リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生 作:M.T.
画面に映し出されたのは、あたしの家だった。
「え…」
「いっただっきまーす!!」
スクリーンに映ったあたしは、朝食を口の中にかき込んでいた。
「う゛ッ、ゲホッ、ゲホッ!」
「おいおい、そんなに急いで食べるからだろ?」
お父さんが、あたしの背中をさすっていた。
「あなただって、シャツにケチャップ付いてますよ?」
「えっ!?嘘!?あ゛ーッ!!今日大事な会議なのに!!」
「うふふっ、困ったお父さんとお姉ちゃんね。」
お母さんが、あたしの弟を、ユウを抱いて笑っていた。
「あー、あー!」
「あら、メグ。まだ学校行かなくていいの?」
「えっ、あ!そうだった!!…じゃあユウ、行ってくるね!」
「あ、あー。」
そこで映像が切り替わり、映し出されたのは、荒れたあたしの家だった。
窓は割られ、家具はボロボロに傷つけられ、割れた食器や花瓶が床に散乱していた。
そして、所々に血が飛び散っていた。
しかし、どこにもあたしの家族はいない。
「お父さん…?お母さん…?ユウ…?」
『4人家族の長女として、ご家族から愛されて幸せに暮らしていた夏川 メグさん!…どうやら、ご家族の身に何かあったようですね?では、ここで問題です!このご家族の身に何があったのでしょうかっ!?正解発表は『卒業』の後で!』
そこで映像は終わっていた。
「何よこれ…お父さんは…お母さんは…ユウはどうなったの…?今、みんなは無事なの…?」
「…何が何でもここから出て確かめなきゃ。」
その考えに行き着いたあたしは、急いで視聴覚室を後にした。
外には、他のみんなが待っていた。
どうやら、法正君がみんなを呼んできたらしい。
「…夏川さん?何があったの?」
法正君が、恐る恐る質問を投げかけてきた。
「…。」
あたしは、黙って段ボールを指差した。
他のみんなは、一目散に段ボールの方へと走っていき、自分のDVDを取っていった。
◇
全員がDVDを確認し終わった。
みんな、青ざめた顔をして視聴覚室から出てきた。中には、泣いている人もいた。
きっと、みんなもあたしと同じような映像を見せられたんだ。
「酷い…こんな事って…」
「クッソ…!」
相浦さんと佐伯君が声を漏らす。
「なるほどね〜、これがクマさんの言ってた“動機”か〜。ホントいい趣味してるよね〜。」
魅神君は、口角を上げて不気味な笑みを浮かべながら言った。
「…。」
明石君は、虚ろな目をしていた。
彼には、さっきまでの生気は無かった。
「あ、明石君…?」
明石君は、返事をせず黙っているだけだった。
「…夏川さん。そっとしてあげよう。」
法正君が、あたしの肩に手を置いて言った。
◇
ただ、時間だけが過ぎていった。
誰も、お互いに話し合おうとはしなかった。
あたしは食堂で一人、テーブルに突っ伏して考える事をやめていた。
「…隣、いいかな。」
声をかけたのは、法正君だった。
「あの時までずっと元気だった夏川さんが、全然元気無さそうだから、心配になって…」
「…まあ、あんなもの見せられたら、普通そうなるよね。」
あたしは、法正君に、今までずっと気になっていた事を聞いてみた。
「…ねえ、法正君は、どうして他の人のためにそこまでできるの…?法正君だって、あのDVDを見て、外に出たいって思ってるんでしょ?」
「『夫れ用兵の道は、人の和に在り』僕の尊敬する諸葛亮孔明の一番好きな名言だよ。…兵を統率する心得として、人の和を作る事が必要だ、っていう意味の名言なんだ。…僕は、そうありたいんだ。」
「…どんな時でも、人との和を大切にして、みんなを導ける存在になる…それが僕の目指す生き方だから。…これじゃあ答えになってないかな?」
「すごいね、法正君は。あたしは、そんなに強くなれないや…」
「…そんな、今の僕なんて、理想とは程遠いよ。僕は、夏川さんの方が勇敢で強い人間だと思う。…僕は、夏川さんの事、尊敬してるからね。」
「…ありがとう。…あー、なんか話聞いたらスッキリした!…あ、なんか小腹空いちゃったから、冷蔵庫にあったアイスでも食べよっかな!」
「…あ、いいよ。僕が取ってくる。」
「え!?いいの!?」
「…話聞いてもらったしね。」
◇
それからあたしたちは時間を忘れて、一緒に話し合った。
気づけば30分経っていた。
「あ、じゃあそろそろ行こっかな。」
「夏川さん!」
法正君が、あたしを呼び止めた。
「…これ、あげる。」
法正君が、桜の装飾のついたブローチをくれた。
「これは…?」
「さっきのガチャでゲットしたんだ。…気に入ってくれるかどうかわかんないけど…」
「…嬉しい。ありがとう。」
あたしはブローチを受け取って、食堂を後にした。
◇
廊下を歩いていると、教室の隅に、明石君がいたのが見えた。
教室に入って、声をかけてみた。
「どうしたの?…まあ、あんなDVD見せられた後だもんね。無理ないよ。」
すると、明石君はさっきまでの暗い表情から、急にあの時までのテンションに切り替わった。
「おお、夏川!お前、急にどないしたん?オレは別に何もあらへんよ?」
「え?ホント?さっきまで…」
「見間違うたんちゃうか?オレはこの通り、絶好調や!」
「…それならいいんだけど。なんかごめんね。じゃあ、おやすみなさい。」
教室から去ろうとすると、明石君が、あたしを引き留めるように後ろから声をかけた。
「…ああ、アカン。言い忘れるとこやったわ。急に思い出してんけど、オレこの学園の、えらい重要な秘密を知ってしもうてん。」
「…重要な秘密?」
「今は場所悪いなぁ…せや、今日の9時50分に、体育館倉庫まで来てくれるか?他のみんなに聞かれたらアカン話やから、二人きりで話したいねんけど…時間大丈夫か?」
「…やけに中途半端な時間だね。」
「ゴメン、そこしか時間あらへんねん!」
明石君が必死に頼み込む。
「…わかった。9時50分に体育館倉庫ね。」
「ホンマ!?おおきに!!」
明石君は嬉しそうに言った。
明石君が何を知ってしまったのかはわからないけど、この学園の重要な秘密なら、聞いておかなきゃ。そう思った。
「…じゃあ、あたしもう行くね。体育館倉庫でまた会おう。」
…この時、あたしは気づいておくべきだった。
明石君の笑顔に隠された、本当の思惑を。
◇
部屋に戻り、シャワーを浴びた。
9時50分まではまだ十分時間がある。その間に何かしておこうかな?
そんな事を考えながら、あたしはベッドの上で髪を乾かしていた。
…あれ?なんだろう、急に睡魔が…襲って…
そこからは、あたしの意識はない。
◇
『オマエラ!7時だよ!寝坊は学園生活の乱れに繋がります!今すぐ全員起きるように!』
「…はっ!!」
モノクマのモーニングコールで目が覚めた。
…しまった。どうしよう。
「あぁあああああああ!!!やっちゃった!!あたしのバカバカバカ!!明石君との約束すっぽかしちゃった!!…ダメだ、なんで寝ちゃったのか全く覚えてない…なんでだ、なんでよりによって昨日寝ちゃったんだよぉおー!!」
「…うん、いつまで嘆いてても仕方ない。昨日の事は、ちゃんと謝ろう!」
あたしは制服に着替えて、部屋を出た。そして、いつもの集合場所である食堂に向かった。
◇
他のみんなは、既に集まっているみたいだった。
「ごめーん!あたし、また1番最後?」
「…いえ、まだ明石様がいらっしゃいませんね。」
「いつもは結構早く集合する方なのにね。珍しいね。」
「…まさか。」
…嫌な予感がした。あたしは、一目散に体育館倉庫へと向かった。
◇
体育館倉庫には、鍵がかかっていた。
「…開かない…!」
倉庫の横にあるパネルが視界に映った。
(確か、この倉庫の鍵はこれで開くはず…!)
あたしは、電子生徒手帳をパネルにかざした。
倉庫の扉がゆっくりと開く。
どうか、思い違いであってほしい。そう願っていた。
だが、その幻想はいとも容易く打ち砕かれた。
体育館倉庫ではー
糞尿を漏らし、口から泡を吹いて首を吊った
『超高校級の芸人』明石 大吉の死体が発見された。
【生徒数】 残り15名