リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生   作:M.T.

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第1章 非日常編③

「…そうだよ。全部、僕がやった。」

 

法正君は、顔を真っ青にしながらも、微笑んで言った。

 

『うぷぷ…どうやら、結論は出たようですね?…ではでは、投票ターイム!!みんな、手元にあるボタンを押してねー!?』

 

スイッチには、全員の名前が書かれている。

 

…本当に、投票していいんだろうか?

 

ためらっていると、法正君が言った。

 

「ほら、迷う事はないだろ?…クロはもう決まったんだ、早く投票してよ。」

 

…最後の最後まで、あたしはボタンを押せずにいた。

 

結局、たった一人の尊敬する人の命と、あたしを含む他の14人の命を天秤にかけた結果、

 

あたしは法正君に投票した。

 

『ではでは?結果発表ー!』

 

モノクマの座る椅子の前からスロットマシーンのようなものがせり上がり、生徒の顔を模したドット絵が描かれたルーレットが回った。

 

法正君の顔が三つ揃ったところでルーレットが止まった。その下にはGuiltyの文字が浮かび上がり、スロットマシーンからは大量のメダルが出てきた。

 

『うぷぷぷ、お見事だいせいかーい!!『超高校級の芸人』明石 大吉クンを殺害したのは、『超高校級の軍師』法正 良馬クンでしたー!!』

 

「ふざけんなぁあああああああああ!!!」

 

九十九君が、大声を張り上げて泣き叫ぶ。

 

『ふざけてんのはオマエの名前でしょ?ボクは別にふざけてなんかないし!…投票したのはオマエラじゃん!ちなみに、今回は満場一致で法正君クンに投票してたよ!』

 

「…まあ、こうなるよねー。」

 

魅神君が平然とした顔で言った。

 

「リョー君…どうして…」

 

奴目さんは、ポロポロと涙を零して問いかけた。

 

「…恐らく、夏川様を守ろうとしたのでしょう。」

 

銀杏田君が冷静に説明を続けた。

 

「…明石様には、どうしても外に出たい理由がおありだったのでしょう。ですから、夏川様を殺して外に出ようとしていらっしゃったのでございます。」

 

「じゃあ、なんでメグメグが狙われたの!?メグメグになんか恨みでもあったわけ!?」

 

「…簡単だよ。一番殺しやすかったから。」

 

魅神君が説明を続けた。

 

「…これは自論だけど、殺人鬼に狙われやすい奴の条件って、二つあるんだよねー。…一つは、身体の健康状態が逃げるのに適していない事、もう一つは、他人の話を警戒せずにホイホイ聞き入れちゃうバカ正直のお人好しだって事。…この条件をカンペキに満たしてたのが、たまたま夏川ちゃんだったってだけの話。」

 

黒須君が付け足すように言った。

 

「…確かに、夏川さんは頭部を負傷しています…もし、明石君に襲われていたら、咄嗟に身を守るのは難しかったでしょうね。」

 

…そんな。確かに、明石君には妹さんがいる。殺人という発想に行き着いてしまうのも、仕方なかったのかもしれない。

 

…でも、『殺しやすかった』…たったそれだけの理由で、あたしはあの人に命を狙われたのか。

 

「…だけど、それが、法正クンを怒らせる最大の原因になっちゃったんだよねー。」

 

「…どういう事?」

 

アーニャちゃんが質問をした。

 

「察しが悪いなー。法正クンは、夏川ちゃんを気に入ってたんだよ。だから、誰かに殺されるのは許せなかった。…そうでしょ?」

 

「…どうやら、話すしかないみたいだね。」

 

法正君が、観念したように言った。

 

あたしは、法正君に、気になっていた事をぶつけた。

 

…わからなかった。なぜ、法正君があたしなんかのために、手を汚さなきゃいけなかったのか。

 

「法正君…どうして…!…どうしてあたしなんかのためにこんな事…!」

 

 

「…好きだから。…好きだから、夏川さんには生きて欲しかったんだ。…そのために、僕は明石君を殺した。」

 

法正君は、哀しい笑みを浮かべた。

 

「そんな…!」

 

金剛寺さんは、口を両手で覆いながら驚いていた。

 

『ねえ、オマエラいつまでその茶番続ける気?そろそろおしおき始めたいんですけどー?』

 

「やだ…お願い、やめて…やめてやめてやめてやめて…!!そうだ、モノクマ!あたしにおしおきしてよ!!だって、悪いのは全部あたしじゃん!!あたしが甘かったから…あたしが、明石君を殺したんだよ!!」

 

あたしは、泣き崩れながらモノクマに懇願していた。

 

『ダーメ!!もう投票結果で法正クンがクロに決まっちゃったんだから、今更おしおきの対象の変更はできないよ!!』

 

「やだ…やだやだやだ‥!!お願い、お願いします!!法正君を殺さないで!!なんでもするからぁああああ!!!」

 

 

「夏川 メグ!!!」

 

叫んだのは、法正君だった。

 

 

ピシャッ

 

法正君は、あたしの右頬を叩いた。

 

「今君がすべき事はこんな事じゃないだろ!!今、君が本当にすべき事を考えろ!!!」

 

「…僕のために泣いてくれたのは嬉しかった。ありがとう。…でも、これからは違うだろ?僕がいなくなった後、みんなの『希望』になれるのは君しかいないんだ!」

 

「何言ってるの…そんなの、法正君がいなきゃムリだよ…」

 

法正君が、あたしを抱き締めた。

 

「…夏川さんと過ごした時間、本当に楽しかった。ありがとう。…後を頼む。」

 

「っうわぁああああああぁあああああああぁあああああああああ!!!!」

 

◇

 

…ここに閉じ込められてから、ずっと不安だった。

 

ここから一生出られないんじゃないか、そんな絶望が僕の中で膨れ上がっていた。

 

…そんな中で、君に出会った。

 

君は、絶望の中に沈んでいく僕を照らしてくれた。

 

そんな君に、僕は生まれて初めて恋をした。

 

 

…君は、僕の『希望』だ。

 

君がいたから、希望を抱けた。

 

みんなで一緒に脱出したい、そう思えた。

 

…でも、それを壊そうとする奴がいた。

 

明石君だった。

 

…彼には、彼なりの理由があったのかもしれない。

 

それでも、『希望』だけは失うわけにいかないんだ。

 

『希望』を守るためなら、僕が悪魔にならなきゃいけない。

 

君のためなら、たとえこの手を汚しても、一生罪を背負っていくことになっても構わない。

 

…ただ、君が生きてくれさえすれば。

 

 

気がつくと、僕は明石君を殺していた。

 

その瞬間、僕は魔が差してしまった。

 

…死にたくない。

 

その一心から、証拠を隠滅し、裁判でみんなを欺いた。

 

そんな僕のために、君は泣いてくれた。

 

その事が、何よりも嬉しかった。

 

だから、僕は笑って死を受け入れることにした。

 

僕は十分、君にもらった。

 

その全てを返し切れなかったのが心残りだけど、僕は満足だよ。

 

君がいるから、僕は最期まで笑っていられたんだ。

 

…ありがとう。

 

◇

 

『『超高校級の軍師』法正 良馬クンには、スペッシャルなおしおきを用意しました!…ではでは、おしおきターイム!!』

 

「じゃあね、みんな。」

 

「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

モノクマがハンマーを振り上げると、赤いスイッチがせり上がってきた。

 

モノクマは、スイッチをハンマーで押した。

 

 

GAME OVER

 

『ホウセイくんがクロにきまりました。 オシオキをかいしします。』

 

 

◇

 

 

法正の首に首輪がつけられ、ワイヤーのようなもので引きずられる。

 

法正が裁判場の外まで引きずられると、映像が流れる。

 

そこには、おしおきの続きが映っていた。

 

法正は、古代中国の屋敷のような部屋まで引きずられる。

 

法正は、巨大な白い駒のようなものに磔にされ、巨大な碁盤のようなものに、他の駒と一緒に整列させられる。

 

 

そして、画面中央にタイトルが浮かび上がる。

 

 

参國死 法正の乱

 

 

法正が磔になった駒は、軍師の格好をした巨大なロボットに掴まれ、碁盤に勢いよく叩きつけられる。

 

法正は、叩きつけられたダメージで大怪我を負い、血反吐を吐く。

 

対する軍師の格好をした巨大なモノクマが、黒い駒を置く。

 

駒の打ち合いは数十回繰り返され、法正は満身創痍になっていた。

 

全身の骨は折れ、血まみれになり、胴体からは臓器や折れた肋骨が飛び出ている。

 

ロボットに負けそうになった巨大モノクマは、怒って碁盤をひっくり返す。

 

その衝撃で法正は吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられて絶命する。

 

その直後、真上に碁盤が落下してきて、法正の死体が下敷きになる。

 

碁盤の下からは、血が流れ出た。

 

頭から漫画チックな湯気を出しながら腹を立てている巨大モノクマは、碁盤を蹴っ飛ばして部屋を後にする。

 

 

 

◇

 

 

 

映像が終わった。

 

「あ…あああ…あああああ…」

 

体には、まだ法正君の温もりが残っている。

 

…さっきまで、生きてたのに。

 

あたしに、微笑みかけてくれてたのに。

 

 

法正君が、死んだ。

 

あんなにあたしに優しくしてくれた法正君が…あたしの、一番尊敬していた人が、あたしの目の前で死んだ。

 

…まだ、全然恩返しできてなかったのに。

 

まだ、話したい事がたくさんあったのに。

 

…今から悔いても、もう遅かった。

 

彼は、もうこの世のどこにも存在していない。

 

たった今、死んでしまった。

 

…いや、死んでしまったんじゃない。

 

あたしが、殺したんだ。

 

あたしが甘えていたから、法正君は手を汚した。

 

あたしが明石君の殺意に気がついていれば、法正君は死ななかったかもしれない。

 

…気づけなかった。止められなかった。何も、できなかった。

 

他の誰でもない。あたしが、あたしの甘さが、彼を死に追いやったんだ。

 

 

あたしは法正君の死を嘆き悲しみながら、無力な自分を呪っていた。

 

「嘘でしょ…」

 

「マジかよ…こんな残酷な方法で殺されんのかよ…」

 

「いやだよぉ…こんな死に方したくないよぉ…パパ、ママァ…」

 

「…下衆が。」

 

奴目さん、佐伯君、真樹さん、宇田川君が声を漏らした。

 

「…!」

 

相浦さんは、体をガタガタと震わせ、失禁していた。

 

『うぷぷぷ、相浦さんってば高校生にもなってお漏らし?はしたないなぁ。あんまり神聖な裁判場を汚さないで欲しいんだけど。』

 

相浦さんは、涙目でモノクマを睨みながら震えた声を振り絞って言った。

 

「…あ、あなたはこんな事をして何が面白いの…?」

 

『うーん…そう言われてもなぁ。ボクはただ、『絶望』が大好きなだけなんだ!…それにしても、法正クンのあの無様な死に方…いやあ、ドキドキワクワクが止まりませんなぁ。オマエラ、よくやったよ!ご褒美に、モノクマメダルをプレゼントしちゃいま〜す!じゃっあね〜!』

 

悲しむあたしたちには目もくれず、モノクマは上機嫌で去っていった。

 

「…相浦君、大丈夫か?」

 

宇田川君が、相浦さんを心配していた。

 

それ以外のみんなは、一言も声を発さなかった。

 

あのアーニャちゃんでさえ、目を背けながら俯いている。

 

…でも、一人だけその静寂を打ち破る男がいた。

 

「ぷっ、くくくっ…あぁ、やべっ…笑いが堪えきれねーわ…ぶふっ…ぷくくっ…あはっ…あははっ…あーっはっはっはははははははははははは!!いいねえ…最高だねえ!!これこそ最ッ高のエンターテインメントだァ!!!」

 

…魅神君だった。

 

「ふざけるなぁああああああああああああ!!!何がおかしいんだ貴様!!!」

 

九十九君が、魅神君の胸ぐらを掴んで大声で叫んだ。

 

「おいおいお〜い!お前らさあ、なんかスッゲー通夜みてえな雰囲気醸し出してますけど?なんか忘れてる事ねぇか?」

 

「…何よ、それ。」

 

あたしは怒りのこもった声で聞いた。

 

仲間の死を嘲笑うこの男が、許せなかった。

 

「法正は、明石クンを殺したんだぜ!!?その殺人鬼が処刑されたんだ、もっと喜ぶべきだと思いまぁあああ〜す!!!」

 

「どこまで腐ってんだテメェ!!!」

 

佐伯君も声を荒げた。

 

「…知ってんだよ。お前ら一般人は、極悪犯罪者の死刑が決まるのを望んでんだろ?『そんな奴早く死刑にしてくれ』って、ピーピーピーピーうるせぇっつーの!それで、死刑が執行された途端、喜んでやがる…それなのに、今法正の処刑を悲しんでるのはどう考えてもおかしくないですかぁあああ〜!!?やった事は、そいつらと大して変わんねぇよなぁ!!?」

 

「貴様あああああああああああああああ!!!」

 

「…もうやめて!!」

 

叫んだのは、相浦さんだった。

 

「…もう、やめてください…これ以上、人が死ぬのはもう…耐えられないです…」

 

「…チッ。あー、もういいわ。萎えた。あとは勝手にやってろ。」

 

魅神君は、一足先に裁判場を後にした。

 

再び静寂が戻った。

 

誰も、立ち上がる気にはなれなかった。

 

 

「みんな、いつまでも悲しんでる時間はないよ!」

 

気づくと、口が動いていた。

 

真樹さんが、あたしに言葉をぶつけた。

 

「あ、アンタ…ホウセイが死んだんだよ!?…なのになんで…」

 

「だからこそだよ。あたしたちは、法正君の死を無駄にしちゃいけない。…彼はあたしに言ってくれた。『後を頼む』って。だから、法正君の分まで、前を向いて生き続けるんだ!!…それが、彼があたしに遺してくれた、最初で最期の願いだから。」

 

その言葉を受けて、みんな立ち上がった。

 

こうして、全員裁判場を後にした。

 

どんなにつらい事が待ち受けていたとしても、あたしたちは立ち向かい続けなきゃいけない。

 

…そう、深く心に刻んだ。

 

 

 

 

 

第1章『全ては希望のために』ー完ー

 

【生徒数】 残り14名




ここでどうでもいい裏話。

夏川ちゃん、明石君、法正君の初期設定のお話です。

・夏川ちゃんは、初期設定では男でした。
…しかし、男性側で登場させたい超高校級が多すぎたのと、命がけのデスゲームの中で頑張るJKを書きたくなったので、女の子に変更しました。
原案は、原作の苗木君に近い感じでした。

・明石君の初期設定は、【超高校級のピエロ】でしたが、原案のイメージ図がモロヒ●カになってしまったので、ボツにしました。そこで、人を笑顔にする職業という事で、【超高校級の芸人】を採用する事にしました。

・法正君の初期設定は、【超高校級の天才】という万能キャラでしたが、既に銀杏田君という万能キャラがいたのと、万能すぎるキャラを準主人公にするのはどうなのかと考えた結果、頭脳で主人公をサポートする役割へとジョブチェンジさせました。

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