あれから一年程経った
テント(仮設とは言ってない)の生活は幸いにもそこそこ環境レベルが高く、本当にライズフォンからのメッセージで物資を要求できたりしたので
生活に困窮はしなかったが
一年の間に色々なことがあった
背が伸びたり、炎が強化されたり
ポ○モンが放映されたりだ
そしてなにより
…おめでとう!
3歳ボディは4歳ボディに進化した!
せめて後十年くらいは待ちになりそうだ
…今はライズフォンにインストールされていたFGOをやっている
暇つぶしにプレイして見たのだが
とかく星5が出ない、高レベルの星5を使えない新規ユーザーに対する厳しさが群を抜いている
ここまで遊びにならない遊びは
ゲーム版のビ○オペ以来だ
「…また爆死…140連爆死…」
高位レアは出ないのが基本とは言えど
ここまで出ないときついなぁ
結構リセマラしてみたが、それで100回やっても一回も出ずに挫折して星4二体で妥協したのだが
…巌窟王ピックアップ欲しいなぁ…そろそろ巌窟王戻ってきてくれないかなぁ
謎のヒロインでも良いや
とりあえずクイックの強い鯖を
俺はクリティカル厨なんだよ
「さぁて、今日はどうしよっかなぁ」
常時四倍速を維持できるようになった俺は、そのままの速度で言語や行動だけを減速し
うまく加速率を悟られないように動く方法を習得した
「…………」
今日も思考実験だ
ここがなんの世界か、あるいは如何なる世界かは不明だがとりあえず
何もしないわけにはいかない
突然世界が滅んだり、魔術師が襲って来たり
本持った魔物が訪ねて来たり
アラガミが出現したり
バイドが攻めて来たり
可能性はどこにでも転がっている
その中でも要注意な幾つかの世界における有効なシチュエーション実験を行う
まぁ最終的にガ○シュ世界なら
世界は修復されるのだが
龍が出て来たり、
エ○ァに乗って!とか
僕と契約してとか言われたら
それはそれで困るが…まぁ一応実験はしておく
「…スゥ……ハァ……」
大きく、ゆっくりと呼吸する
自分の中にある全てを吐き出すように
吐き出したものと入れ替えて
新しい空気を吸う
皮と骨と血脈と肉、全ての肉体を構成する要素を思考内で分解する
ゆっくりと、大きな呼吸を維持しながら、自分を分解して、再構成するのだ
人体図を思い浮かべる
皮膚を浮かせて、その下
あらゆる構造を思い浮かべて
自分自身の人体の、
完全な模型を頭の中に創造する
「少しでも矛盾があってはいけない
完璧に再構成するんだ…」
また一つ、呼吸する
肉を透けて、骨と神経、血管
臓器の蠕動すらも把握する対象だ
ゆくゆくは一刀修羅のように『全力を出し尽くす』くらいは出来るようになりたい
「!」
できた!完璧だ………矛盾はない
これこそ俺自身の体だ
……さぁ、次のステージだ
「スゥ……ハァ………」
生まれて来てから、今現在まで
全ての時を思い起こす
自分自身の人生を再体験する
何を得た?何を覚えた?
それら全てを思い出す
「それは、必要だ…!」
思考速度を強化するだけでは足りない
自分の記憶全てを思い出せ
それは走馬灯を短縮する
脳を極限まで加速して、
加熱する思考をさらに進める
「っ!」
呼吸が乱れた
その瞬間、
浮かんで来た記憶たちが霧散する
「やり直しだ!」
再度坐禅を組み直して、
思考を深く沈める
自問自答だ
『何があったのか』『何を得たのか』『有効に使えているか』『忘れてはいないか』
繰り返す問いと答え
それは自分をループさせ
徐々に昇華させて行き
自我を無我へと至らせるだろう
そして、時全てを往復して
漸く全てを終えたそのあと
異常に疲労した思考を完全に停止して立ち上がる
「っ!」
全てを無視して腕を振る
倒れそうになる体を、
無意識に出た足が支える
テントの壁に設置された白い板を殴りつけて、蹴り飛ばす
そのあとはひたすらに
的が砕けるまで攻撃を続けて
砕けたら倒れるように眠った
翌日
「無我の境地…ってわけには行かないが、それなり…かな?」
俺は昨夜の自分が
砕けた的に視線を向けて
軽く笑い…砕けた的の残骸を
燃えないゴミに突っ込む
可塑性プラスチックで出来ているらしいから、専用の燃えないゴミ箱に
破片を捨てておけば
直接回収して再生してくれるらしい
全く、『紅コーポレーション』様々だ
「よしっと」
破片をゴミ箱に捨て終わった俺は
テントの外に出る
テントの裏側にあった模様
バーコード状の数文字列、
そのロゴはこの世界では結構有名な企業のロゴらしい
こないだスマホで見てたアニメのポ○モンに挟まってCMでも出ていた
「そこの社長にはえらく気に入られているらしいしな…今更借金がどうこうとか言われたら返せる気がしないが…」
まぁ最悪の妄想はやめておこう
「…何が何だか…知らんしな」
転生者の可能性が高い社長に
同じ転生者として接触することも考えなくてはならない
4歳にもなったことだし
俺は浮遊で移動しつつ距離を稼いで
ある程度街に近づいたら徒歩で人目を欺き、街へと入る
………
やっぱり4歳ボディは早まったかもしれない、みんなこっちを見る目が完全に親とはぐれたガキを見る目だ
成長の時間が必要だな…
あれから十年が経った
俺も中学生程度までは成長して
頭の中はすでにオッサンレベルである…加速倍率は常時10倍、最高瞬間加速度750倍
持続時間的には30倍程度だ
筋力などもかなりの線
………であるはずだ
冗談半分で端末から依頼した握力測定機器の針が振り切るくらい…約200キロ
「冗談で済むレベルではない…
石を砕くなんてレベルには至っていないが、骨を砕くくらいなら可能だ
自動車のボンネットくらいなら引きちぎる事すらできる
鯖として見てもおそらく
筋力:E 敏捷:E++
程度の評価は出るだろう
耐久は無惨としか言えないが…
「まぁ、マイナスより先にプラスを考えよう」
頭を回した俺は
そのまま思考訓練に入る毎日欠かさず、イメージトレーニングでの組手と
実際に体を動かしての訓練
山肌を活かしての走り込みなどを行なっている
「どんな世界でも、体力があるないは生存力に直結するからな」
「良い心がけですね」
息を吐きながら一人で呟くと同時に
背後に出現した気配、それはセイバーオルタ(メイド)のものだった
「どうかしましたか?セイバーさん」
「今の私はメイドです…いえ、そうではなく、社長からのお届けものです」
背後に突っ立っていたメイドオルタは、いったん離れる旨を伝えてからその場を離れて
段ボール箱を持ってきた
「社長からのお手紙と、お届けものとなります」
「…はぁ」
とりあえず手紙を読ませてもらう
予測が正しければ、この手紙には届け物の内容が書いてあるはずだ
~臼井巽様へ~
やぁ、久しぶりだね
ライズフォンは活用してくれているかな
あれにはわが社が出している数多くのゲームがインストールされている
是非とも遊んでみてくれ
それと近々、新商品として君のよく知るモノを売り出すつもりだ
期待して待っていてほしい
今回は手紙はこれだけを伝える為の物ではない
君にあるものを送ろう
これは私からの気持ちだ
可愛がってやってくれ
by社長
「社長…今更だな…」
そもそも十年も同じ人物が立場を揺るがさずに社長を続けているという
驚異的な手腕に驚きながら
俺は落胆に近い声を上げる
「…あ、メイドオルタさん、段ボール受け取りますよ」
「お渡し致します、どうぞ」
渡された段ボールを開けると…
「こいつは…
驚きながらも同梱の説明書をパラ見して、電源を入れて、システムを起動する
「ハロハロッ!」
赤い目をチカチカさせながら飛び跳ねる紫色のハロ
「おう、元気な事だな…」
「ハロッ!ハロッ!」
あええっと…
説明書を見るに、こいつは自己成長機能付きの学習型コンピュータを搭載しており、自分のプログラムを自分で作成してアップデートしていくらしい
「つまりはまだ喋れないのか…」
ある程度の言語なら理解できるようだが、プリセットされた単語くらいであり
あとは『学習』の結果
いかなる単語がいかなる状況、物体を示すかなどをを修得するらしい
『アレ』とか言われたら混乱してしまいそうだな…
「お渡しするプレゼントは以上でございます…最後に、社長から一つ」
「伺います」
俺の即答を聞いたメイドオルタは
軽く首肯して
「近々、一斉検査がある、君にはそれを受けてほしい、そうすれば君は
介入することができるだろう
この、無限の成層圏に
とかのことです」
そして、俺は悟った
この世界は…
『世界最大規模の出来レース』
インフィニット・ストラトスの世界だ
その瞬間、俺は頭を抱えて叫んだ
「やらかしたぁぁぁっ!」
この世界…転生特典がどうとか絶対いらない世界だったぁぁっ!
ヤバイヤバイ!絶対解剖されるって
束殺害END目指さなきゃヤバイって!
「…では、私はこれでお暇させていただきます、今後の予定と致しましては、来週の水曜日、一月一日にクレナイコーポレーション本社ビルにて、
社長と御面会頂きます
午前10時から具体的な行動方針などの打ち合わせを予定しておりますので、万障お繰り合わせの上、ご参加ください
よろしいですか?」
メイドオルタの冷たい声に
一抹の安心感すら覚えながら
俺は頭を戻して頷く
「も、もちろんさぁ…あ」
「何かお気づきの点がおありですか?」
「あぁ、送迎とかはある?無いなら無いで良いけど」
「無論、直接本社までお車でお送りさせて頂きます」
メイドオルタに隙はなかった
「了解だよ…頼んだ」
「他にご質問は」「無い」
俺のクイックキャンセルにも表情を崩さないメイドオルタは
「では、これにてお暇させて頂きます」
一礼して去っていった