リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生 作:M.T.
封筒の中の紙には、こう書かれていた。
『夏川さんは、中学生時代、同級生からいじめを受けていました!』
…やめて。
なんでそんな事知ってるの…?
思い出したくない、あの記憶ー…
中学校に上がってすぐの事だった。
同じクラスで、幼稚園の頃からの幼馴染みの女の子が、いじめられた。
元々引っ込み思案で、ノーと言えない子だったから、いじめのターゲットにちょうど良かったんだろう。
彼女をいじめていたのは、同じクラスの、リーダー格の女子だった。
…でも、見ていられなくなったあたしは、言ってしまった。
「やめて、やめてよぉ…!」
「うるせえんだよ、口答えすんなブス!!ぎゃははははは!!」
「お前なんか死んじまえ!!」
「死ーね!死ーね!」
「ちょっと、やめなよ!!」
「…あ?何よ、あんた。」
「メグ…ちゃん…」
「…君たち、カッコ悪いよ!こんな事して、最低だと思わないの!?」
「ふーん、あたし達にそんな口利くんだ?…明日から、どうなっても知らないわよん?」
「…え。」
クラスのリーダー格の女子に、逆らってしまった。
その日から、いじめのターゲットがあたしになった。
最初は無視されるだけだったが、だんだんエスカレートしていった。
私物を隠されたり、壊されたり、汚されたりした。
肝試しと称して学校の屋上から突き落とされて、入院もした。
病院には、あたしが助けてあげた親友がお見舞いに来てくれた。
「…エミ!」
「…。」
ベチャッ
「…え?」
その子は、持ってきた果物をいきなりあたしの顔に投げつけた。
「…こうしないと、またいじめられるんでしょ…?…あの時、私を助けた気でいた…?…目障りなのよ、あんた…」
頭の中が真っ白になった。
ずっと信じてた親友に裏切られた。
その後、ずっといじめが続いた。
他のクラスメイトも、先生も、誰も助けてくれなかった。
心配かけたくなかったから、お父さんとお母さんには言えなかった。
お父さんとお母さんだけはあたしに優しくしてくれたのが、唯一の救いだったのかもしれない。
それ以外の人は、全員あたしの敵だった。
今思えば、あたしが人の顔色を伺う事を覚えたのは、この時からだったと思う。
それができなきゃ、苦しい思いをする日々だったから。
それから数ヶ月後、あたしは家の都合で引っ越した。
転校先の学校では、友達ができて、それなりに平和にやっていけた。
いじめられていた事は、誰にも言えなかった。
言ったら、新しく築いたものが全て台無しになると思った。
…いじめられていた事、それがあたしの誰にも…大好きな家族にさえ言えない秘密だ。
顔を上げた。
他のみんなは、あたしと同様「なんで知ってるんだ」と言いたげな表情だった。
そして、中身を確認し終わった人は、誰にも見られないように素早く封筒に戻していた。
みんな、さっきの夕食の時とは打って変わって暗い面持ちだった。
『みんな、確認し終わったみたいだね!じゃあボクはそろそろおいとまするよ。じゃっあね〜!』
モノクマは去っていった。
モノクマが去った後は、静寂が訪れた。
みんな、お互いに顔を合わせようとはしなかった。
どうしよう。また、動機DVDの時と同じになってしまう…
そう思った瞬間だった。
「わたくし佐伯 虎太朗は、小学生の時体重が100kgあって、みんなから百貫デブって呼ばれてました!!!」
佐伯君は、自分の秘密が書かれた紙を、顔を真っ赤にしながらみんなに見せていた。
「…なんの真似だ?」
さすがのアーニャちゃんも、理解不能な言動に驚いていた。
「…なんか隠し事してたら、もしかしたら後になって、変な気を起こしちまうかも知んねえだろ?だから、今のうちに秘密を打ち明けておこうって思ったんだよ。」
…なるほど、自分から殺人の動機を無くしておくって事か。
それに続くように、他の人も秘密を暴露し始めた。
「オレは、小学校の頃好きだった女子に、『汗臭い』ってフラれたぞ!!!」
「ボクは、ちっちゃい頃はクラスで一番ケンカが弱かったのだ!!」
「…仕方ありませんね。隠し事は、主も望んでいらっしゃいません。私は、幼少の頃に我らが父への祈りを怠って隣町まで遊びに行き、そのまま迷子になって帰れなくなった事があります。」
…最後のは、秘密にしておくほどの事か?…まあ、真面目な黒須君の事だから、お祈りをサボった事は隠しておきたかったんだろうけど…
「…よ、余は…小学校の頃コスプレにハマっておったのじゃ…」
千葉崎さんは、耳まで真っ赤にしながら暴露した。
「…ぼ、僕は、実はボイスパーカッションが趣味でして…毎晩部屋でこっそり練習しているんですよ…」
宇田川君は、メガネを押さえて小刻みに震えながら暴露した。
(…え゛?あの宇田川君が、そんな趣味を…?めっちゃ意外…)
「え…嘘でしょ…はっず…」
真樹さんが引き気味に言った。
「ねー宇田川クーン!今ここで練習の成果見せてよー!ほらボーイーパ!ボーイーパ!」
魅神君が手を叩きながら冷やかした。
「…死にたい。…死にたい。…今すぐ誰か殺してくれ…お願いします…」
宇田川君は、小刻みに震えながらブツブツと呟いた。
(そんなに恥ずかしいなら言わなきゃ良かったのに…)
「…あ、あの…私はこれです…」
相浦さんが、自分の紙を見せた。
『相浦さんは、中学生の時理科のテストで満点を逃した事があります!』
(…秘密にするほどの事か?)
「それが、相浦さんの秘密…?」
相浦さんが、恥ずかしそうに頷いた。
「…いや、別にそんなに恥ずかしい事じゃなくない?」
「貴女にはわからないでしょうね。それまで一度も満点以外の点数を取った事がない人の気持ちなんて。」
宇田川君が言った。
…なんか腹立つ言い方だと思ったのはあたしだけだろうか?
まるで人をバカみたいに…
「いや、でも、相浦さんの事だから、満点に近い点数は取ってたんでしょ?すごいじゃん!あたしなんて、逆に満点取った事なんて無いし…」
「…ありがとうございます。」
相浦さんは、嬉しそうに微笑んだ。
「そうだ、あたしの秘密も教えてあげる!…あたし、実は中学生の時いじめられてたんだ。」
「…え?」
みんなが驚いた。
「いつまでも隠しててもしょうがないからね、うん。もう隠し事はナシにした!」
みんな、口を開けてポカンとしている。
「あれ?どうしたの?」
「いやいや!なんか…急にデカイのきたから!!…なんかゴメンな!そんな秘密抱えてるって知らなくて…」
佐伯君が、なぜかあたしに謝ってきた。
「急にデカイの来すぎじゃろ!!お主のせいで、余の黒歴史がどうでもよくなってきたではないか!!」
「え…そうかな…?」
「…でも、そんなに大きな秘密を打ち明けられるなんて、すごい…と思います!」
相浦さんが小さくガッツポーズをした。
「…ありがとう。」
結局、金剛寺さん、銀杏田君、魅神君、真樹さん、奴目さん、アーニャちゃんの6人は最後まで秘密を暴露しなかった。
「俺はパース。絶対言わないからねー。」
「お前な…人の事は茶化しといて自分はダンマリかよ…」
「お前らに教える義理は無えだろー?」
「そうよ!教えて欲しけりゃメダルよこしな!!」
「…いや、これ自己申告だから。メダルあげたくないし、真樹さんが言いたくなければ、別に…」
「なんだよぉ…もっとアタシに関心持てよぉお…」
(なんなんだこの人…)
「…奴目さんは、どうしても言えませんか?」
「…うん。ごめん。ちょっと言えないや。ごめんね、つぐみん。」
「いえ…」
あたしは、違和感を抱いた。
…銀杏田君だ。
銀杏田君は、さっきから仏頂面のままで何も喋らない。
いつもは、笑顔で優しく話しかけてくれる彼が。
何かあったのかな?
「…付き合ってられませんね。」
彼は、確かにそう言った。
「先程から、何を勝手に暴露大会などなさっているのですか?
「…では、
金剛寺さんと銀杏田君が行ってしまった。
その後は、流れ解散となった。
◇
あたしは、部屋に戻って考え事をしていた。
あの秘密が、モノクマの言う動機なんだとすれば、また殺人が起きてしまうんだろうか…
いや、そんな事考えるな。もっと、みんなの事を信用しなきゃ!
…大丈夫、きっと、変な気を起こす人なんていないよ!
あたしは不安を抱えながらも、ベッドに横になった。
◇
次の日の朝だった。
ピンポンパンポーン
あたしは、放送の音で目が覚めた。
…まだ、6時半…なんで、放送が?
次の瞬間、信じられない内容が聞こえた。
『オマエラ、死体が発見されました!至急、男子更衣室の前までお集まりください!』
あたしは部屋を出て、一目散に男子更衣室へと向かった。
更衣室に到着すると、他のみんなはもう到着していた。
恐る恐る中を確認すると、信じられない光景が目に飛び込んできた。
更衣室には…
血まみれになって磔にされている、
『超高校級の執事』銀杏田 冷の死体が発見された。
【生徒数】残り13名