遊戯王ARC-V 千変万化   作:ユキアン

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第2話

エクシーズ次元のハートランドにやってきて4ヶ月が経った。どうやらオレは次元を超えていたらしい。なんでだろうと悩んだこともあったが、それだけだ。みんなを笑顔にするのに忙しかったし、瑠璃がよく話しかけてきて隼が陰から覗き込んでいたり、ユートがミラーマッチでオレに負けて落ち込んだり、ハルトがオレに懐いてカイトが嫉妬して襲ってきてハルトに嫌われて落ち込んだのを光波竜以外の銀河眼で釣って復帰させたりと色々なことがあったからな。

 

「いいか、スタンダードにはエクシーズ以外にも融合もシンクロも存在する。融合やシンクロを使うからってアカデミアではない可能性が高い。分かってるか、隼」

 

「分かっている。仕掛けられない限りは手は出さない。だが」

 

「分かってる。相手がアカデミアで、侵略に積極的な奴なら、反逆の翼と牙で葬ればいい。それでスタンダードに行くのはオレと隼と瑠璃の三人なんだな?」

 

「ああ。オレとカイトはこっちに残る。こちらのことは任せろ」

 

「頼んだぜ、ユート。いざとなればフルバーンかデッキ破壊で一気に片付けろよ。まだ、倒れるわけにはいかないんだからな」

 

「負けた以上は分かっているさ、遊矢」

 

「でも、面白かっただろう?超量幻影騎士団は」

 

「まあ、確かにそうだな。あの超量エクシーズモンスターはかなり特殊だった。子供達も喜んでいたしな。エンタメデュエル、今なら思い出せる。デュエルは最高の娯楽だったことを。全てが終わったら、また、あの頃のような笑顔で溢れるようにしたいと」

 

ユートの言葉にみんなが首を縦にふる。

 

「さて、それじゃあ行くか。オレは帰るかだけどな。というか、未だにオレと父さんが次元を超えた原因がわからないんだよな」

 

父さんは、第一次アカデミア襲撃の際に途中まではいたことが確認されていたのだが、行方知れずとなってしまった。多分、他の次元に、融合次元に飛ばされたんだと思う。あまり心配はしてないけど。3年前は、まさか他次元に飛ばされてるなんて知らなかったから心配だったけど、今は知っている以上死んではいないって分かってるからな。

 

ちょっとグダグダになりながらもオレと隼と瑠璃の三人はスタンダード次元へと飛ぶ。

 

「ハハッ、何も変わってねえな。それが、今は何よりも嬉しい」

 

スタンダード次元へと戻る際に少しだけ不安があった。ハートランドのように舞網市がアカデミアの侵略を受けているんじゃないかって。それも杞憂で済んだことに安堵する。

 

「ここが遊矢の故郷なんだ。あら、ねえ遊矢、あれ!!」

 

瑠璃が何かに気づき、指を指している。指している先にあるものを見て笑いがこみ上げてくる。

 

「ごめんね、二人とも。先に用事を済ます必要があるみたいだ」

 

視線の先にはでかでかとオレの姿が映っている。

 

『半年ぶりのタイトル防衛戦、親子揃って逃走か?』

 

 

 

 

 

 

 

 

開始時刻が迫る中、オレは瑠璃のブレードバーナーファルコンに乗っている。

 

「遊矢、見えてきたわよ」

 

「助かったよ、瑠璃」

 

「ううん、お兄ちゃんのせいで遅れそうになっているんだからこれぐらいはね」

 

スタンダードに戻ってきて一番最初に行ったのが、LDSの社長、赤羽零児の元に隼を連れて行くことだった。本来なら防衛戦にまで時間がなかったので先に会場に向かって防衛戦を行ってから向かおうとしたのだが、隼が先に会わせろとうるさかったのでLDSに向かったのだ。そして、チャンピオンの知名度でごり押ししてなんとか赤羽零児との会談を取り付けて、ついでにペンデュラム召喚のことを仄めかしておいた。

 

その後、急いで会場に向かうために瑠璃に送ってもらっているのだ。そして時間ギリギリに会場の上空にたどり着いた。

 

「それじゃあ、行ってくる」

 

そのままブレードバーナーファルコンから飛び降り、2枚のカードをデュエルディスクに置く。

 

「EMバリアバルーンバグ、EMトランポリンクス」

 

2体のモンスターを踏み台にして地面に着地する。

 

「Ladies and gentlemen.榊遊矢によるエンタメデュエル、楽しみにしていてくれたかな?」

 

オレの登場に会場が盛り上がる。

 

「巷じゃ心を病んで逃げ出したって言われてるけど、この通り、新たなカードと共に帰ってきたよ。今日はみんなにその新しいカード達を紹介しよう。準備の方はいいかな、サイバー流師範マスター鮫島?」

 

「ええ、私も楽しみにしていましたよ」

 

「それじゃあ、ニコ・スマイリー!!デュエル開始を宣言しろ!!」

 

『えっ、あっ、はい!!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る。これぞデュエルの最終進化系』

 

「アクション!!」

 

「デュエル!!」

 

「先攻は挑戦者からなんだけど、サイバー流だと後攻のほうが有利だっけ?どうする?」

 

「では、後攻をもらいましょう」

 

「OKそれじゃあ、オレのターン。オレはペンデュラムモンスター、EMドクロバット・ジョーカーを召喚して効果を発動。召喚に成功した時、デッキから『EM』モンスター『魔術師』Pモンスター『オッドアイズ』モンスターをデッキから手札に加えることができる。オレはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを手札に加えるよ。そしてフィールド魔法、天空の虹彩を発動。自分フィールドのカードを破壊してデッキから『オッドアイズ』カードを手札に加えれるよ。オレはドクロバット・ジョーカーを破壊して2枚目のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを手札に加える。そして、フィールドから墓地に送られたペンデュラムモンスターはエクストラデッキに加わるよ」

 

「普通のデッキに入っているモンスターがエクストラデッキに?」

 

「お楽しみはもう少し先さ。さらに手札を1枚墓地に送って魔法カードペンデュラム・コールを発動。デッキから名前の異なる『魔術師』Pモンスターを2枚手札に加える。オレは、慧眼と竜脈を手札に加える。カードを1枚伏せて、2体のオッドアイズをペンデュラムゾーンにセット」

 

オッドアイズをセットすると同時にオレの左右に青い光の柱が立ち上がり、その中にオッドアイズが浮かんでいる。そしてその下に4が書かれている。

 

「これは一体!?」

 

「そしてエンドフェイズ、ペンデュラムゾーンにセットされているオッドアイズを破壊する。そして攻撃力1500以下のPモンスターを手札に加える。オレはEMギタートルとモンキーボードを手札に加える。先ほどと同じようにオッドアイズはエクストラデッキに送られる。これでターンエンドだ」

 

榊遊矢 LP4000 手札4枚

場 天空の虹彩

セットカード1枚

 

「私のターン、ドロー!!」

 

「スタンバイフェイズにリバースカード発動、和睦の使者。このターン、オレのモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージも受けない。まあ、モンスターはいないけどね。それからこのタイミングで和睦の使者を発動している理由がわからない人たちに説明しよう。通常魔法、ナイトショットというカードがある。このカードは相手の魔法・罠を破壊する効果があるんだけど、これに対象を取られたカードはチェーンで発動することができない。今ここでナイトショットを握られていた場合、オレの場はガラ空きとなり、サイバーの融合モンスターを出された時点でオレの負けとなる。そのリスクを回避するためのスタンバイフェイズでの発動だ。覚えておいたほうがいいよ」

 

「確かに私の手札にはナイトショットがありますが、そこまで読み切りますか」

 

「アクションマジックだって万能じゃない。最低限の保険は用意しておくものだよ。それでどうする?」

 

「そうですね、サイバー・コアを召喚して効果でサイバー・ヒドゥン・テクノロジーを手札に加えます。そして、カードを2枚セットして、融合を発動。手札のサイバー・ドラゴンと場のコアを融合。融合召喚、サイバー・ツイン・ドラゴン!!そしてターンエンドです」

 

鮫島 LP4000 手札2枚

場 

サイバー・ツイン・ドラゴン ATK2800

セットカード2枚

 

「オレのターン、ドロー!!まずは、EMギタートルとモンキーボードをPゾーンにセット。ギタートルの効果を発動。もう片方のPゾーンに『EM』カードが発動した場合、ドローできる。よってドロー。そしてモンキーボードは発動したターンのメインフェイズにデッキからレベル4以下のEMモンスターを手札に加えることができる。オレはEMペンデュラム・マジシャンを手札に加える。そして速攻魔法、揺れる眼差しを発動。Pゾーンに存在するカードを全て破壊し、破壊した枚数によって効果が増える。2枚破壊したことで相手に500ポイントのダメージを与え、デッキからPモンスターを手札に加える。オレは貴竜の魔術師を手札に加える。そして竜脈の魔術師と慧眼の魔術師をPゾーンにセット、慧眼の魔術師の効果を発動。もう片方のPゾーンに『魔術師』か『EM』カードが存在する時、このカードを破壊し、慧眼の魔術師以外の『魔術師』Pモンスターをセットする。オレは竜穴の魔術師をセット」

 

素早く効果を処理したためにスケールがまともに表示されていなかったが、竜脈の魔術師と竜穴の魔術師の下に1と8が表示される。

 

「さあ、お楽しみはこれからだ!!揺れろ、魂のペンデュラム。天空に描け、光のアーク!!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキより舞い戻れ、EMドクロバット・ジョーカー、慧眼の魔術師、EMモンキーボード、そして真打ち、雄々しくも美しく輝く二色の眼、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

EMドクロバット・ジョーカー ATK1800

慧眼の魔術師 ATK1500

EMモンキーボード ATK1000

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK2500

 

一瞬にしてオレのモンスターゾーンに4体のモンスターが現れたことに、オレと上空にいる瑠璃以外が驚愕を露にしている。

 

「さて、ここでペンデュラム召喚について説明しよう。必要なのは2枚のPカード、このモンスターと魔法カードが一緒になったようなカードだ。このPカードを2枚をPゾーンにセットすることでセットしたPカードのスケールの間のレベルのモンスターを手札、あるいはフィールドで破壊されてエクストラデッキに送られたPモンスターを特殊召喚できるのさ。今回の竜脈の魔術師と竜穴の魔術師は1と8、つまりはレベル2から7までのモンスターが同時に特殊召喚可能なんだ。そして制限は1ターンに1度、メインフェイズにしか行なえないだけだ。今回は召喚していないけど、もう一体のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンも召喚は可能だったよ。それからPゾーンのカードが破壊されない限り、再びこんな形の陣営を組み直せる。それがペンデュラム召喚さ!!またPゾーンに置かれたPカードは魔法カード扱いとなる。だからサイクロンなんかで破壊できる。ただ、ペンデュラム召喚はチェーンを組まない特殊召喚だから、セットされたタイミングで発動しないとペンデュラム召喚を防ぐことはできないから注意しような」

 

「確かにすごい召喚ですね。同時に特殊召喚するということでしたが、奈落の落とし穴の場合はどうなるのです?」

 

「その場合は攻撃力1500以上の全てのモンスターが破壊され除外されるよ」

 

「なるほど。ですが、貴方の場のモンスターはサイバー・ツインよりも攻撃力が下です。どうするおつもりですか?」

 

「慌てない慌てない。ペンデュラム召喚は確かに強力な召喚方法だけど、これ単体では真価を発揮しているとは言えないんだ」

 

「真価を発揮していない?」

 

「オレのモンスター達をよく見て」

 

「モンスターを?守備力の方が大きいモンキーボードが攻撃表示、いや、そこではない。名前にペンデュラムがつくオッドアイズ、違う、なら、何が」

 

「答えはこれだよ、レベル4のEMドクロバット・ジョーカーと慧眼の魔術師でオーバーレイ!!」

 

「なんと!?エクストラデッキの上限は15枚なのでは!?」

 

「確かにデッキとしての上限は15枚だけど、ペンデュラムは別さ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!!今、ここに降臨!!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK2500

 

現れるのはユートの切り札、の模造品だ。効果が微妙に違っていて一概にどちらが強いかは言い切れないが、オレはこっちの方が使いやすいと思う。

 

「ペンデュラム召喚の真価は、ペンデュラム召喚から別の召喚へと繋げることさ。ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果を発動。ORUを二つ取り除き、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を半分にし、その数値の分だけダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの攻撃力を上昇させる。トリーズン・ディスチャージ!!」

 

サイバー・ツイン・ドラゴン ATK2800→1400

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK2500→3900

 

「くっ」

 

「このまま攻撃でもいいけど、さらに続けるよ。墓地の貴竜の魔術師の効果を発動。自分フィールド上のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのレベルを3つ下げ墓地から特殊召喚する。そしてこのカードはペンデュラム・チューナーさ」

 

「まさか」

 

「レベル4になったオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに、レベル3貴竜の魔術師をチューニング。シンクロ召喚、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!1ターンに1度、こいつが特殊召喚された時に自分Pゾーンのモンスターを特殊召喚できる。オレは、竜穴の魔術師を特殊召喚。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。だから、レベル7、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンと竜穴の魔術師をオーバーレイ!!ランク7、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ATK2800

 

「そして、手札からオッドアイズ・フュージョンを発動。場のペンデュラム・ドラゴンと手札のEMペンデュラム・マジシャンを融合、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン ATK2500

 

「エクシーズ、シンクロ、融合までも」

 

「本当は儀式も突っ込んであるんだけど、生憎と手札にないんでね。ボルテックスの効果を発動。特殊召喚された時、相手の場の表側表示のモンスター1体を手札に戻す。サイバー・ツインを戻してもらうよ。そしてサイクロンで右のカードを破壊」

 

「サイバー・ヒドゥン・テクノロジーが」

 

「さあ、バトルだ!!モンキーボードで攻撃、この瞬間にアブソリュート・ドラゴンの効果を発動。ORUを一つ取り除き、攻撃を無効にする」

 

「自分の攻撃を?まさかダブルアップチャンス!?」

 

「アブソリュート・ドラゴンの効果は終わってないよ。攻撃を無効にした後、墓地から『オッドアイズ』モンスターを特殊召喚する。蘇れ、メテオバースト!!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン ATK2500

 

「3体のオッドアイズとリベリオン・ドラゴンでダイレクトアタック!!」

 

「まだです!!手札から速攻のかかしを、発動しない!?」

 

「メテオバーストが場にいるとき、相手はバトルフェイズ中にモンスターの効果を発動できないんだ。というわけで、お楽しみはこれまでだ!!撃滅のクアッドブレイク!!」

 

「ぬわあああああ!!」

 

鮫島 LP4000→0

 

 

 

 

 

 

「遊矢ーー!!あなた、一体どこに行ってたのよ!!行き先も告げずに、連絡も一切なしで、予定の日程になっても帰ってこないし!!おばさん、遊矢までいなくなっちゃうんじゃないかって、ずっと心配して、私だって、心配で。遊矢~~、無事でよかった~~!!」

 

デュエルを終えて控え室から母さんや柚子に連絡を入れて5分ほどで柚子が控え室に飛び込んできた。最初は怒鳴っていたのに最後には泣きながらオレに抱きついてくる。笑顔にしてやりたいけど、多分怒らせることと悲しませることしかできないだろうな。

 

「ごめんな、柚子。心配かけた。色々あって、さっき舞網に戻ったばっかなんだ。旅のことはまだ話せないことが多いけど、それでも旅に出てよかったと思ってる。やりたいこととやらなきゃいけないことをオレは見つけたから。だから、しばらくしたらまた舞網から離れるよ。多分、チャンピオンの座も降りる必要があると思う」

 

「やっぱりなの?チャンピオンが嫌になったの?エンタメデュエルが辛いの?」

 

「違うよ、柚子。オレがやりたいこと、そのためにはチャンピオンとか講師の掛け持ちができないんだ。どれもが中途半端になるから。嫌になったわけでも、辛いわけでもない。まあ、半年前と今のオレのエンタメデュエルは違うものだろうけどな」

 

「なら、私も一緒に」

 

「ダメだよ、柚子。今の柚子じゃあ、連れていけない。それにあまり連れて行きたくもない」

 

「どうして!?」

 

「力不足ってこともあるけど、あんな経験はしてほしくない」

 

「あんな経験?」

 

「今は、あまり詳しく話せない。上の判断待ちだ」

 

「上?それって」

 

「それも話せない。頼むから何も聞かないでほしい。ほとんど話せない」

 

「何よそれ!!なんで何も話せないの!!」

 

「ごめん、その訳も話せない」

 

ドアがノックされて瑠璃が控え室に入ってくる。

 

「遊矢、お兄ちゃんが交渉がある程度まとまったから明日の10時にもう一度訪ねてくれって」

 

「分かった」

 

「その子が遊矢の言ってた柚子!?」

 

「誰!?」

 

瑠璃と柚子がお互いの顔を見て驚いている。

 

「本当に遊矢とユートみたいにそっくりね」

 

「その子、誰なの、遊矢?」

 

「彼女は黒崎瑠璃。旅先で知り合った。柚子にそっくりで間違えたのがきっかけ。この街には瑠璃のお兄さんも一緒に来てる。ちょっと確認しないといけないこととか色々あってね」

 

「ねえ、彼女は知っているの、遊矢が話せないことを」

 

「……当事者だからね」

 

「……そう」

 

柚子がオレから離れてデュエルディスクを構える。

 

「私とデュエルしなさい!!」

 

「柚子!?」

 

「ふぅ~ん、なるほどね。いいわよ。でもここじゃあ狭いから場所を変えましょう。遊矢はお義母さんに会っているといいわ」

 

今、瑠璃のお母さんの発音が変だった気がする。柚子は余計に怒気が膨らんだ。一体、何がどうなってるんだ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、遊矢がわざわざ気を利かせてステージを借りてくれたし、やりましょうか」

 

「絶対に負けない!!」

 

無駄に力が入っているどころか、明後日の方向を見ているわね。

 

「構えだけでわかるわ。断言してあげる貴女は私よりも弱い」

 

デッキを少し弄ってからデュエルディスクにセットする。

 

「バカにして!!」

 

「「デュエル!!」」

 

「私の先行からね。まずは永続魔法、黒い旋風を発動してBF-精鋭のゼピュロスを召喚するわ。黒い旋風はBFが召喚された時、その攻撃力より低い攻撃力を持つモンスターをデッキから手札に加える。私はBF-月影のカルートを手札に加えて、カードを2枚伏せてターンエンド」

 

瑠璃 LP4000 手札2枚

BF-精鋭のゼピュロス ATK1600

セットカード2枚

 

「私のターン、ドロー!!魔法カード、独奏の第1楽章。私の場にモンスターがいない時、手札・デッキからレベル4以下の『幻奏』モンスターを特殊召喚できるわ!!私は幻奏の音姫アリアを特殊召喚!!そして幻奏の音姫ソロを召喚してリリースしてトランスターンを発動!!レベルが1高い同じ属性・種族のモンスターを特殊召喚するわ!!来て、幻奏の音姫エレジー!!私の場に『幻奏』モンスターが存在するとき、カノンは特殊召喚できる!!そして永続魔法一族の結束を2枚発動!!これでエレジーの効果と合わせて私の場のモンスターの攻撃力は1900アップするわ」

 

幻奏の音姫アリア ATK1600→3500

幻奏の音姫エレジー ATK2000→3900

幻奏の音姫カノン ATK1400→3300

 

「バトルよ!!エレジーでゼピュロスに攻撃!!」

 

「やはりね。貴女は私よりも弱いわ。トラップカード、ブラック・ソニック。『BF』モンスターが攻撃された時に発動できる。相手フィールド上の表側攻撃表示のモンスター全てを除外する」

 

「そん、な、私の場が……ターン、エンド」

 

柚子 LP4000 手札0枚

一族の結束

一族の結束

 

「私のターンね、ドロー。手札からRRーバニシング・レイニアスを召喚して効果を発動。手札からRRーナパーム・ドラゴニアスを特殊召喚」

 

RRーバニシング・レイニアス ATK1300

RRーナパーム・ドラゴニアス ATK1000

 

「バトルフェイズ、ナパーム、バニシング、ゼピュロスの順にダイレクトアタック。ゼピュロスの攻撃時にカルートを墓地に送り攻撃力を1300アップさせるわ」

 

「きゃああああああっ!?」

 

柚子 LP4000→0

 

デッキを元に戻してから柚子に歩み寄る。

 

「ねっ、貴女は私より弱かったでしょう?遊矢の側に立つには力が足りない」

 

「そんなことない!!もう一度よ!!もう一度デュエルしなさい!!」

 

「無駄よ。気持ちが定まっていない今の貴女じゃ何回やっても無駄。カードが迷っているの。遊矢は貴女が側に来ることを望んでいないの」

 

「そんな。なんでよ、なんで顔が一緒な貴女が遊矢の側に居れるのよ!!今までずっと一緒だったのに、私から遊矢を取らないでよ!!」

 

柚子が泣き始めるけど、私が望んでも手に入らない物を持っている柚子に予想以上の大声を出してしまう。

 

「泣きたいのはこっちよ!!なんで貴女がその場所にいるのよ!!私が望んでも手に入らないのに!!貴女に私の気持ちが分かる!!遊矢はずっと貴女のことを気にかけて、これから起こるであろう危険から遠ざけて、お姫様として扱ってくれているのに!!私がいくら望んでも、遊矢は仲間としか見てくれない。側に何人もいる仲間の一人にしか!!」

 

私も涙をこぼしながら、柚子に全てを叩きつける。

 

「遊矢のおかげで私たちは踏みとどまれた!!遊矢のエンタメデュエルが、私たちを導いてくれたの!!だけど、遊矢が特別扱いするのは貴女だけ!!貴女の方が遊矢に近いのに!!それなのに貴女が遊矢を理解してあげない!!ふざけないでよ!!」

 

私は、遊矢のことが好きだ。だけど、遊矢の中には常に柚子がいた。だから、諦めようとした。仲間の一人として一緒に笑っていられれば十分だって。でも、柚子を見て考えを改める。柚子に遊矢は渡さない。違うわね、遊矢を奪い取ってみせる。

 

「決めた。私は遊矢を奪い取ってみせる。貴女は遊矢に相応しくないわ」

 

「……させない。遊矢は絶対に渡さない」

 

「勝手に言っていなさい。私はただ鉄の意志と鋼の強さで奪い取るまでよ!!」

 

遊矢が悲しむだろうから、いま少しだけは預けておいてあげるわ。だけど、いずれ奪い取る。邪魔するものは全て焼き払ってでも。


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