「お迎えにあがりました、笛吹巽様」
「うん、お迎えありがとう」
とりあえずメイドオルタに礼を言って、車から降りる
正面玄関前で止めてくれたようだな
「よし」
まずは本社ビルの威容を目に焼き…
シン・アスカとレイ・ザ・バレルが見えるのは気のせいなんですかねぇ
「ここからは、営業担当のルナマリアがご案内します、私は車を回してきますので
あとはルナマリアの方にお願いします」
「わかりました」
俺は、本社ビル前で待機していたルナマリアと挨拶を交わして
シン・アスカとレイ・ザ・バレルの前を通り過ぎる…正直呼吸が怪しい
「最初に、受付での登録となります
登録時に記録いたしますので、
まずは、こちらにご記入ください」
渡されたアンケート用紙の要項を
さっさと埋めていく
ええっと、名前は『笛吹巽』年齢『満14歳』性別『男性』に
公的身分『学生』…かな?
前にメイドオルタに聞いた所によると
義務教育の制度を利用して登校義務免除されてるらしいし、それで
「はい、終わりましたよ」
「ありがとうございます」
要項を埋め終わった用紙をルナマリアに返すと、受付に案内される
「いらっしゃいませ、ようこそ、クレナイコーポレーションへ」
その瞬間、俺は全てを諦めた
だってそうだろう?
目の前にマリア・カデンツァヴナ・イヴと小日向未来と立花響とかいう
超メンバーが揃ってるんだぜ?
393はともかくビッキーとたやマだぞ?
シンフォギア世界の主人公さんとアイドル大統領嬢に、最恐にして最狂最弱のギア『
死んでしまう…
「目、目が死んでるっ!?」
「ちょ、巽さんっ!?」
ビッキーに名前呼ばれたような気がするけど俺は元気です(現実逃避)
「現実から逃げちゃダメです、私も昔…といっても、私じゃない『
響との関係を気に病んで、現実から目を背けてしまった時期があります、そのせいで皆を傷つけてしまいました」
手を取られて、軽く引っ張られる
「だから、現実から逃げないでください、どんなに辛くても、悲しくても
逃げた先には、大きな悲しみしか待っていませんから」
「あはは…重い…」
真っ正面から目を見つめてくる393
その目はどこまでも深い翡翠色
「…はいはい、小日向さん、お客様相手に失礼でしょ、離れなさい」
マリアさんが後ろから小日向さんの肩をつついて、手を離させる
「あ、失礼しました」
「いや、良いんだ…ありがとう」
離された手を軽く振り、微笑む
「こちら、見学中の名札となります」
マリアさんから名札を受け取り、ビッキーの笑顔を眺めながら、ルナマリアに先導されて
本社ビルへと入る
「…最初に、社長にご挨拶いたします」
「初顔合わせってか?分かったよ」
エレベーターで10階に向かう
「10階は社長室、資料室となっております」
エレベーターはすぐに止まり、
10階を指し示した
「さぁ、お降りください」
「あぁ」
ルナマリアに促されてエレベーターを降り、正面の社長室に向かう
静かに、かつ聞こえるように
扉をノックする
「社長、ルナマリアです
笛吹巽様をお連れしました」
「入ってくれ」
その返事の2秒後、扉を開けるルナマリア
「お入り下さい」
「失礼します」
社会的マナーに従い、一礼してから部屋に入る
「待っていたよ、笛吹巽君」
「こちらこそ」
背中を向けた姿勢から、
椅子を反転させる社長……
「私はクレナイコーポレーション社長…いや
わたしはぁ、神ダァァァッ!」
壇黎斗
「神ィィッ!?」
「ゔぇぇあっはっはぁ!驚いているようだなぁっ!」
大仰なポーズと共に声を上げる
壇黎斗神は
「くっだらない嘘ついてんなや!」
唐突に出てきた男に頭をぶっ叩かれた
「ちょっ!大丈夫ですかっ?!」
「あぁ、この男にはこんくらいが丁度良え、むしろ足りんねん」
社長を叩いた男は、そんな
ぶっきらぼうな返事と共に
追加の一撃を入れる
「いつまで寝とんねん!」
「いった!何も叩くことは無いじゃないか
いつもながらひどいなぁ…」
急に口調を崩した社長神は
首の横に手をやり、
『
機械的な音声と共に
特徴的なメモリスティックを取り出した
「改めて自己紹介しようか
僕は
自己紹介の最中に、光と共に
背格好も声も変わり…いや、戻っていく
「転生の前に一度、話したことがあったよね?覚えてるかな?」
神から元の…恐らくは本来の姿に戻った少年は、その少年としての笑顔を見せる
その笑顔に、
遥かかつての記憶が該当した
「君は!…彼か!」
「思い出してくれたか…笛吹巽ィ!
なぜ君の元にセイバーオルタが現れたのか、なぜ転生場所を知っていたのか!
なぜ君の生活を支援したのくわァ!
その答えはただ一つ………
笛吹巽ィ!
私が君と同郷同時代の、転生者だからダァ。アァーッハッハハハハハー!」
(アロワナノー)
急にテンションを上げた晴羽社長は…
再び後頭部を打撃された
「いつまでネタに走っている!」
「あいたっ!、ぶったな!今まで
誰にもぶたれた事ないのに!」
後頭部を押さえた晴羽は、例の天パのセリフを叫ぶが…流石に
「いや、さっき打たれただろ」
ツッコミを止めることも出来なかった
「な…なん、だと…」
まるで信頼していた友人に後ろから撃たれような表情をした晴羽は
ガクッと首を落とし
1秒ののち
「ネタはここら辺にしておいて、会社の紹介をしようか」
(切り替え早っ!?)
「とりあえず、僕の転生特典から説明するね…僕の転生特典は、覚醒ステージ3
『固有世界創生:
能力は…名前から分かると思うけど
自分の世界を所有する能力、中でもこの能力は機械関係の支配能力として覚醒している
最初は単純に空間を作るだけの能力だったんだけど、いつのまにか、ね」
「覚醒ステージってなんぞ…」
「それは俺が説明しよう」
突然口を出して来たのは、先程
晴羽社長をぶっ叩いた男
「俺は
「………」
俺が呼吸を止めると
その男…九龍はニヤリと笑って
説明を始めた
「覚醒ステージとは『転生特典』の進化度合いを示す指標だ、一部の転生者は特典が成長する事があり、それが新たな機能を得る、あるいは既存の限界を超える成長を果たした時に『ステージ』が上がる
晴羽で言えば、ステージ1が
『固有世界創生』ステージ2が
『固有世界創生:
そしてステージ3が
こんな感じに、系譜のように段階立てて進化するんだが…晴羽はどうもステージ2で機械系に特化したらしいな」
「なるほど…」
「固有世界創生の成長は大きく言って三種類『空間拡張』『法則支配』『環境制御』で、晴羽は最初と最後、空間と環境が強く成長したらしい
最初は倉庫くらいだった空間が、今じゃ惑星単位なんだとさ」
笑いながら軽く手を振る晴羽をチラ見しつつ、話の続きを聞くと
「
「なるほど…」
「ついでにここで働いてるのはほとんど、その空間内の工場で作られた
ニヤニヤ笑いながら晴羽を指差す九龍は、
「こいつ、機械人形作ってからずぅっとゲームだのアニメだののキャラを作ることに熱中しててな?終いにゃネットだぁゲームだぁから情報吸い上げて自己進化する成長プログラムなんてモンスタープログラム組み上げちまったんだよ」
言いながら指をルナマリアへ向ける
「そこで立ってるルナも、人間そっくりなのは外観と頭だけ、皮と外殻剥ぎ取ればスピーカーだの回線だのが丸見えだ…おっと、悪気があるわけじゃねぇ」
「…気にしないでください、笛吹様、私達が本質的に機械であり、0と1で構成された電気信号の元に命令文を実行しているのは確かですから」
笑いながら露悪的な口調で機械人形を見下すような発言をする九龍と
それを事実として受け入れている様子のルナマリア、
「だがそれは決して立場的差を表すものとは違う」
そこに、晴羽が口を挟んだ
「彼女らが01で記述される思考を持つのは事実だ、だがそれは人間も同じ
僕は全ての自我ある機械を一個の意志として尊重する、それがクレナイコーポレーションの理念、例えその意思がどこへ向いていても構わない
停滞や後退を選ぶのではなく前へと進み、可能性を掴み取る意志の力『創造力』の尊重だからだ」
自作の機械人形達に、相当に熱を入れているのだろう晴羽は
大きく手を振りながら
気合の入った演説を上げて…
「おっと、随分長く話してしまったね、笛吹君、まぁ、彼女らが我が社によって生み出された存在であることはご理解頂けたと思う、ここからは社内解説の時間だ、後でまた会おう…ルナマリアさん、引き続き案内を」
急にテンションを下げて
早口で良い切る
「はい、それでは笛吹様、これより社内施設、および各セレクションとメンバーの説明となります」
「了解だ」
さっと社長室を離れ、
エレベーターで一階下、九階へ降りる
「こちらは書籍部の管理階、通称を『
ここでは、我が社の歴史を始めとしたさまざまな記録や、出版している書籍の管理か行われています
ここにいるのは少々物音に敏感な方々なので、お気をつけください」
ルナマリアの先導に従い
板床で足音を立てないように歩く
「コピーライター…という建前でタダ飯を貰っている方々と、真面目に働いている方が居ますが、まずはコピーライター側に行きますよ」
「了解だ」
俺は極力足音を立てないように歩くが、それでも板床相手に誤魔化しは効かず…
ついにギィッと音が鳴ってしまう
「そこ、うるさいですよ」
僅かな足音にすらも指摘を刺さずには居られないようで、刺々しい言葉が…
「えっちゃん、そんな言い方じゃダメよ!ちゃーんと説明してわかってもらわなきゃ」
横から制止された
「はじめまして、私は雷、カミナリじゃないわ!そこのところもよろしく頼むわね!」
ぺこっ、とお辞儀をされる
敬意を払え雷、司令官は礼儀を守れと教えただろう…なんて言うつもりは無いが
なかなか可愛いな
「こっちは妹の…」
「電です。どうか、よろしくお願いします」
雷の後ろから出てきた少女…雷にそっくりだ…は、動きもそっくりに
ぺこっ、っとお辞儀する
「こちらこそ、雷ちゃん、電ちゃんに…そちらは?」
「謎のヒロインXオルタ…」
ムキュ、とチョコレートを口に放り込むエックスオルタ
一応名前は把握しているが、
礼儀として聞いておいた
『艦これ』より、『雷電姉妹』と
『Fate grund order』より
『謎のヒロインXオルタ』
がここのキャストらしい
「随分だなぁ…まぁ、よろしく」
次々にお菓子をヒョイパクするXオルタ…その様子を見て確信した
こいつがタダメシ枠だと
「そうだ、太郎さんも呼んでくるのです!」
急に電が叫ぶ
「どうした?」
「私たちコピーライターは『実際は何もしない職』なのです」
突然の暴露!?
「電、それは言い方が悪いわよ、正確には『ヘルパー』という表現が良いのかしら?私たちはいわゆるキャッチコピーとかも作るけど、それ以上に
ほかのセレクションの仕事が詰まっちゃってデスマーチになりそうな時に
ゼネラリストとして参加するの」
「その、体力要員が、太郎さん
本名は『佐藤太郎』…」
もしかして、あの人…?
「基本的に勤務形態は自由…だから…今は…焼肉タイム…」
やっぱあの人!?焼肉っ!?
「それは…仕方ないのです」
電は急に消沈してしまった
「あ、電!元気出して!」
雷がフォローに回るが、涙目は回復しない
「…落ち着きなさい、電」
とりあえずゆっくりと頭を撫でる事にした
「…司令官さん…」
グズ目からもとのほんわか顔に戻った電を見届けてから、思案する
『タダメシ枠』がいるのは案外無駄ではない可能性もある
今の会社の一般的には
人材をギリギリにまで切り詰めて諸経費を削り落とし、かつ人を限界ギリギリにまで酷使してすり潰し、擦り切れたら交換する
というのが基礎スタイルだが、
デスマーチに対応しきれずに就業時間から翌日の始業時間まで残業して休憩時間も関係なく働くケースもある
そんな時にヘルパーが参加できるのは大きいだろう、新人のような役立たずではなく
ある程度の技能を心得たサポーターが増えてくれるのは純粋に戦力になる
「これもこれで、余裕を見た戦略ってことか?」
どうでも良いことを口走りながら、雷の方へ向き直る
「邪魔して悪かったね、俺たちはもう行くから、それじゃ」
「え?もう行っちゃうのですか?」
電が袖を引っ張るが
「すまんな、俺はちょっと社内案内で回ってるだけなんだ、縁があればまた会おう」
俺はその手を、優しく引き離す
「…また、いつか、なのです」
納得してくれたらしい電は、こちらに視線を向けて、微笑んでから去って行く
「…またな」
「また会いましょう!」
「それじゃ」
俺、雷、オルタの順の言葉と共に
俺は少し離れたところにいたルナマリアを促して、書籍部の面々を探そうとして
「おっと!お客人ですかな!?」
明るい茶髪に髭を生やした
緑の礼服に身を包むおじさんが
大声とともに訪ねてきた
「お客様です、笛吹様、こちらの方は『ウィリアム・シェイクスピア』、イギリスの作家…をモデルとした機体です」
ルナマリアは若干の嫌悪感を示しながらも、大きく表情を崩すことなく
「そんな言い方は良く無いわ?社長の言うように、『私達は人と平等』であるべきよ」
後ろから出てきた少女に気をとられる
「おお、ナーサリー!
「ナーサリー…?」
「はい、彼女は『ナーサリー・ライム』原点においては『未だ書かれざる物語の形』として描かれたキャラクター『相手を映す鏡』です」
シェイクスピアの呼び声に、ルナマリアが解説を入れる
「はじめまして、素敵なアナタ、わたしはナーサリー・ライム、貴方を映す鏡なの
さぁ、あなたの心を映させて?」
「…えぇっと」
「話さなくて良い、彼女は君自身の思考と感覚から君の輪郭を読み取るのです
彼女にはあらゆる欺瞞が通じない、何故なら彼女の鏡は貴方の姿ではなく
貴方の心を映すからです」
シェイクスピアの勢いに押される俺は
そのまま黙り込む
「…貴方はまるで、砂浜に打ち返す波のように、大きくて、静かで、安らいだ心の持ち主ね。一面ギッシリ本棚のシェイクスピアおじさまとは大違いだわ♪」
「………」
「あぁ、つばさおじさまとも似つかない、わたしの見た誰よりも大きなスケールね
…つばさおじさまはコンプレックスまみれだったもの、心のスケールはおおきいのに
みーんな自分の事で埋めてしまうのよ?それって実は、いけない事なのではなくって?」
クスクスと笑うナーサリー
「心には自分と他人が住んでいるわ、自分のこと、ひとのこと、思い出と考え
心のスケールがたくさんあるのに、みーんな自分の事で埋めてしまうなんて、無駄遣いだと思うの」
「なるほど、全く同感…だが」
「ハハハハッ!我輩豪快に馬鹿にされていますな」
「あぁその通りだなぁ…巽ィ」
後ろから、全く関係のない男の声
……………
「なぁに他人の悪口で盛り上がっとんねん、そんなのは面つき合わせて言えや!」
ゴン!と背後からド突かれる
「いってぇ!」
「九龍おじさま!暴力はいけないわ!」
ナーサリーの声に構わず俺の頭を締め上げる九龍
「九龍さん、それ以上は許容しません」
ルナマリアの鋭い視線で流石に止まった
「顔合わせも済みましたし、次に行きましょう」
「了解だ」
「俺もついてかせてもらう」
「それでは我輩はここで、さて、たしかこの辺りに新人の応募用紙の草案が…」
俺たちが離れることを宣言すると
途端に仕事に戻るシェイクスピア
「我々とてインスピレーションは有限ですからな、新人の力もどんどん取り入れて、空気を回して行かなくては!悲劇、喜劇、どんなストーリーであろうとその『独自性』こと我等が宝!我々が真に尊ぶべきものなのです」
随分テンション高いなぁ…
「シェイクスピアおじさまは忙しそうだから、わたしから言わせてもらうわね
みなさま、今日は『ご来店』ありがとう♪お陰で新しい
「こちらこそ、かのウィリアム氏と…ナーサリー嬢、貴女にお会いできるとは
思いもしなかった、ありがとう」
俺が手を差し出すと、それに応えたナーサリーは笑顔で手を出して
握手を交わす
「それじゃあお別れね、あ!ちょっと待って」
トテトテと言わんばかりに
本棚の影へと去っていったナーサリーは、
すぐに戻ってきた
「これを貴方に、受け取って?この会社のパンフレットなの、もっとも、みんな人形だし、結局この世界では表に出せないから、絶版になってしまった古いものよ」
「あぁ、それじゃあ貰うよ」
俺はパンフレットを受け取り
「ありがとう」
一言礼を言ってから、踵を返し
「えぇ、これからも、どうか『
九龍とルナマリアと共に
エレベーターへ乗った
「それでは、一階分降りて8階です、ここでは『特撮』特殊撮影技術を用いた映像作品の製作を行っています、
『○面ライダー』『ウルト○マン』など、現在様々なタイトルを撮影中…なのですが、セット数が膨大なため、このビルで直接作っているのではなく、撮影用のスタジオを使っています」
「……」
「よく来たね、私は戦極凌馬…物の本によれば、私は戦極ドライバーの開発者にして
仮面ライダー鎧武の直接的な元凶の一人、いわゆる黒幕側の人員だよ」
「…まさかアンタがいるとは思わなかったぜ」
「思わなかったかね?私は特撮のキャラクターであり、この場所に所属する上で
なんら障害となり得る要素を備えない人物である以上、ここにいる可能性は十分にある
それをイメージだけで排除してしまうのは些か以上の愚行ではないかな?」
「その性格が障害要素っていっても本人にはわからないものなのかな?」
俺はあえて意趣返しのつもりで
同じ返しを使ってみる
「そうかそれは面白い仮説だ、客観的な考証が必要だね…さて、実は
この特撮セレクションは私以外に『大空大地』『早田進』が所属しているんだが
実際のところ、二人は外のスタジオに出ていることがほとんどだ、二人には私から君のことを伝えておくよ」
「それは助かる、ありがとう」
「ルナマリア君も、それで良いだろう?わざわざ何処のエリアにいるかもわからない彼らに挨拶する為だけに移動するなどナンセンスだ」
「…はい、それでは、8階の二人はスキップして、7階に向かいましょう」
ルナマリアに促されて、俺は再び
エレベーターに乗り込んだ