「どうにかやり過ごしたな…」
原作の3倍増しレベルで騒いだ女子どもを躱し尽くし、定例の
「電話帳と間違えて捨てました」
には「電話帳は古紙回収に出せ、燃えるゴミにするな」
としっかり突っ込んだ
さてこの後はたしか…
「ちょっとよろしくて?」
やる気のない顔をした一夏に
セシリアが話しかけるシーンだ
「はぁ?」
「まぁっ!なんですのそのお返事!
わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのでは無いかしら?」
「悪いな、おれ、君が誰だか知らないし」
その光栄、という部分に
馬耳東風とでも言いたかったのだろうか、言葉のチョイスが悪かったな
「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にしたら入試主席のこのわたくしを!?」
入試主席、という話にはちょっと引っかかって来るところもある
実際のところ
男子特例扱いの俺達は入試を受けていない、入学命令書に従っているだけだ
だからテストを受けるのならば話は変わるだろう
「質問いいか?」
一夏はまくし立てるセシリアの前に手をかざして、一言
それにセシリアはキメ顔アングルを、取った直後に
「ふっ!下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ、よろしくてよ」
と、決め台詞を放つ
しかし、その相手は極めて真顔で
「代表候補生って…なに?」
前提条件をひっくり返すような一言を叩き返してきた
それはIS関係を志すものなら
まず知っているだろう一言
モンテグロッソ出場国における国家代表、その候補生を意味する単語
『代表候補生』それを知らないと宣うような輩がISの専門学校であるIS学園にいると思っていなかったのであろう、クラスのほぼ全員
(とぼけた顔の一夏と予測していた俺たちを除く)がひっくり返り
セシリアなど、ひきつけのように震えている
「信じられませんわ!日本の男性というのはみんなこれ程に知識に乏しいものなんですの?常識ですわよ?じょうしきぃ!」
聞かれたことそっちのけで身勝手な
そして、
「で…代表候補生って?」
「国家代表IS操縦者のその候補生として呈出されるエリートのことですわ!単語から想像したらわかるでしょう?」
「いやわからんだろ、なんの国家代表候補なのかまるでわからんし」
「代表の
「なんですのその言い様は!」
セシリアはこっちに首を向けて怒鳴りかけて来て「電話だ」
そんな事は関係ないとばかりに
晴羽は
自由だなぁ
「な…この私を無視ですって!」
セシリアはさらにボルテージを上げるが、実害はないので完全放置する晴羽
無論俺もそれに追随し
「…言いたいことは言ったか?一夏にはこちらから教えておくからエルゥィートさんは優雅に座ってたら?」
「ですから!何ですのそのふざけた発音は!」
話を打ち切る方針を示すと、また噛み付いてくる
「わからないのか?話を打ち切ろうとしているんだ、俺たちは忙しいんだし、くっだらない自慢に付き合ってる暇はない」
「僕達は企業所属なものでね
スケジュールだって分単位なんだ」
一夏はともかく、俺と晴羽に容赦はない
にべもなく切って捨てると
無駄にプライドの高いセシリアは俺の方によってきて
「この入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートを相手に何を言っているか分かっていますの?!」
「あれ?俺も倒したぞ?教官」
机の板を叩きながら怒鳴ってくるが、それに一夏が反応した
「私だけとお聞きしたのですけれど?」
「女子では、ってオチじゃないのか?」
「そもそも俺なんて試験受けてすらいないし、やれば多分落とせるぞ?」
「僕達は入学命令書に従って入学しただけだし、基礎学力とか期待されても…ね」
二人ともそれっきりにして
俺は口を閉ざし、晴羽は電話の方に戻る
「…晴羽だ、そうか……SBのチームトレミーを派遣してくれ…それで済む」
その一言の真意を問いただす
その直前にチャイムが鳴った
「…食堂行くか?」
「あぁ、最初だからね…もっとも、食べる気にはならないけど」
晴羽の表情は暗いが、それを気にしているような奴はクラスにも、学校全体にも俺だけなようだ
「…仕方ないか」
すぐに売り切れてしまうだろう人気メニューをあきらめて、俺はハムカツの確保を狙いに走った
「-晴羽、なにがあった」
「…あったんだよ、言えないことが」
「それなら、深く追求はしない」
それきり話を打ち切り
食事に集中する
それから時は過ぎ
放課後になり、
俺たちは山田先生に呼び出されていた
「ごめんね、いま寮に飽き部屋がないの」
「構いませんよ、どうせ僕たちは企業所属、社宅から通えばいいだけの話です」
「…ラファールだの打鉄だのに護衛されながらの登校は御免ですがね?」
isに攻撃されている、
と暗に仄めかしつつ山田先生の方を見る
「よかった♪それじゃあ社宅からの通いということでいいですね?」
「「了解」」
「まて二人」
二人して回れ右したその瞬間
後ろから出てきた千冬先生が声をかけてきた
「…実は最近、株を始めてな、注目株は分かるか?お前達は目端が効きそうだ」
晴羽が意味不明と言わんばかりの顔になるが、それを制して
「…では、イチゴを買いませんか?甘いものが出来ているそうですきっと上がりますよ、あと、イチゴは先端部分が一番甘いと言います、天使の口づけのように」
ニヤリと笑いながら告げる
「なるほど、わかった、
その方面で考えてみよう…下がって良いぞ」
「了解」
俺は晴羽を伴って
職員室を辞するのだった
そして、その後
きた時のようにやってきたデンライナーに乗って
「で、なんの話だったんだ?突然株?」
晴羽が疑問の表情を浮かべて話しかけてきた、のだが、無論の話
突然株なんて始めるわけがない
「単なる隠語、注目株ってのは俺達に攻撃してきた要注意isのこと、イチゴってのは」
「一小隊五人編成、三角陣で、先頭のリーダー機はラファール…と」
「何を言っているんですか?」
「なぁに、巽が教えてくれただけの事、すぐに対応するさ」
無表情のまま答える千冬先生は
どこか微笑んでいるように見えた
「私は…どうすればいいんでしょうか…」
山田真弥の安息は遠い
「まぁ、別に?そろそろ僕たちの専用機も完成するし?完成したらあんな連中は敵じゃないんだけどね?」
「…無駄に悔しがるな、晴羽」
晴羽とともに社に帰ってきたところで、何やら言っていたので、諫めることにした