リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生 作:M.T.
夏川 メグ達15人の『超高校級』にコロシアイをさせていた『超高校級の絶望』江ノ島 哀華。
これは、彼女が絶望に堕ちるまでの物語。
私は、ずっと孤独だった。
父親は、誰かわからない。
母親は、私の事が嫌いだった。
私の周りは、いつも敵だらけだった。
「なんでよ…なんであんたは『普通』にできないわけ!?」
それが母親の口癖だった。
幼稚園の頃、園で飼っていた子犬が病気にかかったから、悪い部分を全部『取ってあげた』事がある。
それから、母親の態度が急変した。
母親は、毎日のように私に暴力を振るうようになった。
「あんた、どういうつもりよ!?…子犬を切り刻んだそうじゃない!?そのせいで、私がどんな目で見られてるかわかってんの!?」
「お、お母さん…?」
「あんたみたいな奴、産まなきゃよかった!!訳わかんない事するし、何回叩いても全然泣かないし…あああ、気味が悪い!!このキチガイ!!」
「お母さん…」
「目障りなのよ!!私を捨てたあの男にそっくりなあんたが!!あんたが私を不幸にしてるの!わかってる!?」
私は小さい頃から、苦痛を苦痛として感じる事ができなかった。
だから、周りとどう接したらいいのかわからなかった。
人は、私を『異常』だと言う。
私が『普通』だったら、世間の私に対する接し方も違ったんだろうか。
でも、私には何が『普通』なのかがわからなかった。
『普通』に生きている人達が羨ましかった。
『普通』になりたかった。
私はある日、ゴミ箱に捨てられた、壊れたおもちゃを見つけた。
「…君も、私と同じだね。」
いつも『普通』を強いられて、誰かにとっての『普通』じゃなくなったら、誰からも必要とされなくなる。
そんな機械に、私は親近感を抱いた。
その日から、私は機械に興味が湧き、あらゆる機械に触れるようになった。
その過程で、数学から機械工学まで、様々な参考書を読んだ。
私は、すぐにそれらの虜になり、より難解な参考書を求めるようになった。
1年経つ頃には、私の学力は大学生レベルまで達していた。
母親はそんな私を気持ち悪がったが、それが金になる才能だと分かった途端に掌を返してきた。
当時の私は、そんな事に気づかなかったから、母親が私を可愛がってくれるようになったのが嬉しかった。
ある日、私は知らない人を『バラバラに』してしまった。
人の体がどうなっているのか、この目で見てみたかったから。
すると、母親の態度がまた変わった。
「あんたなんて事してくれたの!!?もし誰かにバレたら、私がどうなるかわかってんの!!?ねえ!!!本当に気味が悪い…あんたみたいなクソガキ、死んじまえ!!!」
今まで、実験したり機械を分解した時は褒めてくれたのに、なんで人を分解したら叩かれるのか。
私には、それがわからなかった。
そんなある日だった。
大人達が、私達の家に来て言った。
「お宅の小学生の娘さんが、虐待を受けていると通報があったのですが。署までご同行願えますか?」
「は!?いや、ちょっと待ってよ!元はといえば、こいつが…」
「いいから来なさい。」
「…お、お母さん?」
「…あんたのせいよ。」
「あんたのせいで、私の人生メチャクチャになったのよ!!お前なんか、産まなきゃよかったんだ!!」
それが、母親が私に言った最後の言葉だった。
母親は、虐待に加えて、私が人を分解した事の罪を押し付けられて逮捕された。
他に身寄りが見つからなかったので、私は施設に入る事になった。
入った先の施設では、施設の大人達に気味悪がられて、すぐに他の施設に移された。
そんな事の繰り返しだった。
そしてついに、誰も私を受け入れなくなった。
私は孤独になった。
いや、違う。元から孤独だったんだ。
私を心から受け入れてくれる人なんて、一人もいなかった。
私が『異常』だったから。
私が、みんなの『普通』になれなかったから。
私は、最初からゴミ箱に捨てられていたんだ。
数年経ったある日、私はニュースを見て驚愕した。
母親が死んだ。
何者かに殺された。
犯人は、すぐに特定できた。
そいつは、『絶望』に堕ちた元『超高校級の看守』だった。
私は、そいつの『絶望』に惹かれた。
もし、『絶望』と呼べる存在がいたなら。
私は、その存在にとっての『普通』になれるかもしれない。
私は、僅かながらにそんな望みを抱いた。
そしてまたある日、偶然にも私は姉の存在を知った。
私は、唯一の身寄りである姉に会いに行った。
私の姉は、双子の姉妹だった。
私は、会った瞬間に姉達の『絶望』に魅了された。
いや、お姉様達こそが、『絶望』そのものだ。
同時に、私は『絶望』に堕とされた。
私は、誰にとっての『普通』になる事はできない。
誰かにとっての『普通』になれるなんて望みは、最初から無かったんだ。
でも、私は満たされていた。
『絶望』という、私が心から惹かれる存在に出会えたから。
私は、『絶望的な才能』をお姉様達に買われて、妹として受け入れられた。
私は、お姉様達の役に立ちたかった。
だから、政府が水面下で『計画』を進めていると知った時は、真っ先に被験者として名乗り出た。
世界を『絶望』に堕とすために、人工的に作り出された『超高校級』を利用できると思い、私は候補生達の中に紛れ込んだ。
そして、度重なる実験に耐え、私自身も圧倒的な才能を手に入れた。
幸い、私は苦痛を苦痛と感じる事ができない体質のおかげで、実験を乗り越える事ができた。
今まで嫌いだった自分の体質が、こんな所で役に立つとは思わなかったけど。
1年後、『人類史上最大最悪の絶望的事件』が起こった。
お姉様が起こした事件だ。
私は、事件に便乗し、実験で精神が壊れかけたスクラップ共を片っ端から『絶望』に堕としていった。
そいつらは、次々と殺し合いを始め、施設は血の海に染まった。
私は、施設内に充満した『絶望』に快感を覚えた。
…お姉様達程じゃないけど。
でも、その1年後、事件が起こった。
私の敬愛するお姉様達が死んだ。
『希望』によって野望を打ち砕かれたそうだ。
その事件を知って、私は決意した。
妹の私がすべき事は、一つしか無い。
私は、お姉様の後継者として、『超高校級の絶望』になった。
世界を『絶望』に堕とすために、私は計画を立てた。
計画を練り始めてから2年後、ついに計画が完成した。
手始めに、私は計画のための駒を用意した。
「や、やめてくれよぉ…もう許してくれよ…」
「んだよ弱っちいな〜。お前それでもここまで生き延びた『超高校級』かよー?」
「…オイ魅神。」
「ん〜?江ノ島ちゃんじゃん。どったの?」
「暴れ足りないらしいな。私が相手してやろうか。」
「いいねぇ…そのちっちゃい体、バキバキにへし折ってやんよ〜。」
「ぐっ…バ、バケモンが…!」
「ふーん…お前、その程度?」
「おいおいおい…こんなのアリかよ…」
「負けたんだから、私の言う事聞いてくれるよね?…逆らったら、どうなるかわかってるよな?」
「…おー怖。」
私は、魅神…もといジョージを手下にした。
生き残り達の中では、一番適任だと思った。
「んで?江ノ島ちゃん。俺はどうしたらいいの?」
「気安く呼ぶんじゃねえ。これから、私の事は『アイカ様』と呼べ。」
「了解〜。」
私は、『絶望』に堕とした生き残り達と、計画の準備を進めた。
そしてついに、計画の準備が整った。
まあ、その頃には、使えない役立たず共は全員おっ死んでたけど。
生き残りは、私を含む16人だけとなった。
今から、私はこいつらの記憶を消して、こいつらの前で演技をしなきゃいけない。
…スッゲーめんどくせえ。
正体がバレるのは、避けたいな。
まあ、バレたところで対処すれば問題無いんだけど。
…とりあえず、髪は切ろうかな。
今までと見た目が違う方が、騙しやすいし。
「アイカ様〜。これからどうすんだっけ?」
「今から、14人の記憶を消して、偽物の記憶を植え付ける。…お前には、記憶が改竄されたフリをして、そいつらのスパイになってもらう。」
「俺必要ある〜?アイカ様も、こいつらの中に潜り込むんでしょー?」
「私一人じゃ、掌握できる人数に限界がある。だからお前に頼んでいるんだろうが。」
「そゆこと〜。じゃ、俺はアイカ様のわんことして、忠実に働きま〜す。」
…魅神をどう扱うかは、既に考えはある。
計画を実行に移そう。
私は、14人を、物理室の機械にセットして、機械を作動させた。
…さて、