転生ユウリちゃんはガラル地方に行きたい   作:ちゃっぱ

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第三話 キモリの憂鬱

 

 

 

 ユウキさんから何か困ったことがあったら連絡していいよと頂いた番号を手に、私はとある広場の隅っこでニンフィアと戯れていた。

 

 ポケモン剣盾でよく見たものを、広場の落ちている枝と葉っぱで簡易的に作ったポケじゃらしをフリフリと振るとニンフィアが猫パンチを何度か行ってくる。

 頭を撫でると私にすり寄り、「もっと撫でろー」というかのように甘えた声で私を見てくれる。

 

 懐いていないポケモンだったら、人に警戒して近づくことはおろか攻撃してくる可能性だってあるだろう。

 

 だから分かる。

 ニンフィアは私に懐いてはいるんだと。

 

 

「んー……懐くのとバトルとは別ってことなのかな」

 

 

「ふぃー?」

 

 

 

 首を傾けるニンフィアは何もわかっていないようだった。

 

 

 他人からもらったポケモンは、ジムバッチを持っていないということを聞かない。

 そもそもそれがどうしてなのかと考えてみれば――――やはり、圧倒的な経験差があるからだと思う。

 

 ジムバッチはいわば他人から貰ったポケモンが認める平均値。

 ポケモンはトレーナーに多大な影響を受けるもの。

 

 

 まあつまり、そういうことなんだろう。

 

 

 

「ニンフィアぁー。私のバトルで指示ききたくない?」

 

 

「ふぃ?」

 

 

 その言葉には、ただ困ったような顔で首を横に振った。

 

 

「じゃあ何でユウキさんとのバトルでハイパーボイスやったの?」

 

 

「ふぃ、ふぃあー」

 

 

 何かを言いたげに鳴いてくるニンフィアの言葉を私は理解できない。

 もしもここにNがいたら、多分きっと分かるかもと思うけど……。

 

 

 

「ニンフィアにとっては、あれが一番最適って思ったんだよね?」

 

 

「ふぃっ」

 

 

 

 それに頷いたニンフィアに、やはりと肩を落とした。

 

 

 

「ニンフィア。私は立派なトレーナーになるよ。絶対に」

 

 

「ふぃあ」

 

 

「だからね。バトルをするときは私の指示に従ってほしいの。確かにニンフィアが自分でやって、それで勝つかもしれないけれど……」

 

 

「ふぃー?」

 

 

 なんでそんなことするの? とでも言いたげに、ニンフィアが首を傾ける。

 

 

 

「私もちゃんと強くなりたいの。ニンフィアが満足できるようなバトルをするために、いわば私もトレーナーとしてのレベルを上げたいんだよ」

 

 

 

「ふぃ、ふぃあー」

 

 

 

「……ううん? それでもやなの?」

 

 

 

 うーん。困った。

 本当に困ったなぁ。

 

 

「……じゃあ、ニンフィアに認めてもらえるように私頑張るからね! ニンフィアが私の指示を聞いても大丈夫だって思えるぐらいには強くなってみせるんだから―!」

 

 

 

「ふぃーあ」

 

 

 

 私の言葉にちょっとだけ理解できないような顔をしていたけれど、強くなるというとニンフィアは深く頷く。

 

 まあわかっていたことだ。

 ニンフィアにとって、私はまだまだ幼い子供。

 夢を追いかける私についてきてくれたのは――――ニンフィアが旅に出たがっていたから。

 

 ニンフィアは、私のことを幼い妹か何かだと思っているんだろう。

 だからやっぱり、私はまだまだ未熟なトレーナーだ。

 

 

「見てなさい。筆記テストで絶対に一番になってやるんだから……!」

 

 

「ふぃーあー」

 

 

 

 ――――まあ頑張れ。ボクのトレーナーなんだからそれぐらいなってもらわなきゃ。

 

 

 そういう感じで、私の頬にすり寄ってきたニンフィアが小悪魔に見えた。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 あれからいろいろあってカナズミシティで家を借りてそこからスクールへ通うようになった。

 

 と言っても私はまだまだ四歳。

 幼稚園に通っていい年齢の子供だから、スクールにというよりは、ポケモン所持のための承認試験を受ける勉強といった方がいいかもしれない。

 

 いわば途中からやってきた私は転校生で、同年代の子供たちがいるクラスで一緒になって勉強するというものだ。

 

 

 最初は常識的なことから教えられた。

 ポケモンが私たちと同じ生き物だという、道徳的なやり取りから始まる。

 それと家で習ってきた文字の読み書きの復習。

 モンスターボールや道具の使い方。

 

 それと同じく、ポケモンたちと触れ合っていく。ただまだ幼いからポケモンの扱いをよくわかっていない可能性があるからと、頑丈でそう簡単には傷つかない身体の大きなポケモンたちばかりだったけれど。

 

 この試験が終わったら、合格者のみクラスが分けられるようになる。

 この試験で合格すれば、仮免許だがポケモンを手持ちとして認められるようになるんだ。

 

 そうして、次のクラスでポケモンの相性とバトルについて教えられるようになる。

 

 そんなスクールに今日から通うための筆記試験を行ったのだが―――――。

 

 

 

「すごいわユウリちゃん! テストで全問正解! 100点どころか120点満点よ!!」

 

 

「へっ?」

 

 

「あなたなら幼児クラスどころかエリートのための特進クラスに行けるわ……!」

 

 

「ふぇ?」

 

 

「ああ、難しいこと言ったかしら……あなたのお母さんと一緒に、将来について話しましょうね!」

 

 

 

 

 前世の記憶があるからか、常識的な問題はすべて正解できた。

 

 ポケモンとの関わりについても、いわゆるペットと飼い主のお約束みたいなものだったから余裕でできた。

 それと難問としてポケモン相性が何問か載っていたから普通に書いてしまったんだけれど……。

 

 

 

(エリートって、エリートトレーナーになるってこと? いや私普通にガラル地方を旅したいのに!)

 

 

 

 ニンフィアに認めてもらうために立派なトレーナーになるという意味ではクリアできたかもしれないけれど、それで失ったものは大きかったら冗談じゃない。

 

 

 

「いや大丈夫。だってほら、トレーナーになるために得られるものが大きいほどいいじゃない? ……も、もしもゲーム通りじゃなかったとしても、トレーナーになって自分でガラル地方に行けばいいんだし! うんうん問題ない問題ない!」

 

 

 

「ふぃー?」

 

 

 

 とにかく今はトレーナーとして立派になること。

 ニンフィアに認めてもらって、バトルをうまくできるようになることだ。

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

「――――ですから、ユウリちゃんはとても優秀なトレーナーになれる素質を持っています! その原石を磨くためには、エリートトレーナーの道として行ける最難関の特進クラスへの試験を受けてほしいんです!」

 

 

「あらあら……」

 

 

 

 お母さんが先生から説明を受けて目を見開いて驚いていた。

 でもそれに喜ぶというよりは、ただ真剣な顔で

 

 

 

「ユウリちゃんは特進クラスに行きたい?」

 

 

 

 

 その言葉に、ただダンデさんの夢のためならと頷いた。

 

 

 

「……強いトレーナーになることが私の夢でもあるからね!」

 

 

 

 だからまあ、特進クラスに行くための条件を聞いたのだけれど……。

 

 

 

 

「えっと、特進クラスでの試験は……ポケモンバトルですか?」

 

 

 

「ええそうよ。しかも今回はチャンピオンがお目にかかれるの。ポケモンは自分の捕まえてきた手持ちもしくはレンタルポケモンでやるんだけどね?」

 

 

 だとしたらニンフィアを出すよりはレンタルポケモンで挑んだ方がいいかもしれない。

 ニンフィアはとても強い。私が前世でやってきたレベルごり押しバーサーカーモードのよき友になれるぐらいには。

 

 でもそうやって生きるつもりはないから、とにかく技術を磨く意味でレンタルポケモンにするかと思ったが。

 

 

 

「応用試験としてダブルバトルもあるけれど……まあユウリちゃんは年齢のこともあるし失敗しても大丈夫だからね?」

 

 

「はっ―――――」

 

 

 

 

 ダブルバトルと言われて、別の方向へ思考が飛んだ。

 

 

 ―――――あれ、そういえば私って……この世界で友達なんていなくね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 広場の草むらの中。

 その隅っこにしゃがみ込んで、私はただ自分の状況に嘆いた。

 

 

 いやーだってマサラタウンって意外と人いないからね。田舎だからね!

 子供だってほら、あまり交流なかったし。

 

 それにゲーム世界での主人公ってほとんどが友達兼ライバルでしょ?

 だから先生から「二人組を作りましょー」とか言われてもね!

 

 

 ボッチの何が悪い!

 

 

 

 

「いや初めての友達がホップでもいい。ヒビキさん達は憧れの先輩枠だから友達じゃないし……ほら、ガラル地方に行ったらマリィたちだっているし!」

 

 

「ふぃー」

 

 

「肩ポンしないでニンフィア!」

 

 

 

 

 そもそもなんでこうなったんだろうか。

 私が誘拐されたのが悪いの?

 

 

 なんかいろいろあり過ぎてムカムカしてきた。

 

 

 

 

 

「あーもーどれもこれもガラル地方に行けばすべて解決するのに!! ガラル地方に行けないのが悪いんじゃあ!!」

 

 

「ふぃーあー!」

 

 

 

 

 八つ当たり気味に勢いよくぶんなぐった大木。ニンフィアもノリに乗って私と同じようにリボンでぶんなぐってきた。

 

 それで結構威力が出たのか、大木が揺れてきた。

 

 

 ――――と同時に、何かが頭に振ってきた。

 

 

 

「ぶっ!?」

 

 

「ふぃっ?」

 

 

 

「うぇっ、急に何……」

 

 

 

 頭から引きはがしてみると、そこにいたのはまつ毛が長く頬を赤くした黄緑色の生き物。

 なんというか、ものすごく見たことのある姿をしていた。

 

 

 

 

 

「キモリ?」

 

 

「……きゃも」

 

 

 

 

 

 あのカイナシティで出会ったはずの、可愛らしい声で鳴くキモリが木から落ちてきたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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