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正月休みなんて…なかったんや…
作戦記録Part2
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遅滞戦闘を言い渡されてはいるが、このままではジリ貧だ。
ならばこそ、と意を決して突貫。機動力を生かした電撃戦を試みる。
今の今まで距離を取った撤退戦。
ゆっくりだが確実に我々を追い詰める共生種は、単身で戦線をこじ開けつつあった。
反対に言えば、我々に入り込みすぎなのだ。
釣れた魚を料理する、普段ならば簡単だが相手は共生種の中でも異形中の異形。
回転ドアの要領で、広げた戦線を閉じるように挟撃する。
引き込みの支点であった私も急旋回し反撃を開始する。
左翼のⅡ号戦車隊9体が隊長機を先頭に三角錐型の突撃軌道を取りながら火力を集中させ、対災獣機関砲が束になって竜種の胴体を軽快な音でノックし続ける。
効いていないのは明らかだが、それでもそちらに気が逸れた。
つまり進撃が止まったのだ、竜種型がⅡ号戦車隊に砲身そのものの顔面を向けたその瞬間。
全く逆の方向からⅢ号戦車隊6体とマウス隊3体が射撃を開始する。
竜種はその半身に先程よりも巨大な衝撃をまともに受けその身を大きくぐらつかせる。
流石に脅威を感じたのか、黒いドレスを纏う女性型の周りにとぐろを巻き始めていた。
守らねばならない、ということはアレがあの大型共生種の核なのだろう。
完全にその脚を止めた隙を狙い、挟撃状態を維持させたまま私は突貫する。
強襲形態の突破力を生かした白兵戦を仕掛ける。
大型共生種の核であろう女性型災獣の顔はそれを隠すベール越しにもわかるほど醜く歪み、とぐろを巻いていた竜種型に迎撃させる。
蛇のような胴体で上段からの叩きつけ、それをトップスピードを維持したまま右履帯を格納し、急制動をかけた無茶なドリフトで迎撃してきた攻撃を躱し、左に回り込む。
僚機である『私』は同じ動きを寸分無くトレースし、ぴったりと付いてきている。
砲身を格納し、黄色に光る対災獣干渉熱刃を起動。
迎撃のために伸ばした竜種の胴体が見せた隙を狙う。
勢いにまかせたまま二振りの熱刃で刺突するのはガラ空きの女性型。
驚きに目を見開いているあたり意外と感情は豊かな方なのかもしれない。
と油断無いことを考えてしまう。狙う先は、その綺麗はお顔。
だが彼女の周りに貼られた透明な絶縁壁が一瞬の刃先を受け止め、僅かにズレた刺突は右肩を貫く。
ニンゲンのように真っ赤な血が巻き上がる事は無く、岩石を砕くかのようにひび割れた腕が崩れ落ちた。
「◾️◾️◾️◾️◾️◾️ッーーーーーー!!!!!」
口が裂け、ぞろりと牙をむく女性型。憤怒に駆られた顔は蛇のソレ。
そして目の前には鎌首をもたげた竜種の顔面に光が収縮していく。
私の攻撃は、致命傷にはならなかった。
というより、この攻撃で仕留められなかった時点で既に詰んでいたのだ。
「…Scheiße(畜生)」
その光を睨みながら吐き捨てる。
ここで終わるならば、せめてあの男に一発ぶち込んでおけばよかった。
※※※※
「…それで?何しにきたのよ。アンタ達は。」
「ここに、あの方が来ると聞かされたのです。ならばこそ、私が必要なのでは、と。」
暗い格納庫に佇む黒い影。
黒い外套に身を包んだ彼女。
本当ならば、見慣れた彼女。
しかし今その目元は、金属質のバイザーに隠されている。
「そう…なら勝手にすればいい。」
「ありがとうございます。」
人形のようにニコリと口元を動かす彼女をみて、自分の目つきが自然にキツくなるのがわかる。
「アンタ達が、何をするつもりか知らないけどさ、邪魔をするんじゃないよ。…灰塵教会。」
「えぇ。私はここに来るあの方…【灰の方】を守る火守女としてただ待つだけでございますから。」
教会の変態ジジィ共が、彼女に何をしたのかはわからない。
だが私が知っていた彼女とは、容姿や性格はそのままでも全く異質なナニカに変わっていた。
嘆息しながら踵を返す。
「火守女…ね。もうあの頃には戻れないのね…
背中に彼女の視線を感じながらそう呟いて、私は研究室へ脚をむけた。
『大変だねぇ技術士官サマはさぁ?』
「盗み聞きとは、関心しないな。主任。」
『アッハハ!!ま、どうでもいいんだけどね!!』
入室した途端に聞こえる耳障りの悪い声が手首に巻いた通信機から聞こえる。
本当に嫌らしい奴だ。
『通信状態のまま話すそっちの落ち度なんじゃあない?それで?使い物になるの?ソイツ。』
私はその声に嫌悪感を隠さずに吐き捨てながら、研究室の窓から見える格納庫み収容されたモノを見る。
遺跡から発掘されたモノ。前時代の遺物。時代遅れの骨董品。
そして、そのガラクタの前に立ち手を伸ばす、黒い外套を羽織ったカラスのような彼女。
「私が知るわけ、無いじゃない。黙ってアンタは自分の仕事をこなせばいいのよ、主任。」
『ハイハイわかりましたよーっと、キャロリんといい君といい。言うことがキツイねー全く。それじゃーね
嫌な敬称で私を呼ぶ声はブツリと切れる。
Cityに迫っていた災獣の大群の守備任務をあの主任は単機で完全にやり切っていた。
あとは雑魚の掃討だけだという。ならばもう、勝手にやらせればいい。
格納庫の中では火傷に爛れたような腕を伸ばし、ガラクタの胸に掌を当てた彼女が俯きながら何か祈っていた。
その姿は、まるで崩れ落ちる戦士に加護を施す神官のようであり、倒れかかる人間を誘う悪魔のようであり、
主人の帰りを待っていた従者のようであった。
するとその掌が触っていた装甲が薄らと赤く燃え始め、チラリチラリと火の粉が舞い始める。
それは、灰に残っていた燃えさしがまた微かに燃え始めたかのようだった。
…なんであれ、彼女はすでに私の理解を超えたモノになってしまったのだ。
それを睨みながら私は独り呟く。
今の私はグレーテル・フライヘア・シュテルマー・フォン・ライヘンバッハ。
…そこでふと笑えてきた。
私も、もうあの頃には戻れないということに。