「…行くか」
「応」「うん」
晴羽と共に、一夏と並んで歩く
アリーナまでの道は短い
そして、アリーナに入り、今度は選手用のピットへと向かう、俺たちが行うのは
原作とルールが若干異なる
第1試合俺vsセシリア
第2試合一夏vs晴羽
第3試合1と2の勝った方同士で
第4試合1と2の負けた方同士で
最後にまだ当たってない人と
の順で戦う事になる総当たり戦
当然ながら、セシリアは覚醒状態になるためには一夏と戦う事が必須であるので、最初に戦うのが有利
一夏は
後々で戦う方が有利になるから、俺は2戦とも少しだけ有利であるが…
正直、一切練習なしの状態でどこまで戦えるかは我ながら疑問である
最終的に結局届かなかった専用機のことはさっぱりと忘れつつ、ピットには汎用機のラファールを運んでもらって、それを起動する
その寸前
「笛吹くぅうぅぅうん!」
山田先生が息を切らしながら走ってくるのを見て、手を止める
「どうしたんですか?」
「届いたんです!専用機が!」
「良かったじゃないか!」
ぜぇぜぇと息苦しそうだが
それでもなんとか説明を始める山田先生
「…今更ですか?」
〈僕も想定外だったよ、まさかこんなに遅いとはね〉
控え選手として反対側のピットで待機している晴羽からの通信が入った
〈さっき完成したって連絡があったから僕の世界から転送したんだけど…オルガはやっぱり止められちゃったみたいだね〉
「is学園は男子禁制だからな
パイロットでもないオルガは流石に入れなかったか」
〈「止まるんじゃねぇぞ……」〉
晴羽と俺の言葉がハモる
やはり考えることは同じか
「すでに専用機としての調整を終えているそうなので、そのまま戦えると思います!」
息を整えたのか、山田先生の説明にも少しだけ落ち着きが戻ってきた
「コレを」
差し出されたのは、細い銀のチェーンに、半透明ながらに鮮やかな白赤青のトリコロールカラーで彩られた八面体状の結晶がついたペンダント
「笛吹くんの専用機、ストライクです!」
「ストライク!?」
〈オルガが言うにはG兵器のなかでも一番要望に近い機体のX-105ストライクをisとしてリビルドしたんだって…さぁどうぞ、起動して〉
「お、おう!
X-105 ストライクガンダム 起動!」
音声認証が起動し、
俺の体を機械の装甲が覆う
その瞬間、世界が焼き付いた
黒く焼ける
体全てが引きちぎられるような激痛を訴える、それを認識するよりも早く
直接脳に膨大極まる情報が流れ込む
反射的に思考速度を750倍、すなわち最高倍率にまで引き上げてもなお足りない
それでも激痛は止まらない
「ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!」
焼けついて歪んだ世界の中で
全てが焦げて壊れていく
視界がブラックアウトし
機体自体のパワーアシストがダウンする
俺の肉体が限界を迎えて
思考速度の750倍が強制解除され、同時にis ストライクも停止した
「笛吹くん!?」
慌てて駆け寄ってくる一夏と山田先生と、そしてどこかへと視線を飛ばしている晴羽だけが見えた
その声は、戦慄とともに聞こえた
「なんですの、今のおぞましい絶叫は」
「うるさい」
今はそんな事に構っている余裕はない
「オルガ!これはどういう事だ!?
あからさまに過負荷すぎるだろう!クソッ!馬鹿野郎が!」
実に都合良く通信不通状態になっているオルガに悪態をついてピットを飛び出す
「クソッ!」
「お待ちなさい」
「なんだよ今余裕がないんだ」
「それは私にだって分かりますわ
ですが、これは試合、自己管理もできない選手に、出場資格などありません、貴方が今飛び出せば、同じ汚名を背負う事になりますのよ?」
舌打ちと毒づきで不満を表現しながら
せめてこれだけはと救護班の手配を急ぐ
「…ダヴィンチちゃん、急いでくれ…!」
「…………」
結局その後、彼が目覚めることはなく
試合をスキップして
一夏vs僕の試合になってしまった
「…心配だが、仕方ない!」
彼と違って、素材のせいで作成に時間がかかるisは、まだ完全な姿ではない
十分な機動性と装甲こそ備えているが
まだその本質の能力を再現できていないのだ
「紅奶晴羽 アカツキ
出るぞ!」
完全ではないが故に
一夏との戦いは万全を期する必要がある
いくら
特に装甲の厚いブロック部で受ければ問題はないが、実体剣である以上は、やはり衝撃による装甲材の変形と盾自体の劣化はある
零落白夜を見たらシールドで防御し続ける戦法が確実か
迷いを振り切ってピットからアリーナに入った僕は、同じように飛んで出てきた一夏へと視線を飛ばす
開始のホイッスルが鳴るが、やはり動かない一夏
どうやら形態変化前の白式を使っているようだ
「…一夏、何があった?」
「アイツが…笛吹が倒れた」
「………………」
「お前の機体も同じところで作ってるんだろ!?試合なんてやめてisを停めろよ
じゃないとお前もいつああなるか分からないんだぞ!」
「構うものか…いや、僕と彼のisは開発セクションが違うんだ…大丈夫さ
巽君のisは少しパイロットに無理をさせる仕様だったみたいだけど
僕のは自分で開発してる
自分で作ってる機体なんだから問題ないよ」
「…」
やはり表情の暗い一夏に後ろ髪を引かれるが、
僕は
「速攻でカタをつけさせてもらう!」
独自に追加している装備
ガーベラ・ストレートを輝かせて突進する
形態変化すると
フィッティングとフォーマットを済ませるより前に仕留めてしまうために
格闘装備である『ガーベラ・ストレート』を持ってきたのだからそれは想定済み
「行きます!」
「ぅぉっ!」
突進からの右突きを回避した一夏は、なおも話しかけてくるが、そんなことは時間稼ぎと割り切って無視する
「お前!笛吹が心配じゃないのかよ!」
「心配だよ、で、それと試合がどう影響するのさ」
イグニッション・ブースト
本来は高等技術だが、僕は何十回何百回と繰り返したシュミレーションの結果
システム側に全てを任せてイグニッションブーストを使う事に成功した
ブレードを振り切った瞬間の推力を餌に、細かく方向を調整して横飛びする
横飛びに合わせて剣を薙ぐことで
白式の背中に傷をつける
その直後にまた横へ飛ぶ
その軌道は一夏の白式を中心とした三角形を描き、五芒星へと変化していく
「まだまだ加速するぞ!」
「んのやろぉぉっ!」
徐々に目が慣れてきたのか
高速移動に合わせて一夏も動き始める
徐々に撫で斬りが当たらなくなってきて、回避率が30%を超えたところで
五芒星軌道の連続イグニッション・ブーストを中止し、角度を変更する
次に来るはずだった場所を避けた一夏に、ちょうど当たるように
体当たり、それも風を切る形状の肩からの体当たりだ、白式に激突したアカツキは、その勢いから自らも激しくSEを減じながらも停止はせず
逆に相手の体勢を大きく崩す事に成功した、
「これで止めだっ!」
「まだぁっ!」
逆袈裟斬りの一撃が一夏の白式を切り裂くその一瞬、驚異的な機動力で白式がブレードを振り下ろし、そのままの勢いで振り切った
ガーベラ・ストレートは日本刀型
基本的に激突を想定していない、斬撃特化のブレードであり、未だ名も無きブレードはそうではなかった
パキャァァン
という、澄んだ音と共に
ガーベラ・ストレートが砕け散る
「チッ!」
砕けたガーベラ・ストレートには目もくれず、実装できた数少ない武装のうち片方
試製71式防盾でブレードを防ぐ
そして
もう片方の武装である
『シラヌイ・ドラグーン』が8機
シールドを回り込み、
全方位から同時にビームを発射
あっさりと、白式のSEを消し飛ばした