リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生 作:M.T.
第1章(非)日常編①
「…う?あ…あれ…?」
目がさめると、あたしは知らない部屋にいた。
「えっと…確か、あたしは、佐伯君と魅神君のケンカに巻き込まれて…」
頭が痛い。
ふと、血が出ていたところに手を当てると、包帯が巻かれているようだった。
「…誰かが手当てして、ここまで運んできてくれたのか。あとでちゃんとお礼言わないと…」
そう言いながら辺りを見渡、した。
どうやら、ビジネスホテルのような造りになっているようだ。
ベッドの頭上付近には、引き出しが置かれていた。開けてみると、中にはビニール袋に包まれた裁縫セットと、人体急所マップが入っていた。
「…これで刺せって言いたいわけ。…ホント悪趣味。」
腹が立ったので、マップをグシャグシャに丸めてゴミ箱に投げた。
ベッドから降りて部屋の中を彷徨いた。
部屋には掃除用のテープクリーナーやテレビのモニター、そしてあたしの名前が入った鍵が置かれていた。
壁に貼ってある紙が視界に入った。
『モノクマ学園長からのお知らせ
部屋の鍵には、ピッキング防止加工が施されています。鍵の複製は困難なため、紛失しないようにしてください。
部屋には、シャワールームが完備されていますが、夜時間は水が出ないので注意してください。
また、女子の部屋のみ、シャワールームが施錠できるようになっています。
最後に、ささやかなプレゼントを用意してあります。女子生徒には裁縫セットを、男子生徒には工具セットをご用意しました。
裁縫セットには人体急所マップもついているので、女子のみなさんは、針で一突きするのが効果的です。
男子の工具セットを使用する場合は、頭部への殴打が有効かと思われます。』
「…やっぱりか。どうせ悪趣味な事しかしないと思った。」
紙をひっぺがし、破いてゴミ箱に捨てた。
「…そんな事より、他のみんなは?あたしが寝てる間、何があったんだろう…」
急いで部屋の外に出ると、外にいた法正君とぶつかってしまった。
「ぎゃっ!!」
当たり負けした法正君は、尻餅をついた。
「痛たた…」
「ご、ごめん!」
咄嗟に謝った。
「いいよ、僕の方こそごめん。…そんな事より、よかった。夏川さんが目を覚ましてくれて。」
「えっ、あ、じゃあ手当てしてくれたのって、法正君だったの?」
「…銀杏田君と宇田川君にも手伝って貰ったけどね。」
「ありがとー!!」
嬉しさのあまり、法正君に抱きついた。
「ちょっ、な、夏川さん…」
「あ…ごめん…」
あたしは、ふと思い出した。
「あ、そうだ。ところで、他のみんなは?」
「ああ、他のみんななら、分校内を調査してて、その結果を今報告しあうところだったんだ。食堂に集まる事になってるんだけど…夏川さんも来る?」
「もち!!行く行く!!」
こうして、あたしたちは食堂に向かった。
◇
食堂は、大きな窓が特徴的な、開放感のある部屋だった。
「夏川ちゃんまたビリッケツ〜♪もしかして〜、法正クンとイチャイチャしてたから遅れたのかな?」
「んなっ…」
魅神君が、あたしと法正君をいじってきた。
食堂には、既にみんな集まっているようだった。
まず、真っ先に宇田川君と銀杏田君にお礼を言った。
「あの、宇田川君、銀杏田君!…法正君から聞いた。あたしを手当てしてくれたんでしょ?ありがとう。」
「
「気にしなくていいですよ。困った時はお互い様です。」
二人は、快い返事を返してくれた。
「よし!!全員集まったな!!それじゃ、報告会を始めるぜ!!!」
九十九君が暑苦しく宣言をした。
「じゃあまずはオレからだな!!オレが寄宿舎を調べてわかった事は、個室は全員分あるって事だ!!」
そりゃそーだ。悪く言えば結局何の収穫もなかったって事か。
「なんだよ、九十九クン、偉そうに言っといて何の収穫もなかったんじゃ〜ん。」
(言っちゃうなよこのバカ!!)
魅神君が、私の心の中の台詞を代弁した。
「そんな事ないですよ。九十九君のお陰で、気づいた事があります。…ね、奴目さん。」
「うん、個室なんだけど…多分、完全防音になってる。私、結構耳には自信あるんだけど、声がすっごい大きいつくもも君の声が、隣の部屋の私に全く聞こえなかったんだよね。」
黒須君と奴目さんの調査結果は、個室は完全防音という事だった。
(なるほど…完全防音か。九十九君の暑苦しさが、意外なところで役に立ってたんだな。)
「オレは、窓の鉄板を調べてたんだけどよ、ビクともしなかったぜ。ボルトは、工具がありゃ外れると思ったんだけどな。」
佐伯君の調査結果は、窓の鉄板は取り外し不可能という事だった。
「僕たちは、分校エリアを調べていました。」
宇田川君が、報告を始める。
「玄関ホールの鉄の扉は、頑丈な造りになっていました。少し調べてみてわかったのですが、強度で言えば、恐らく猛獣が暴れても破壊できない程かと。」
「うん!あの扉硬すぎ!!コトちゃん、全っ然動かせなかった!」
右手を腫らした小林さんが、悔しそうに言う。
(…なるほど。小林さんで強度テストしたのか。)
「それから、相浦君も一緒に調査をしていた。…相浦君。」
「…はい…連絡手段がないか…探していたんですけど…すみません、何も見つからなくて…ごめんなさい…!」
相浦さんは泣きながら報告する。
「逆に言えば、僕たちを完全に外の世界から隔離させたいっていう犯人の意志が確認できたって事だよね。十分な収穫だよ、相浦さん。」
法正君が、相浦さんをフォローする。
「あー、あとねー、コトちゃんすっごい発見しちゃったんだ!!」
小林さんは、挙手をしながら報告した。
「あのねー、なんかコーシャとキシュクシャの間に、2階に上がれそーな階段があったの!!」
「え!?マジ!?」
真樹さんが食い気味に聞く。
「あー、でもね、なんか…えっと…ねえ、ジョージ。アレなんてゆーんだっけ。」
「…階段にはシャッターが降りていて使えません。スイッチのような物も見つかりませんでした。相浦君が、電子回路をいじって開けられないかどうか試みたそうですが、何も出来なかったそうです。…と、小林さんは言いたいのだと思います。」
宇田川君が全部言ってしまった。
「ちょー!ジョージ!!そのシャッタア?ってゆーのだけ教えてくれればよかったのに!ボクの出番取んないでよ!!」
宇田川君、小林さん、相浦さんの調査結果は、玄関ホールの鉄の扉は動かせない事、連絡手段は何も無い事、そして開けられないシャッターが降りた階段があるという事だった。
「…よし、ほんなら次はオレらやな!」
「はい。明石さん、
「食堂の奥には厨房があり、冷蔵庫も設備されていました。」
「中には食いモンがぎょーさん入っとったで。せや、厨房でアメちゃん見つけてんけど、みんないるか?」
明石君は、飴玉をみんなに一個ずつ配った。
「…毒とか入ってないでしょうね。」
真樹さんが明石君をチラリと見て言う。
「ほんなら食わなええだけの話やろ!」
「な、何よぉ!!これから毎日食べる物が危ないかもしれないから言ってるんじゃないのよぉ!!」
明石君と真樹さんが言い合いになり、銀杏田君が仲裁に入る。
「落ち着いてください。…それは、明石様が厨房からそのまま持ってきたものでございます。
「…モノクマが僕らにさせたいのは、あくまで殺し合い。最初から毒を盛っておくメリットなんて無いと思うよ。」
法正君が適切な指摘をする。
「…まあ、それも…そうね…」
真樹さんも納得したようだ。
「皆さん、話を元に戻しましょう。
「餓死の心配はねーっつー事ねー♫」
魅神君が髪をいじりながら言った。
明石君、金剛寺さん、銀杏田君の調査結果は、食堂には厨房があり、中には食材が入った冷蔵庫も完備されている事、そして、冷蔵庫の食材は毎日自動で補充されるという事だった。
「僕は、この学園について、そして外の世界について調べていたよ。」
法正君が報告を始める。
「で?結果は?」
佐伯君が急かすように言う。
「うーん…ごめん。結局、有力な情報はなかったや。」
「んだよ…だったら報告すんなよ。期待したじゃねーかよ。」
「でも、モノクマが教えてくれたんだけど、寄宿舎と校舎で災害とかがあったら、ちゃんと対応してあげるから心配すんなって。…よっぽど僕たちに殺し合いをさせたいみたいだね。」
「俺もクマさんの言ってる事ちょっとわかるな〜。災害とかで勝手におっ死なれちゃ、つまんねーもんな〜♬」
魅神君は、また訳の分からない事を言った。
法正君の調査報告は、校舎と寄宿舎での災害への対応は万全だという事…つまり、あたしたちは、殺し合いをしない限り永遠に学園生活を送ることになるという事だった。
「…さっきから人の不安を煽るような事を言ってるけど、君からの報告はないのかな?」
法正君は、横目で魅神君を見ながら言う。
「無いよ〜。そもそも調査すらしてねーからな〜。だってタリィんだも〜ん。」
「テメェ、ふざけんなよ!!俺らが必死に手がかり探してたって時に!!」
佐伯君が怒りを露わにする。
「おっと、俺だけ責めるのはお門違いだぜ?千葉崎ちゃん、真樹ちゃん、ニャーちゃんの3人も何もしてなかったんだからさ〜。」
「そうなの?」
奴目さんが3人に疑いの目を向ける。
「余は疲れるのが嫌いなんじゃ。ゆっくりここで茶でも飲んでいれば良いではないか。」
「ふぇえ…やめてよぉ…責めないでよぉ…アタシもなんか手伝おうと思ったけど、人手が足りてるってみんなに断られたんだよぉ…」
「当たり前です。だって貴女、仕事を振ったら見返りをしつこく要求してきたじゃないですか。」
「だって…だってぇ…!うぇええええええん!!ママァア!!みんながいじめるよぉお!!」
真樹さんが大声で泣き始めた。
「…。」
アーニャちゃんは、腕を組んで無言を貫いている。
「あッ、アンタも何もしてなかったんでしょ!なんとか言ったらどうなんだよ!」
真樹さんは、アーニャちゃんを責める。どうやら、アーニャちゃんを道連れにして自分へのダメージを減らす魂胆らしい。
「…ん。」
アーニャちゃんは、めんどくさそうに見取り図のようなものを広げる。
そこには、『希望ヶ峰学園分校校舎及び寄宿舎見取図』と書かれていた。
「これで、誰かさんが迷って集合に遅れたりする事もなくなるんじゃない?」
(うっ…)
アーニャちゃんが言いたいのは、多分あたしの事だ。
「あんた!!これどこで見つけたのよ!!」
「別に。誰かさんが集合に遅れた事を愚痴ってたら、モノクマに聞かれて渡されただけ。」
「なんでこんな大事な事早く言わなかったのよ!!」
「…お前に言う義理があるか?」
「ぐっ…」
アーニャちゃんの非協力的な姿勢に苛立ちを隠せない真樹さんとは対照的に、当の本人であるアーニャちゃんは淡々と答えていた。
見取り図を改めて確認したが、やっぱり出口らしきものは無かった。
あたしたちは、ここから永遠に出られないのだろうか?
…いや、絶対に、全員でここから脱出してみせる。
あたし達は、絶望なんてしない!!