リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生 作:M.T.
第2章(非)日常編①
『アンタ、新入生か?初っ端から遅刻はアカンで?』
『落ち着いて、君、新入生だろ?僕も同じなんだ。』
二人の声が、響き渡る。
二人が、笑いながら手を振っている。
待ってよ、そんなに急かさないでよ…今そっちに行くから…
次の瞬間、目の前が真っ赤に染まり、耳障りなノイズが流れる。
ザッ…ザザッ…ザザーーーーーーーーッ
視界が切り替わったと思うと、首を吊った明石君と、潰れて肉塊になった法正君が視界に映る。
…あれ…?…なんで…?
『うぷぷ…うぷぷぷぷぷ…!!』
不快な笑い声が聞こえる。
◇
「はっ…!」
目が覚めた。
昨日の記憶が曖昧だ。
どうやら、あたしは部屋に戻った後疲れて眠ってしまったらしい。
鏡を見ると、目が腫れて、涙の跡がくっきり残っていた。
…泣き疲れて寝ちゃったのか。
『オマエラ、7時です!今すぐ全員起床するように!!』
…そっか。もう朝か。
あ、そうだ!今日の朝ごはん何だろ?
法正君と明石君はもう食堂に向かってるのかな?
二人を呼びに行こっと!
「法正く…」
…思い出した。
…そっか、もういないんだった。
あたしは、重い足取りで食堂へと向かった。
◇
食堂に向かうと、何人かを除いて、一通りみんな集まっているみたいだった。
…相浦さんと奴目さんは来ていなかった。
他のみんなは、ほぼ全員やつれていた。
唯一魅神君だけは、いつもより肌に艶があった。
このままじゃいけない。そう思ったあたしは、無理矢理声を絞り出した。
「おっはよー!!みんな!!」
…スベった。…そりゃそっか。あんな事があったんだもん。元気になんてなれないよ…
そんな時だった。
「…おはようございます。」
朝食の準備をしていた銀杏田君が、笑顔で返してくれた。
「おはよう!!!」「おっはよー!」「おはようございます。」
続けて、みんなが挨拶を返してくれた。
銀杏田君が、朝食を作ってくれた。
「いただきます。」
あたしは、朝食を口の中にかき込んだ。
いつまでも落ち込んでちゃダメだ。
とにかく、今は今後のためにたくさん栄養をとっておかなきゃ。
「ごちそうさまでした!」
「…あら、夏川さん。ご飯粒付いてますわよ。」
向かいの席の金剛寺さんが、左頬を指差しながら言った。
「えっ!?嘘?どこどこ?」
みんなの中で、笑いが溢れた。
…よかった、笑う元気はあるみたいだな。
◇
朝食の後は、報告会を開いた。
朝食に来なかった相浦さんと奴目さんも、報告会には出席していた。
銀杏田君は、朝食を食べていない二人のために、軽めのデザートを作ってあげていた。
「ねえ、そういえば…」
小林さんが、話をした。
「…なんか、2階が行けるようになってたのだ!!」
「えっ、ホント?」
真樹さんが聞き返した。
「うん、ホーコクカイの後は、みんなで探検なのだ!!」
◇
2階の探索が終わった。
2階には、図書館とプールとトレーニングルームがあった。
寄宿舎の方は、大浴場と倉庫が解放されたようだ。
物置が既にあったが、それとは多分別のものだろう。
プールを真っ先に見つけた小林さんは、「泳ぎに行こう」と上機嫌だった。
あたしは更衣室を調べる事になった。
更衣室の扉は、鍵がかかっていて開かない。
『更衣室の鍵を開けるには、電子生徒手帳をカードリーダーに重ねてください!』
モノクマが後ろから現れた。
「…その現れ方、心臓に悪いからやめてよ…」
『いやあ、失敬失敬。』
モノクマは反省していない様子だ。
更衣室を見て、佐伯君あたりなら良からぬ事を考えそうだな、と考えた時だった。
『あ、そうそう。仮に男子が女子更衣室に、女子が男子更衣室に入ろうとした場合は、ガトリングガンで蜂の巣にしちゃうからね!』
ふと上の方を見ると、ガトリングガンがぶら下げられていた。
(…物騒だな。)
『あ、それと今後は電子生徒手帳の他人への貸与を禁止します!』
「…なんで?」
『なんでもどうしてもWhyもないの!とにかく決められたルールを守っとけばいいんだよ!…じゃーね!』
(…なんなんだ。)
更衣室を調べてみたが、特にこれといっておかしなところはなかった。
男性アイドルユニットのポスターが目に留まったくらいだろうか。
◇
一通りみんなが探索を終えた後、報告会を開いて情報を共有した。
「みんな、どうだった?」
「倉庫は、お菓子とかインスタントラーメンとか色々入ってたよ!」
「…1階にあった物置のデカい版ってとこね。」
報告したのは、奴目さんと真樹さんだった。
「図書室でノートパソコンを発見しましたわ。」
「後で、相浦様に見ていただく予定でございます。」
報告したのは、金剛寺さんと銀杏田君だった。
「…他のみんなは?」
「余は浴場を見て回ったが、特におかしな所はなかったぞ。以上じゃ。」
「男子の浴場の方も、特に変わった点は…」
報告をしたのは、千葉崎さんと黒須君だった。
「…ねえ、男子更衣室はどうなってた?」
右隣に座っていた魅神君に振ってみた。
「んー…特に変わったところはなかったかなー。強いて言うなら、グラドルのポスターがあったくらい?…まあ、佐伯クンはあんな写真如きでコーフンしてたみたいだけど?」
「う、うるせぇな!余計な事報告すんな!」
佐伯君は、恥ずかしくなったのか、コップに入ったコーラを勢いよく飲み干した。
呆れながら見ていると、暑苦しい声が響き渡った。
「やあ!!みんな、おまたせ!!!」
珍しく、九十九君と小林さんが遅刻してきた。
二人とも、汗をかいているようだ。
「…すごい汗の量だね。」
「暑苦しいんだよお前ら。流石に、お前らに蒸し殺されるのだけはごめんなんだけど〜?」
不謹慎な発言をした魅神を小突き、質問をしてみた。
「…どうしたの、そんなに汗かいて。」
「…いやあ、実は、トレーニングルームで鍛えていたんだ!!そしたら夢中になってしまって、時間を忘れてしまったというわけさ!!!」
「えへへ、楽しかったのだー!!」
「そのまま脱水起こして死ねば良かったのに〜。」
グリッ
腹の立つ発言だったので、あたしは魅神君の足を踏んづけた。
「痛ったぁ〜い。」
◇
部屋に戻ろうとした時、法正君の部屋の前を通った。
鍵は空いていた。
なんでもいい。彼について、何か知りたい。
そう思ったあたしは、部屋の中に入った。
部屋の中は、綺麗に片付けられ、余計なものは散らかっていなかった。
あたしは、部屋のゴミ箱に捨ててあるDVDに目がいった。
DVDを持って、視聴覚室に行った。
DVDをデッキにセットして、見始めた。
和室が映った。
そこには、法正が、同い年くらいの少年と将棋をして、それを他の子供達と、着物を着た60代くらいの男性が観戦している様子が映っていた。
「…参りました。」
「スゲー!良馬、これで1000連勝じゃん!!」
「大したことないよ。」
「…法正君、田辺君。また腕を上げましたね。見事でしたよ。」
男性が、二人に拍手をおくった。
「…ありがとうございます。」
笑顔の法正が映った。
その瞬間画面が切り替わり、荒らされた和室が映った。
障子は血飛沫で赤く滲んでいた。
…そして、子供達が血を流して倒れていた。
最後に、血塗れになった男性の手が映った。
『地元の将棋教室に通っていた法正 良馬クン!そこには、同じように将棋に励む子供達と、彼の軍師の才能を育てた、彼の人生で最高の恩師と言える先生がいました!…いやあ、あの天才はここで育ったんですねえ。…ですが、どうやら教室は閉塾してしまったようですね?ではここで問題です!将棋教室の閉塾の理由とはっ!?正解発表は『卒業』の後で!』
映像を見終わった後、あたしはDVDを叩き割っていた。
…気分の悪いものを見てしまった。
部屋に戻ろう。
あたしは視聴覚室を後にし、部屋に戻った。
◇
部屋に戻ったあたしは、シャワーを浴びようと、腰のブレザーを解いた。
すると、一枚の紙切れが落ちた。
「…こんなもの、持っていなかったはず…もしかして、法正君がハグした時に忍ばせてたのかな…」
紙を開いてみた。
手紙だった。
拝啓 夏川さんへ
まず、僕から謝らなければならない事があります。
僕は、明石君を、仲間を殺してしまいました。
そのため、僕はみんなより一足先に『卒業』する事になります。
みんなを裏切ってしまった事を、許して欲しいとは言いません。
ただ、あなたに伝えたい事をいくつかまとめておきます。
まず外に出たら、外から脱出方法と、黒幕について探ってみます。
無事脱出方法が見つかったら、みんなで脱出してください。
僕は、黒幕を見つけて捕まえたら、先生達と家族の安否を確認して、
それが終わったら自首するつもりです。
黒幕については、ある程度探っておいたので目星はついていますが、
まだ伝える事はできません。無事出られたら、全て話します。
それから、僕が出て行った後に、みんなをまとめる上で守ってほしい
アドバイスを、いくつかリストアップしておきました。
それを読んで、みんなを導いてあげてください。
最後に、厚かましいお願いではありますが、もし、犯した罪を償えたら、
その時はまた僕を仲間に入れてください。
しばらくの間会うことはできませんが、どうかお元気で。
法正 良馬より
手紙を読み終わった。気がつくと、涙が溢れていた。
学級裁判が無ければ、法正君は外に出られたはずだったんだ。
あたしは、急いで法正君の部屋に向かった。
◇
引き出しには、ホッチキスで留められた紙の束が入っていた。
そこには、法正君の手書きの字で、あたしがやるべき事について事細かにアドバイスが書かれていた。
…あたしは、何もしてあげられなかったのに。
一体、どれだけ遺せば気が済むんだ。
涙が、とめどなく溢れ出た。