機密記録(一部破損)
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消えゆく鼓動のように、パチリパチリと燻る火が視える。
私にはもう、見えるモノなんてあるはずがないのに。
罪火によって世界は焼かれた。
灰に還る定めの中でまた、私は貴方に出会った。
全てを焦がす、真っ黒に燃やす。
しかしその火は、人ならざるモノでは、起こし得ない。
人は自らの火で、焼かれるべきである。
灰の方、どうか、火を継いで下さい。私の祈りを、どうか。
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それは、燃えカスであった。
今まさに灰になるはずの燃え尽きる前の木炭のようであった。
全身を炎で舐めらたように黒ずんだ体躯。
欠損した左肩の接合部。
頭部装甲から覗くスリットの奥で光る赤。
その全てが静かに燃えているように拡大と縮小を繰り返し明滅している。
膝を折った戦士。その姿で見つかった「彼」。
その彼を呼ぶ声に導かれるままに立ち上がる。
実際に言葉を交わした訳では無い。
だが彼を見あげる彼女と彼は再び出会ったのだ。
燻っていた炎が燃えがり、薪が爆ぜるように動きだす。
背面の2基のバーニアと胸部のバーニア2基に火が入り、溜まっていた煙を吐き出すように勢いよく起動する。むせ返るような黒煙が格納庫に充満し、その視界全てを黒く塗りつぶしていった。
瞬間、その逃げ道を作るように格納庫の扉が開かれた。
外から侵入した光と、それから逃げるように抜けていく黒煙が道を形作る。
その中を、鋼鉄の人型が飛び去った。
火の粉を巻き上げながら、舞い上がる灰を纏いながら。
獲物を見つけた、猟犬のように。
その背に居る者の願いに、応えるように。
「貴方はまた、飛び立つのね。また一緒に戦いましょう。貴方が戦い続ける限り。私は貴方に寄り添いましょう。」
消え入りそうなその声は、格納庫の闇に溶け込んでいくようであった。
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砂に塗れた大地を、バーニアの炎で削りながら煤だらけの機体は高速で突き抜ける。
頭部の目にあたる部分から真っ赤に燃える光の軌跡を後に残しながら。
進む先には、砂嵐が巨大なドームを形成していた。
目標はその中心。
ドームの外壁は砂を巻き上げる暴風、その壁は鉄ですら切り刻むような勢いだ。
それに比べればちっぽけなその機体は、すぐにでもバラバラにされるだろう。
だが、そうはならなかった。
辛うじて動かす事ができるであろう右腕。それを支える右肩はトースターを横に2個並べたような形。
その上部が展開し、中に残っていたモノが見える。
彼が戦っていた時代では、ラージミサイルと呼ばれていた。
それは着弾した瞬間に巨大な爆発と衝撃を与えるものだ。
それが今2発、発射される。
時間差で放たれたミサイルは暴風の風に触れた瞬間にその破壊力を遺憾なく発揮し、一瞬だがそに壁に穴を空ける。
だがすぐにでもそれは巻き上がる風で塞がろうとしていた。それをさせるまいと爆発する2本目のミサイル。
爆炎が上がる中、そのちっぽけな機体はかまわずにその中へ飛び込んだ。
そうして、すでに黒焦げな機体を新たに燃やしながらその機体はついにドームへの侵入を果たす。
その中心では、竜種を操る黒いドレスをきた化け物と戦う者達がいる。
彼女達はまだ知らない、自分達と共に戦う事になる彼のことを。
彼女達には知ることはできない、彼が何であるのかを。
彼女達に知る術はない、彼が何故戦うのかを。
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