転生ユウリちゃんはガラル地方に行きたい 作:ちゃっぱ
第一話 どうやら引っ越しするらしい
突然だが私は前世でポケモン廃人というわけではない。
でもポケモンはずっとやって来たし、ストーリーも好きだ。何よりダンデさんが大好きだ。
いや、恋愛的な意味じゃなくて推しという意味で。
ぶっちゃけて言えば前世でのゲームをやっていた頃の私はレベルごり押しバーサーカーのようなものである。
ゲームではジムに挑む前の草むらやトレーナー相手にレベル上げは必ずやって来たし、余裕でワンパン出来るまでひたすらやっていた。
というか、戦う相手の平均レベルより10は上でないと安心ができない性格だった。
ポケモン剣盾なんて、ほぼずっとワイルドエリアにいてストーリーをクリアするのに一ヶ月もかかっていたぐらいだから言うまでもない。
あと色違い集めで一時夢中になって孵化作業やりまくってた記憶がある。
――――しかし私は、レベル制限のかけられたバトルタワーなどに挑むのは苦手だ。
ポケモンの努力値。性格。能力値。
理想個体の育成。
技と持ち物。
相手がどんなポケモンで挑んでくるのかの読み合い。
確かにバトルを最大まで楽しむことの意味は理解できるし、現実でそれをやってダンデさんとバトルできるならと考えたら楽しそうだとも思えている。
だから、グリーンさん達に向かって強くなると宣言した以上、私は前世でしか調べることも理解することも出来ないであろうポケモンの育成について、わかる必要があるのだ。
それと同じく現実でのポケモンバトルに慣れて自然と指示が出来るようにならなくてはいけない。
ニンフィアに向かって「なにか攻撃できる技!」なんてトレーナーとの読み合いどころかバトルの楽しみすら感じられない阿呆な指示をダンデさんの前でやりたくはないだけだ。
一応ヒビキさんに協力してもらって理解できた、ニンフィアが覚えている技として―――。
じたばた、でんこうせっか、ハイパーボイス、ムーンフォース。
こらえるを覚えていたはずだが、あのふしぎなアメを食べたときに自分で消して代わりに覚えてしまったようだった。
ポケモンの覚える技構成は4つまで。それはゲームでも現実でも変わらないらしい。
まあでも、技レコードもこの世界にはあるみたいなので一応技を変えることは出来るだろう。
もしかしたら技教えや技を忘れさせてくれる人がいるかもしれない。
……ガラル地方だったらポケモンセンターにいるのは分かるんだけど、ほかの地方だとちょっと分からないんだよなぁ。
まあ、どうせガラル地方以外は旅なんてしないからいいか。
より高度なバトルが出来るようになるためにはポケモンの育成だけじゃなくトレーナー自身の成長も必要だからこそ、まだまだ道のりは遠い。
それと同じく、日常でポケモンと暮らすというのはとても大変なことのようだった。
「引っ越し?」
「ええそうよ。ユウリってばポケモントレーナーになるんでしょ? カントー地方の学校はもう入学制限かけられてるし、どうせなら他の地方に行ってポケモンスクールに通った方がいいじゃないの?」
今のところニンフィアは母の手持ちとして扱われているが、早めに私の手持ちにするためにスクールに通って許可証を申請する必要がある。
だから引っ越しをしようと行ってきたのだろう。
……でもたぶん、スクールに通うだけが問題じゃない気がする。私が誘拐された件もあってカントー地方で散歩もしにくくなったし、ニンフィアという新種の進化で目立ちやすくなった。
あの私を誘拐した奴等もどうやら目覚めてすぐ逃げたらしく、あのあとジュンサーに捕まっていないことから何かしらの恨みでまたやって来るかもしれないと心配してもいるのだろう。
正直いってお母さんに心底心配をかけてしまった罪悪感が半分、引っ越しってもしかしてガラル地方かなとワクワクした気持ちが半分だった。
「ポケモンスクールですぐ手持ちの申請許可証出るのってあそこだけだったから、明日にでも行くわよぉー」
そうして、引っ越した先はホウエン地方でした。
(いやガラル地方じゃないんかい!!!)
まさかとは思うけど、私が誘拐されたからバタフライエフェクト的な何かが起きてガラル地方にいくきっかけがなくなったとか?
いやまさかそんな……。
ホウエン地方へ向かう船から遠い目で現実逃避しつつも、足元でご機嫌なニンフィアの頭を撫でた。
「ふぃあー!」
「楽しそうだねニンフィア。いや、旅に出たがってたから楽しいのは当然か」
「ふぃあ!」
ご機嫌なまま鼻歌でも歌いそうなニンフィアに苦笑した。
まあホウエン地方なら秘密基地とか作るのもありだし、何かやろうかなとは思う。
あとポロックも作りたいし、バトルもたくさんやりたい。
そんな風に、これからの予定を楽しみにしていたのだ。
―――私にとって頼もしいニンフィアが、このホウエン地方で強敵になるとは思いもせずに。
今はまだ、何も知らぬまま船の上でのんびりとくつろいでいたのだった。