リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生 作:M.T.
ザッ…
「ねえ、哀華ちゃん。カメラのタイマーセットしてくれる?」
「いいよ。私がセットしとくから、先に並んでなよ。」
ザッ
ザザッ
ザザーーーーーーーーーーーーーッ
…そんな。
嘘だ。
全部、嘘だったの…?
お父さんとお母さんとユウ…
みんなで過ごした2年間は、アイカに作られた偽物の記憶…
そして、あたしの家族は、もういない…
外に出ても、あたしの居場所なんてどこにも無い…
…こんなのが、真実だというのか。
みんな、絶望した顔をしていた。
希望を打ち砕かれた…
いや、違う…
最初から、あたし達に『希望』なんて無かったんだ。
「あはははははは!!!あぁあ…いいねぇ…その絶望的な表情!!もっと、その表情を私に見せろよ!!!」
アイカは、今まであたし達に見せなかったような表情で、狂ったように高笑いをしていた。
「テメェ…!!」
「あらま意外。歯向かう元気はあったんだ。…それで?どうするの?私を殺してみる?」
アイカは、ポケットから小さなナイフを取り出すと、自分の左手の小指を切り落とした。
「!!?」
「お、お主…!!?一体何をやっておるのじゃ…!?」
アイカは、小指を切り落としても平然とした顔をしていた。
「ほらぁ、もっと面白い事してみろよ〜。串刺しにするとかさ、ベロ引っこ抜くとかさー。できんだろ?だってお前らは、『超高校級の』人殺しだもんね?」
アイカは、あたし達を挑発してきた。
「なんだよコイツ…イカれてやがる…!」
「当然だ。…普通ステージ5で発狂死するような激痛を伴う人体実験を、こいつはステージ6まで耐えたんだからな。…こいつは、才能が開花する前もした後も、底の知れない怪物なんだよ。」
「そんな…そんな奴に、オレらなんかが勝てるわけ無えだろ…」
…元々持っていた才能はもちろん、痛みすら快感に感じる異常性…この女が化け物だと言われる理由を、この身を以って体感した。
この空間は、この女に支配されている。
…ここにいても、『絶望』しかない。
「あっはは。みーんな『絶望』に堕ちちゃえ〜!あっはははははははは!!!」
「はは…あはは…」
「…完全に堕ちたか。って事で、私から一つ提案なんだけど。」
アイカが、こちらを向いて言った。
「この状況ってさ、外に出ようが、中にいようが地獄じゃん?…だから、2択にしてあげる。」
…2択?
「一つは、私を殺して外に出るか。…もう一つは、全員でここで心中するか。…どっちがいい?」
「…そ、そんなの、決まってんだろ…?」
「余にはもう、何も無いのじゃ…かつて共に過ごした級友達も、外で待ってくれておる大切な人も、『希望』も…」
「…外に出ても居場所が無いなら、いっその事…」
みんな、答えは決まっていた。
こんなの、外に出るなんて選択肢、選べないに決まってる。
…『絶望』から解放されるたった一つの方法…
死だ。
なんでもっと早く気がつかなかったんだろう。
そうだよ。早く死んじゃっていれば、苦しい思いなんてしなくて済んだのに。
「…じゃあ、満場一致って事でいいかな?」
…あたしは。
(情けねえなー。それでも俺らのリーダーかよ。)
後ろから、声が聞こえた。
(夏川さん。)
別の声が聞こえた。
…あたしを呼ぶのは誰?
(君が本当はどうしたいか、僕は知ってるよ。)
…なんで?死のうと思ってたのに。
もう、『希望』なんて無いはずなのに。
どうして、足掻こうとするんだ?
どうして、こんなにも生きたいって思えるんだ?
(君は、僕達の『希望』なんだ。)
(…頑張って。)
…そうだ。
ごめんなさい…どうして、君の事を忘れる事ができたんだろう…
君は、いつだって、あたしの『希望』でいてくれた。
君が託してくれたから、生きていたいって思えたんだ。
…法正君…!!
「それじゃ、始めるよ〜?おしおきター…」
「待って!!!」
「…何?」
「…やっぱり、あたしは外に出たい。」
「はあ?今になって命が惜しくなったか?」
「そうだね。…外がどんな世界でも、やっぱりあたしは生きたいんだ!!」
「ここまで来て頭おかしくなっちゃったの?外に生きる理由なんて、『希望』なんて無えっつっただろ?お前らの家族も、友達も、みーんなこの世からいなくなっちまってるんだからよ。」
「…家族や友達がいないなら、作ればいい。居場所が無いなら、探せばいい。…『希望』が無いなら、見つければいい。あたしは、どんな世界だって『絶望』なんてしない…外が『絶望』で満ち溢れているなら、あたし達の『希望』を、世界中に伝染させていくんだ!!」
「はぁああああああああ!!?なんだよその臭っせぇ理想論はよお!!そんな事、できるわけねえだろ!?」
「…アイカ。君や君のお姉さんは、『絶望』を『超高校級』達に伝染させて、世界を塗り替えたって言ってたよね。…だったら、あたしにだって、世界を変える事はできるはずだよ。」
「お姉様達とお前を一緒にするな!!お前は、『超高校級の幸運』だろ?ただ運で選ばれただけの出来損ないじゃねえかよ!!何が『超高校級』…調子乗ってんじゃ無えぞ!!」
「…それは違うよ。」
【提示コトダマ:超高校級の希望】
「『超高校級の希望』…それが、あたしの才能だ!!!」
「はああああああ!!?なんだよ、そのくだらねえ才能はよお!!『希望』なんか無えっつってんだろうが!!いい加減学習しろよ!!!この低脳共がよぉ!!!」
「…夏川殿、すまぬ。…余とした事が、すっかり弱気になっていた。」
「…全く、貴女という方は…どこまで引っ掻き回せば気が済むんですか…。」
「あー、さっきのは完っ然にオレらしくなかったわ!!」
「…悔しい。もう、あの女の…アイカの言う通りになんて動きたくない…!」
さっきまで『絶望』に堕ちていたみんなが、『希望』を取り戻し、立ち上がった。
「おい…待てよ…何だよこの臭え茶番劇はよ…おい、まさかとは思うけど、このまま全員で、この世界を『希望』で溢れさせようだなんて考えてねえよな…?…やめろよ…そんなクソみてぇな真似すんじゃねえよ!!」
アイカが急に弱腰になる。
「そっちがその気なら、てめえら全員皆殺しだからな…?」
「やめないよ。いくらそんな脅しを使ったって、もうあたし達の決意は変わらない。」
「…江ノ島 哀華。…君の負けだよ。」
「私が…負け…?…嘘だ、この完璧な私が…『超高校級の絶望』の後継者のこの私が…お前ら如きに敗れるなんて…!」
「ケッ、くだらねえな。黙って聞いてりゃ、お前はただの、姉の栄光に縋り付いてるだけのクソガキじゃねえか。人の記憶を都合の良いようにいじりやがって…そんな卑怯な手を使ってる時点で、お前はオレらに負けてんだよ!!」
「最初から…負けていた…?」
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
アイカは、その場で蹲り、泣き叫んだ。
…そして。
「はっ…あはは…あははははははははははは!!!」
急に、ケタケタと笑い出す。
「…あーあ。私とした事が、まさかお前らに『絶望』に堕とされるなんてね。…ミイラ取りがミイラになるっていうのは、まさにこの事だわ。」
アイカは、胸からモノクマがおしおきに使っていたスイッチを取り出す。
「…私は、『超高校級の絶望』になり損なった…そんな悪い子には、おしおきが必要だよね?」
アイカは、スイッチを見つめて言う。
「今回、『超高校級の絶望』になり損なった江ノ島 哀華ちゃんには、スペッシャルで最高に絶望的なおしおきを用意しました!!…ではでは、おしおきターイム!!」
アイカは、自分でスイッチを押した。
GAME OVER
『エノシマさんがクロにきまりました。 オシオキをかいしします。』
◇
アイカの下の床が開き、アイカが下に落ちる。
アイカが落ちた先は、手術室のような部屋だった。
アイカは、手術台に拘束される。
手術台の自動ドアが開き、ロボットが現れる。
アイカが、『超高校級のエンジニア』として活躍していた時に作ったロボットだ。
ロボットの右腕が、円形の刃物に変形する。
そして、タイトルが現れる。
おしおき★フ・ル・コ・オ・ス
ロボットが、アイカの右腕を切断し、近くにあった電気コードを引っこ抜いて結びつける。
アイカは、右腕の痛みと、感電する痛みに快感を覚えていた。
すると、手術台が開き、アイカは鎖で縛られ下に落ちる。
アイカはアームのようなものに鎖でぶら下げられ、巨大な水槽の上まで移動させられる。
水槽の中には、大量の酸が入っている。
アームがゆっくりと下降し、アイカの体は酸に浸かり始める。
酸で体が灼かれる痛みに、アイカは恍惚としていた。
すると、アームが急に上昇し、アイカは空中に放り出される。
アイカは十字架に拘束される。
ベレー帽を被ったモノクマが現れ、彫刻刀を持ってポーズを決めたかと思うと、彫刻刀をアイカの肌の上に滑らせる。
皮膚が彫られて血塗れになり、両耳が削がれる。
それでもアイカは笑みを浮かべていた。
十字架の拘束が外れ、アイカは巨大な皿の中に落ちる。
そして、着物を着たモノクマが持っているものを見て、アイカは全てを悟った。
モノクマは、薬研を皿に押し当て、回転させる。
アイカは、薬研で擦り潰されて、下半身を失う。
モノクマはアイカを拾い上げると、空中に放り投げる。
アイカは再び十字架に拘束され、四方八方から、処刑人の格好をしてライフルを構えたモノクマに、ライフルの銃口を向けられる。
ライフルが一斉に発射され、ライフルから放たれた毒の入った小型の注射器がアイカの体に刺さる。
十字架に仕掛けられたトラバサミが発動し、アイカの首を挟む。
普通ならとっくに死んでいる怪我だったが、アイカはゴキブリ並みにしぶとかった。
首に重傷を負い、何本もの毒針が体に刺さっても、まだ生きていた。
そして、アイカの十字架の拘束が外れ、教室の机に座らされる。
教師の格好をしたモノクマがガトリングガンを構え、発射する。
ガトリングガンの銃口からは、亜音速でチョークが発射される。
チョークの弾丸がアイカの体を蜂の巣にする。
チョークを全弾喰らったアイカは、ついに息絶えた。
そこには、原型を留めない肉塊が転がっていた。
オシオキを終えたモノクマは、その場で動かなくなっていた。
◇
黒幕が死んだ。
…終わった。
あたし達の、長い学園生活が、ついに終わったんだ。
だけど、誰も歓喜の声を上げなかった。
…それ以上に、失ったものが多すぎた。
黒幕一人の死じゃ払いきれないくらい、多くのものを失ってしまったんだ。
ビーッビーッビーッ
急に、警告音のようなものが響き渡る。
「…何だ!?」
『この建物は、あと300秒で自動的に消滅します。繰り返します。この建物は、あと300秒で自動的に消滅します。』
奥の方から、爆発音が聞こえる。
「クソッ、アイカの奴…最期の最期に、とんでもないイタズラ仕掛けやがった…!」
アーニャちゃんが、地団駄を踏んで言った。
「どういう事じゃ!?」
「…アイツ、自分が死んだ瞬間に作動する爆弾を、建物全体に仕掛けてたんだ…!!…最初から、誰一人生かして外に出すつもりなんて無かったんだよ!!」
「マジかよ…!!せっかくここまで生き延びてきたのによぉ!!ここで全員オダブツかよ!?」
焦っていくうちに、時間は過ぎていく。
「このままだと、全員木っ端微塵じゃ!!…どうすれば…!?」
「…!!あそこ!!脱出口!!」
「…前に探索した時は、なかったはず…何かの罠かも…」
「考えてる暇はない!!…みんな行くよ!!」
全員で、脱出口に駆け込んだ。
何も考えず、ただがむしゃらに走る。
脱出口の後ろの方から、どんどん崩れていく。
振り返らずに、ただ走る。
光が見えた。
ーあと少し!!
…しかし、その光は、ただの非常灯だった。
走った先は、行き止まりだった。
「…マジかよ。こんなのアリかよ…」
「さすが『超高校級の絶望』…抜け目が無いな。」
「最後に希望を与えておいてどん底に突き落とすとは…悪趣味な女じゃのお…」
退路は完全に崩れた。
進む事も、戻る事もできない。
あたし達は、絶対絶命の窮地に陥った。
…そんな時だった。
…バルルルルル
「…ねえ、何か聞こえない!?」
「…本当だ、何か聞こえますね。この壁の向こうからです。…この壁、そんなに厚くないのかも…?」
「よし、そうと決まれば、夏川!佐伯!パリンチェ!壁を壊すのじゃ!!」
「オレもかよ!?」
「この中で、体力があるのはお主ら3人じゃろうが!!さっさと身体を動かせい!!」
「喜んで、りむ様ぁあああああ!!!」
全員で、音が聞こえる方の壁を壊した。
壁が薄くなっていく。
…そしてついに。
「…外だ。」
あたし達は、外の世界を見た。
「よっしゃああああ!!!諦めないで良かったー!!」
「ああ…外の空気が上手いのぉ…」
バルルルルルルルル…
さっきの音が、より大きく聞こえた。
「早く乗って!!」
女の人の声が聞こえて、上を見上げると、ヘリコプターが飛んでいた。
あたし達は、言われるがままヘリコプターに乗り込んだ。
その直後、建物が完全に崩壊した。
「いっやぁ…危ないところだったぜ…」
「今、こうして生きているのが嘘みたいじゃ…」
「…まさか『絶望』の妹が、こんな計画を進めていたとはね…」
「君たち、よく今まで生き延びたね。でも、もう大丈夫だ。」
薄紫色の髪の長い女性と、茶髪の男性が話しかけてきた。
「えっと…助けていただいて、ありがとうございます。…夏川 メグです。…あなた方は、一体…?」
「私は元『超高校級の探偵』霧切 響子よ。」
「元『超高校級の希望』苗木 誠だよ。」
リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生ー完ー
原作者様
「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」
「スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園」
「ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期」
スペシャルサンクス
読者の皆様
ご愛読ありがとうございました。