実との報告」
「3倍……⁉︎」
動揺の声が響く。
沙耶も眉をひそめたが、艦隊への通信を開いた。
「我が艦隊は、本戦闘を防衛陣形にて行う。各艦は、退路を維持しつつ指定ポイントへ移動せよ。地球側航空母艦へ、艦載機発艦と同時に主砲用意。艦載機は発艦後、艦隊後方に陣取り、砲の射程から離れよ。ガミラス航空部隊は爆装で待機。……生きて帰りましょう」
指示の直後、シナノと2隻の空母は前進して艦載機を飛び立たせる。
2隻の空母が共に主砲塔の用意を始める背後では、シナノを守るようにガミラスの戦闘艦が展開した。
発艦した艦載機はシナノの上へと逃れ、帰投した偵察隊は収容される。
「地球艦隊、艦載機と共に前進。……作戦開始!」
艦隊の艦砲射撃によって敵の前衛部隊は動きを鈍らせ、爆装した艦載機がより深くへと突入していく。
「ガミラス艦隊へ、本艦は現在火力増強作業中のため、砲のいくつが使用不可能となっている。本艦の防衛をお願いしたい」
尊の通信と同時に、遥か前方では爆発の閃光が瞬く。
ガミラス艦隊はシナノを囲む輪型陣を組み、各方向に砲塔を向けた。
その上空を、シナノから発艦した機体が飛び去っていく。
敵の数は強大だが、この艦隊の練度ならば――。
そんな願いは、数時間で潰えた。
戦闘開始から、敵は少ない対空砲で的確に艦載機に命中させて戦力を削っていた。
また大型艦を盾に地球空母の攻撃を受け止め、その間から小型艦を送り込むことで、いとも簡単にシナノとそれを守るガミラス艦隊に肉薄してみせた。
「バレルロール、下に潜った艦を迎撃!」
艦底へ入り込んだ駆逐艦へ巨体を回し、無数の対空砲で艦橋を破壊して無力化したシナノは、くさび型に陣形を変えたガミラス艦隊と共に一転攻勢に出る。
艦隊は砲撃と共に高速で大型艦へ接近し、空母の後退を支援しつつ火力を減らし始める。
艦隊後方へ置き去りにした小型艦は艦載機の雷撃と爆撃の雨を浴びて動きを鈍らせた。
「ケルカピア級と地球空母は回頭、後方の敵艦を――」
「艦前方にワープアウト反応、数は……」
艦橋のモニターには、遥か遠くで、しかし数千隻という数が出現する様子が見える。
「なに……これ……」
思わず立ち上がる沙耶。
「まさかこれまでの部隊は……」
「こちらの戦力を確かめるための……威力偵察……」
「こっちに増援がない事を見越して本気で攻めてきたのね……」
尊と楠木に答え、沙耶は席のパネルを触る。
「……全艦に通達。退路を確保しつつ、できる限り敵の戦力を減らす。殲滅させる必要は無い。各艦は攻撃しつつ、指定座標へワープせよ」
「逃げる……っていう事ですか」
「そう。戦術長も分かっているでしょう、このまま戦っても全滅するだけよ。心配しないで、ちゃんと考えてあるわ」
「……分かりました」
沙耶の微笑みを見て前を見た尊は大きく深呼吸をする。
「本艦と地球空母は波動防壁を展開し、ガミラス艦隊の前面に出る。ガミラス艦隊へ、損害を避けるためにケルカピア級を先頭に装甲の薄い艦種から順にワープせよ。全砲門開け、使用する兵装を実弾とパルスレーザーに限定し応戦する!」
全ての砲身が一斉に敵を捉え、火を放つ。
撃ち出された弾頭は抵抗の無い宇宙を高速かつ直線に突き進み、大質量の艦が持つ分厚い装甲を突き抜けた。
少しの時間を置いて起爆。宇宙にいくつもの光球を作り出す。
「戦闘中のシナノ航空隊はガミラス空母に着艦し、ガミラス艦と共にワープせよ。地球空母は後退、艦載機収容の後で本艦の支援を行え」
指示と共にシナノは、補助エンジンを点火してビームが照らす宇宙を突き進む。
絶え間なく撃たれるパルスレーザーは艦のバレルロールと共に取り囲む艦に損害を与え、時には艦橋に穴を開ける。
一基しかない砲塔は着弾を見届ける事なく発砲を繰り返し、少しずつ、しかし確実に敵の目標をシナノに集めていた。
しかし威力向上の改修が済んでいないパルスレーザーでは艦体の装甲は貫通せず、僅かな凹凸を作るだけ。
一基しかない砲塔が放つ三式弾も、命中精度や破壊力が完璧ではない。
シナノの応戦よりも遥かに多くの艦からの攻撃を受け、艦は黒煙に包まれ始めていた。
後方から散発的に行われる地球空母とガミラス艦隊からの支援砲撃で、なんとか大きな損害は免れているものの、その砲撃も撤退が進むと少なくなる。
全長300m以上の艦艇とは思えない身軽な挙動で戦場を駆けるシナノからは敵を牽制するミサイルや魚雷が断続的に撃たれるが、怯む気配はない。
「弾は惜しむな!」
「艦隊のワープは?」
「残りはゲルバデス級とメルトリア級2隻。今はガイペロン級がワープ中です」
「ありがとう。地球空母へ、砲撃をやめてワープの用意を。蓮、シナノもワープする準備よ」
沙耶の言葉に、蓮は「はぁ⁉︎」と振り返る。
「今エンジンの出力いじったらどうなるか分からないぞ⁉︎」
「分かってる」
「今加速したら、もしかしたらシナノは――」
「そんな事はしない! やってください、機関長!」
背後から聞こえたのは、舵を握る光洋の声。
「……正気?」
「そうしなきゃ沈むんなら、やるしかない」
「攻撃してくる敵艦隊の只中でワープするなんて危険すぎる!」
「そんなの、撤退指示を聞いた時から知ってんだよ! やってやる……無駄にしてたまるか」
「無茶はするもんじゃない。この群れを抜け出た後に加速した方が安全だ」
「今シナノが出れば、地球のフネが狙われる。そんなことさせられない」
「このフネが沈むよりはいいだろ!」
「艦長は……いや、この艦は仲間を守る盾になるって言った。仲間を守るのが、今のこの艦の役目だ」
「何をそんなに……」
「いいからやってください。空母もワープの準備中で無防備なんです。今やらないと」
「アンタの肩にどれだけの命がかかってるから分かってんの?」
「分かってるつもりです」
強く、舵を握りしめる。
「……絶対に、トチったりしない」
「っ……どうなっても知らないからね」
「生きてたら、俺を殴ってもらって構いませんよ」
「その言葉、忘れんなよ?」
席に戻った蓮は、そのままパネルを触りエンジンに流すエネルギーを上げる。
敵の艦をすり抜け、太陽の方へ艦首を向けると、眼前ではゲルバデス級がワープしたワームホールとエンジンから青い光を放つ2隻の空母の姿があった。
「ワープ20秒前!」
「ミサイル、魚雷発射管全門発射! ワープに備えよ!」
近づく敵に全てのミサイルと魚雷を放ったシナノは、眼前に開いた空間に向かって加速を始める。
「ワープ10秒前!」
空母2隻がワープした光を追いかけるように、左右を流れる敵艦の中を突き進む。
時折被弾する衝撃をものともせず、壁のように立ちはだかる艦から解き放たれた刹那――。
――一際大きな爆炎が、宇宙を照らした。
第11番惑星の軌道上にワープアウトしたゲルバデス級は、即座に目視で味方艦が全ている事を確認した。
後続でワープしてきた地球の空母へ「我らガミラス、全て健在」という光信号を送るが、旗艦の姿が見えない事で艦内は騒然となった。
離脱のため甲板に着艦させていたコスモタイガーを全て発艦、艦を回頭してその時を待つ。
時としては、もしかしたら短い時間だったのかもしれない。永遠に感じるその時を耐え、拳を握る。
地球空母の甲板に待機場所を移したコスモタイガー全機は格納庫には入らず、固唾を飲んで見守っていた。
宇宙はただ漆黒で、沈黙していた。
時が止まったのかもしれない。
もしかしたら今見ているこの景色こそ、相転移した後の世界なのか?
そんな、ありえないはずの仮定をも考えてしまうほどに時間が経ったその時、静寂は、破られた。
突如宇宙が瞬き、そこから吐き出されるように現れた凍りついた巨体は自ら静止する事もできないかのように勢いのまま流れ始めている。
まとわりついていた氷は砕けているが、明らかに正常ではない。
「牽引ビームを! ここにいる全艦で止めれば止まる!」
飛んだ声にガミラス艦が動き始める。
しかし。
僅かに輝き始めたノズルは勢いよく炎を噴き出し、艦はスラスターを作動させて姿勢制御を開始したのである。
先程まで消えていた艦橋の明かりが付くのと同時に、通信が届く。
『全艦へ通達。各艦の損害や未確認艦を報告せよ。シナノは健在なり』
「あれは……波動砲……でしたよね」
「ええ、救援のね」
第11番惑星をのぞむ艦橋の中で、尊は振り返る。
「救援?」
「ええ。なんの代役もなしに私達があそこを離れたら、それこそ地球はおしまいよ。私達の居場所も突き止められてしまう。だから、私達が立て直すまでの間止めていてもらわなくちゃ」
「そういう事だったんですね」
答える尊の視界の端に、蓮に腕を掴まれた光洋が連れられていくのが見えた。
「……大丈夫かな?」
「心配はいらないと思うわ。多分ね」
シナノへ戻ってくる機体が窓の外に見える。
ガミラス指揮艦からの「我が艦隊の喪失艦無し」の報告を受けて微笑み、沙耶は帽子を取った。
艦橋の主幹エレベーターを出た2人は、廊下の片隅で向かい合う。
「結果としてうちらは無事だったわけだけど」
「はい」
「まあまあ、そんな固くならなくても。べつに説教しようってんじゃないし、殴る気もないからさ」
にへらと笑う彼女に肩の力が抜ける。
「まあどっちにしろ、この後11番惑星に入港したら点検に修理に改修に忙しくなるんだ。でも飛べないからアンタ、暇になるだろ?」
「……あー、多分」
「って事で、うちに付き合え! やる事がいっぱいあって手が回らないんだよ」
「分かりました。罪滅ぼしもかねて、ですね」
「罪滅ぼし……まいっか。そんなことで、よっろしくぅ〜」
ひらひらと手を振ってそこから立ち去る蓮を見送り、光洋は艦橋へ戻った。
シナノはガミラス艦と空母と共に、第11番惑星へと降り立った。
シナノがこの宙域で演習を行なっていた頃に使っていたドックに再び戻り、修理と改修が始まった。
雪辱を果たすために。
――第9話 「防衛ライン」――
ありがとうございます!
艦載機、もっと活躍させないと……。
もしよろしければ、残りの話数もよろしくお願い致します。