リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生   作:M.T.

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第3章(非)日常編②

「…嘘でしょ…どうして君が…」

 

 

 

 

「…法正君!」

 

図書室のロッカーの中から声がしたので開けてみると、ノートパソコンに法正君の顔が映っていた。

 

『夏川さん、どうしたの?泣いてるの?』

 

「…ううん。ただ、すごく嬉しいの。こうしてもう一度君と会えて…」

 

『…もう一度?…僕は、夏川さんに会うのは今が初めてだよ?』

 

「…え?どういう事?…ほら、何回も一緒にお話したじゃん!!」

 

『…僕に言われても…詳しい事は、『お母様』に聞かないと。』

 

「…『お母様』?」

 

 

背後に、人の気配を感じた。

 

「!!?」

 

慌てて振り返ると、相浦さんが無言で立っていた。

 

「あ、いや…これは、その…違くて…ご、ごめん!」

 

「…いえ。…ただ、お手洗いに行っている間に、夏川さんが『アルターエゴ』に話しかけていたので、ちょっとびっくりしちゃって…」

 

「…アルターエゴ?」

 

『こんにちは。私の名前はアルターエゴ・バージョン2です。夏川さん、お会いできて嬉しいです。』

 

画面が相浦さんの顔に切り替わり、笑顔で挨拶をしてきた。

 

「…相浦さん、これ、どういう事?」

 

「…ご、ごめんなさい…!…サ、サプライズのつもりだったんですけど…余計でしたよね。…すみません!」

 

相浦さんは、平謝りに謝った。

 

「いや、そうじゃなくて、このアルターエゴ?って何なの?」

 

「…えっと、このパソコンを解析するために、元々あった『アルターエゴ』を参考に作成した人工知能です。…み、皆さんの心の傷を少しでも癒せないかと思って、ここにいる生徒全員のデータを組み込んで、本人そっくりに会話できる機能もつけたんですけど…余計、でしたよね…ごめんなさい。…嫌なら、今すぐ初期化します…」

 

「全然そんな事ないよ!…あたし、また法正君に会えたみたいで嬉しかった…!…ありがとう、相浦さん!!」

 

「わっ、ちょっと、夏川さん…!」

 

あたしは嬉しさのあまり、相浦さんにハグした。

 

「…ねえ、ところで、この『アルターエゴ』ってどれくらい生徒を再現できるの?」

 

「…あの、ぬか喜びさせてしまって申し訳ないんですけど…はじめのうちは情報量が少なすぎるので、全然再現できません。…ですが、話しかけていくうちに学習していき、最終的には本人とほとんど変わらない再現度になるかと…」

 

「じゃあ、たくさんおしゃべりすればするほど、本人に近くなるって事?」

 

「はい。…あ、ただ、先生には内緒ですよ?」

 

「…どういう事?」

 

「これ、監視カメラの死角で隠れて作ったんです。…見つかったらすぐ破壊されるかもしれないので…話す時も、出来るだけ小声でお願いします。」

 

「わかった。モノクマにバレないようにお話する!」

 

「…では、皆さんにも報告してきますね。」

 

 

「アルターエゴ、ですか。…相浦君、随分と大胆な行動に出ましたね。」

 

「…元々あったAIの応用ですけどね。皆さん、アルターエゴを使用する時のルールを決めませんか?」

 

相浦さんが提案した。

 

「…そうですね。…使用を監視カメラの死角に限定するのはもちろんとして、九十九君、小林さん、魅神君には絶対に使わせないようにしましょう。」

 

黒須君が同意した。

 

「えぇえええ!?なんでぇ!?ボクも、エスカルゴ?あれ?なんだっけ?」

 

「…アルターエゴです。」

 

相浦さんが訂正する。

 

「それ!ボクも、『あるたーえご』とお話したいのだ!!」

 

「…お前と九十九は声が大きすぎるからダメだ。…あと、魅神は絶対変な事覚えさせるから使用厳禁だ。」

 

アーニャちゃんがバッサリ切り捨てた。

 

「…つまんねーの。AI相浦ちゃんにやらしい事吹き込んで宇田川をいじろうと思ってたのに。」

 

魅神君は、相変わらず空気を読まずに変な事を言っていた。

 

「こいつはこういう事するから絶対使わせないようにしましょう!!」

 

「…わ、私も譲治さんに賛成です!」

 

宇田川君と相浦さんが顔を真っ赤にしながら言った。

 

「…決まりで良さそうだね。」

 

 

あたしは、報告会が終わった後、アルターエゴと話しに行った。

 

『夏川さん、またお会いしましたね。…『お母様』から聞きました。あなたは、皆さんのリーダーなんですよね?よろしくお願いします!』

 

アルターエゴ相浦さんは、笑顔で話しかけてくれた。

 

(普段の相浦さんなら、絶対こんなにハキハキ喋らないよなぁ…もしかして、ちょっと盛ってプログラムしてる?)

 

「…別に、リーダーってわけじゃないけど…」

 

『そうなんですか?『お母様』からの情報では、あなたはとても頼りがいのあるリーダーだと聞いているのですが…』

 

「その『お母様』って、相浦さんの事?」

 

『はい!相浦 つぐみ様は、初代アルターエゴお兄様のデータをベースに、私を作ってくださいました!現在、このコンピューターを解析するという『お母様』からのご命令を実行中です。現時点での進行度を読み上げますか?』

 

「…いや、いいよ。あたし、機械弱いし…聞いてもわかんないでしょ。」

 

『失礼しました。夏川さん、私はあなたの事を、もっとよく知りたいです!いっぱいお話しましょうね!』

 

「…ねえ、アルターエゴ。画面を法正君に切り替えてくれる?」

 

『承知しました!』

 

画面が法正君に切り替わる。

 

『夏川さん。また会ったね。』

 

「…久しぶり。法正君。」

 

『夏川さん、何か嬉しい事でもあったの?』

 

「ううん…ただ、また法正君とお話できるのが、夢みたいで…もう一度だけでも会いたいってずっと思ってた。それが叶ったみたいで…嬉しくて…」

 

『…もう一度だけでも会いたいって、どういう事?僕、夏川さんと何があったの?』

 

アルターエゴ法正君は、唐突に残酷な質問を投げかけてきた。

 

「え…何があったって…それ、言うの…?」

 

『教えてよ。僕は僕自身の事も、夏川さんの事ももっと知りたいんだ。』

 

「…法正君は…法正君は…明石君を殺して、処刑されちゃったんだ。あたしの目の前で、死んだ。…だから、もうここにはいない。…あたしは、何もしてあげられなかった。」

 

…何やってんだろう、あたし…

 

機械なんかと話して、浮かれちゃって…

 

そうだよ、話しかけてるのは所詮AIなんだ。

 

あたしがやってるのは、ただの現実逃避。

 

法正君の真似をした機械に話しかけて、法正君が帰ってきてくれたように思いたかっただけ。

 

法正君が帰ってくるわけないじゃないか。

 

…そんな夢、叶うわけないじゃないか。

 

もう、こんな事やめよう。

 

いい加減頭を冷やさないと。

 

あたしが去ろうとしたその時だった。

 

『…ごめんね。つらい思いをさせて。』

 

「…え?」

 

『僕は夏川さんの事を全然知らないから、こんな時にどんな言葉をかけてあげたらいいのかわからない。…でも、僕のせいでつらい思いをしてるんだとすれば、本当にごめん。』

 

「何よ…結局、あたしの事なんて全然わかってないんじゃない。」

 

『…だから、君のことをもっと教えてよ。僕は、君の全てが知りたい。君の役に立ちたい。君にどんな言葉をかけてあげられるか、わかりたいんだ。…僕は君に、笑顔でいて欲しいから。』

 

「わかった。…じゃあ言わせてもらうけど、君、再現度低すぎだよ!法正君は、そんな女々しい事言わない!あと、あたしが悲しい顔してたら『わかんない』とか言ってないでとにかく元気づける!いい?」

 

『…なるほどね。次からは気をつけるよ。』

 

アルターエゴ法正君は、画面の中でメモを取っている。

 

正直可愛かったので、少し笑ってしまった。

 

「あと、法正君は中国史が好きだから、中国史のうんちくとかを交えて会話する!」

 

『…夏川さんは、世界史が嫌いじゃなかった?』

 

「うるさいなあ、なんで余計な事は知ってるんだよ、君!とにかく教えたことを再現すればいいの!」

 

『わかった。参考になったよ。…例えばこんな感じ?』

 

『【(かん、拼音: Hàn)は、中国の王朝である。通例、前漢(紀元前206〜8年)と後漢(25年〜220年)の二つの王朝(両漢)を総称して…】』

 

「急に機械っぽくなんなし!ウィキ読んでるだけじゃん!…なんかこう、もっと適当な感じでいいの!」

 

『…適当?』

 

「あー、もう!このトンチンカン!」

 

『…すみません。よくわかりません。』

 

「逃げんな!」

 

あたしが、法正君そっくりのアルターエゴに、法正君のことを教えるのはすごい違和感があった。モデルを知っているあたしが、わざわざアルターエゴに一から教えてそれに近づけていくのは、なんか釈然としない感じがした。でも、アルターエゴと話すと、あたしは笑ってしまっていた。

 

…何これ、楽しいじゃん。

 

あたしは、しばらくアルターエゴと話していた。

 

 

「…どうでしたか?…私の作成したアルターエゴ・バージョン2は。」

 

パソコンの情報を確認しに来た相浦さんが、あたしに聞いてきた。

 

「うん、やっぱり、再現度は低かった。」

 

「…ご、ごめんなさい…!…私の腕が及ばないばっかりに…夏川さんに不快な思いをさせてしまって…!」

 

「でも、話しててすごく楽しかった。ひさびさにめっちゃ笑ったよ…作ってくれてありがとね。」

 

「…はい、お役に立てて何よりです!」

 

あたしは、そのまま部屋に戻った。

 

 

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