IS転生 俺の相棒は胃薬です   作:魚介(改)貧弱卿

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第7話自己紹介

アレから時はたち…IS学園入学日

 

「…あぁ………」

「どうしたんだい?」

 

ため息をつきながら、

社宅を出て、晴羽と合流する

 

「それじゃあ行こうか、今日は入学日だからね、絶対遅刻できないよ?」

「遅刻するつもりなんてねぇよ」

 

「……だと良いけどね?」

「不安なこと言うなよ…」

 

二人で歩きながら話し込んでいると、違和感を感じた

 

「…待て、晴羽」

「?どうしたの?」

 

晴羽を呼び止める

「これは異様だ、現在時刻は午前6:40

この時間だと小学生や社会人がいても良いとは思わないか?」

「たしかに、この時間だと、そうだね」

 

「そして、ここは住宅街だ、商店街ならまだしも、ここまで人気が無いのはおかしく無いか?」

「たしかに、それはそうだ」

 

そう答えた瞬間、ライズフォンから着信音が鳴る

 

「いいか?」

「もちろん」

 

二つ返事で許可してもらえたので

俺はライズフォンを起動して

耳元に翳して…

 

「今すぐにそこから逃げてくれ

付近にISコアの反応5機、機種はラファール3機、打鉄2機と断定した」

 

フィリップの声が聞こえた

「朝からどんなことになっとんねん…」

「初日の朝とは一体…」

 

晴羽と俺の言葉は完全にシンクロしていた

 

「初日の朝って、大人しく、静かに楽しく登校できるものだと思ってたんだけど

みんなこうなのかな?」

「これが普通の学校生活か…みたいなこと言うなよ?絶対にそれは間違ってるからな?」

 

病気で学校にほとんど行っていなかった晴羽は知らないのだろう、

平日の朝の喧騒とは

決してビッグな人型兵器に襲われるような物理的に騒がしいものでは無いと

 

「それくらいは分かってるけどさ

言いたくなるものじゃ無い?」

「そうだね…are you ready?」

「オーケー!」

 

暗号的な隠喩で、走る用意を伝え…

「3…2…」

「「1…」」

 

「「GO-!」」

 

二人で一気に走り出す

 

「織斑先生になんていう?!」

「何にも!」

 

無論、逃走ルートそのものは確保されている、のだが、

「問題はそれを俺たちが!」

「走りきれるかどうか!」

 

後ろからどう見ても女性上位主義者の集団がISで、しかもアンリミテッド臭い威力のビームを撃って来るに至り

俺は()()()使()()()()()()()

 

「晴羽!掴まれ!」

「…了解!」

 

伸ばした腕にしがみつく晴羽を確保して、俺は靴の中に炎を灯す

 

目立たないように、極めて小規模だが、黒い炎が湧き上がる

 

「カウントアップ サーティーンサーティ(13秒間30倍)

衝撃歩法(インパクトハイク)スタート!」

 

瞬間的に30倍速に引き上げた速度を使って、足を強く踏み込み、体重とバネを

跳躍力に変換、派手にタイルを砕きながら

 

ほぼ水平に加速する

 

「なっ!撃て!」

 

焦ったか、碌な狙いもなく

指揮官らしきラファールの女が指示を出す

 

そういえばアイツだけラファールリバイブだ、装備更新の頻度が低いのか

それとも装備自体が良く無いのか

どちらでもいいが、

『敵のISは古い』

 

「それがわかれば十分か」

ラファールリバイブの機能的に追いつけるスピードではあるが、ラファール2機、打鉄2機から離れることを嫌ったのか、追撃に突出しては来ない

 

せっかくのお誘いを蹴るとは

失礼な奴だ(よく分かっている)

 

「…焦るな!ここは駅に近い、直線の動きを狙え!」

「まさか…連中、わざわざ人払いまでして人狩りかよ!?」

「さすが僕たち、有名人だなあ…」

 

現実から逃げ始めた晴羽を担いだまま、遮蔽物を求めて走り…隠れる事なく、射線を遮る為の盾として走り続ける

 

「…よし!手配終わったよ」

「なんの!?」

 

「とにかく早く1番ホームに!」

「了解!」

 

情報交換も返事も最小限に

ただひたすらに走り、

 

「ついたぞ晴羽!」「…今ちょうど!」

 

その瞬間、ホームに

どこからか音が鳴り響く

 

テレテテ テレテッ! テレテテ テレテッ!

 

その軽快な音は、どこかで聞いた

いや聞き慣れたような

 

「デンライナー!?」「早く!」

 

俺の叫びと、晴羽の声が重なる

 

「…っ!」「ジャンプ!」

 

急いでデンライナーに飛び乗る?

そして、そのままデンライナーで学校へ向かった

 

 

「…今時はこんな電車もあるんですね」

「学校に直接電車が乗り付けるなどありえん」

 

先生二人は密かに呆れていたという

 

 

静粛性のかけらもないその列車から男二人が出てきたのだが特に追求されることもなく

すんなりと教室にたどり着いた

 

「…しかし、居辛い」

「…まぁ、ね」

 

俺の席は窓側一番奥の後ろ

一夏は三番目の一番前

晴羽は廊下側の一番後ろだ

 

「………………」

晴羽は自分の席に着くや否や持参品らしいノートパソコンをひろげて

キーボードを打ち始める

俺は特にすることもないので眠る

 

「……」

 

「……………」

 

教室全体を分離した空気が包む

女子たちが騒ぐ声と、男子が沈黙する重苦しい対比はそのまま空気に温度差を生んでいた

 

『カタカタカタカタカタカタ!』

 

凄まじい速度で打鍵音が響く

晴羽の手元にあるpcからの音だ

 

「ぶつぶつぶつぶつぶつ」

 

ひたすら何かつぶやいているが

よく聞こえないので無視する

 

山のようなウインドウが開いているpcには、さまざまな内容の情報が描かれている

 

「…」

天道やらシェイクスピアやらとメールの送り主の名前がチラ見えしたのは気のせいだろう…そういうことにした

 

「……」

男子勢が各々沈黙するなか、女子勢の熱は一層加速して行き

 

「ねぇ誰が話しかける?」

「織斑くんカッコいい…」

 

無茶苦茶な雑音が教室に流れる

無論、俺たちは完全無視だ

 

一夏と隣の女の子が話し始めた

…あれは、篠ノ之箒か

 

それに聞き耳をたてる女子、積極的に混ざろうとする女子が分かれる

当然俺たちは無視する

 

そして、

「全員揃ってますねー、それでは、SHR(ショートホームルーム)を始めますよ」

 

パタパタという足音ののちに

入室してきた山田先生が

ショートホームルームの開始を宣告する、

 

「それでは皆さん、一年間

よろしくお願いしますね」

 

…誰も答えへん…悲しいなぁこれ…

 

「自己紹介を始めたいと思います」

 

めげない先生は、表情も変えずにそう言い切ると、その直後に

相川清香…出席番号一番以外取る気がない苗字の人物、が席を立ち

 

「出席番号一番!相川清香でーす♪」

 

テンションの高い紹介を始める

…が、クラスのみんなは(一部除く)

織斑一夏に釘付けである

…さっすがイケメン指数高いだけある

 

かたや俺は…10段階中で6〜7

と評価されれば十分に高いと思うレベル、晴羽も顔だけはイケメンと言えなくもないが、挙動不審が過ぎる

 

「笛吹君」

「はい、笛吹巽です

…趣味は読書と執筆、特技は記憶と描画、好きな色は桜と翡翠色、苦手な事は忖度と暴力、嫌いなタイプは無駄に騒ぎ立てる人です以上」

 

シーン…と沈黙する教室

その少し後…

やはり考え事でもしていたらしい

織斑が呼ばれても反応がない

 

「織斑くん、織斑一夏くん!」

 

「はっ!はい!」

 

急に頭をあげる一夏と、それにちょっと驚く山田先生

「あっ、あの、大声出してごめんね?でもね、自己紹介『あ』から始まって今『お』の織斑くんなんだよね

だからごめんね?自己紹介してくれるかな?ダメかな?」

 

「あ、そんなに謝らなくても

っていうか自己紹介しますから

先生落ち着いてください」

 

先生をなだめる生徒、というある意味珍しい展開が発生したものの

 

順調に話が進んで

立ち上がった一夏は…

 

「えっと…織斑一夏です…」

そのまま立ち尽くした

 

「貴様は自己紹介もまともにできんのか」

一言とともに、教室に入ってきたのは

 

IS国際大会モンテグロッソ第一回、総合優勝の最終勝者、世界最強(ブリュンヒルデ)の名を戴く、メタ的視点から見ると世界最初のISパイロットでもある

 

織斑千冬先生である

 

その瞬間、爆音が轟いた

「キャーッ!」

 

騒がしい、本当に

 

「毎年よくもこれだけバカが集まるものだ…いや、意図的に集めているのか?」

 

「もっと罵って!」

 

もうダメだなこの連中

 

「自己紹介の続きに戻れ」

「はい!」

 

クラス連中が一気に静まり返り

なにかの儀式のように静粛に進んでいく…

 

「紅奶 晴羽くん」

「……インターフェースに若干の不満がある…いや、これはGUIの相性が悪いのか?

デザイン自体は悪く無いはずだが…」

 

「晴羽くん?」

 

「リテイクになるならなるで日程を少しずらして、後の方にねじ込まないと

それ以前にフリット君とAXL(アクセル)にも負担をかけるし、ちゃんとデザイン科にも掛け合って修正を…」

「晴羽くん?」

 

「そもそもの話」「晴羽」

 

山田先生の声には気づいていないようなので、俺が声をかける事にした

「どうしたの?」

「お前の番だぞ」

 

「なにが?」

ふざけた顔のまま、

ぼけっと聞き返してくる晴羽

 

「自己紹介だ、馬鹿者め」

 

「え?…あぁ紅奶晴羽です

……特に言う事ないな」

 

「自分の略歴くらい解説せんか」

千冬さんナイスフォローに乗っかった晴羽は、笑顔でサムズアップしつつ

 

「紅コーポレーションでCEO(代表取締役)をやってます、あと…こっちでも多少テストとかはやる事になるから宜しくね?」

 

「えぇぇっ!?」

 

ここでもまた、叫び声が響いた

 

「…何故だ…解せぬ…」

 

「解せそこは、社会的身分ってやつや、法律的には差別されなかろうと身分学歴出身で差別されんのが社会の常識って奴や」

 

俺の声を返したのは…織斑先生の後から入ってきた渋メン…

 

「「翼っ!?」」

「九龍先生や、しばき倒すぞお前ら」

 

まさかの展開、先生枠に九龍さんが入ってくるとは思わなかった

 

…首のプレートを見るに

これで数学教師を騙っているらしい

 

「教員免許もってたんですか?」

「持ってるでー?現役の高校教師やからな、そら持っとるわ」

 

「…ガチで持ってたんだ…」

 

「一年担当の数学教師、これからみんなと最低一年やってく事になる

九龍翼や、今日は顔見せに紹介だけさせてもらうわ…ほな」

 

言うだけ言って去っていく九龍

 

「…ずるい…」

 

あんなにあっさりと面倒な話を終わらせられるなんてずるい…

 

その後、粛々と……粛々?と?

自己紹介は進むのだった


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