転生ユウリちゃんはガラル地方に行きたい 作:ちゃっぱ
「あ、もしもしユウキさんですか? ちょっと聞きたいことが―――」
キモリの件について話をすると、どうにも厄介なことになってしまった。
ユウキさんの手持ちではなくあのお祭りで子供達に紹介するためのポケモンのうち一匹。つまり、初めてポケモンを持つトレーナーに渡すポケモンであったということ。
あのバトルではニンフィアのメロメロが使えるかどうかのテストだから出したということ。
――――どうにも、ニンフィアに呆気なく倒されたことを気にして追いかけてきたらしい。
「ニンフィアが好きなの?」
「きゃ、きゃもっ!!!」
―――――そんなわけないでしょう馬鹿ね!
そんなツンデレ的な言葉が聞こえたような気がする。
怒りで私に向かってぺちぺちと尻尾でお腹を叩くけれど痛いとは感じられない。
多分手加減……は、してないな。だって凄い赤い顔で怒っているんだから。
(この子を私のポケモンに……ね)
ユウキさんが慌ててこちらに来て言った言葉は、モンスターボールから飛び出して出ていってしまったらしいということ。
それと同じく、私にキモリが入っていたあのモンスターボールを手渡して、「彼女は君たちと一緒に居たいみたいだし、次の試験はダブルバトルなんだろう? ならこの子を育ててやってくれ」と言ってきた。
まだトレーナー許可証を仮免許としてしか持っていない私に対していいのかとユウキさんに聞いたら、その代わりとして試験を見学しに行くとのことだけれど……。
それで試験が不合格なら、ニンフィアもキモリも母の手持ちとされて、次の試験が行われるまで私は安易にバトルも何もできなくなる。
手持ちとして認められてしまえば、自由に動くことが可能だ。
お母さんだって、心配はしてくれているけれど、ポケモンに対して信用しているから。
ニンフィアがいれば誘拐も何もされないと思っているからこそ、こうやって自由に外を散歩できるわけだし。
まあ町から町へといった遠出にはさすがに母も付いてこないとだけれど……。
(とりあえず今やるべきことは……)
十日後には試験が行われる。
その間にキモリを強くして進化させて、それでニンフィア並みにしたい。
というよりは、ニンフィアにはサポート型になってもらって、それで最終進化したジュカインをアタッカーにした戦法を組み立てたい。
「キモリ、私たちと一緒に来ていいの? ユウキさんも言っていたけれど、君が嫌だったら―――」
「きゃもきゃっ!」
「……うん、そっか。ありがとう」
レベルも初期値で、まだまだというところだけれどこれで一歩先へ進める。
夢のためにも、私は進むって決めたんだから。
「これからよろしくね。キモリ」
「きゃも!」
・・・
「あはははははポロック作りたのしーい!」
母に頼んでやってきた場所はミナモシティのポケモンコンテスト会場。
ニンフィア達をボールの中に入れて目立たないようにしつつも、ほかのトレーナーたちと混じってポロックを作り続けている。
決して早く来すぎたせいでミナモデパートが開いてなかったとかそんなわけない。
コンテスト会場で暇つぶしにやってたらなんか止まらなくなったとかそんなわけないでしょうあはははは。
「き、きみ大丈夫? なんか目がぐるぐるしてるんだけど……」
「大丈夫でーす」
「そう? あっ、すごいにじいろポロック……」
「あははははははたのしーい!」
「ねえ本当に大丈夫なの!? ポケモンの催眠術か何かかかってない!?」
「大丈夫デース」
……うむむ、流石に周りが心配し始めてきたから離れた方がいいか。
なんかこう、木の実を与えて機械のスイッチを入れ、赤く光ったらボタンを押してポロックを作るというやり方が楽しすぎて夢中になったというか。
それにポロックもポケモンの魅力を出すのにちょうどいい。
ニンフィア達の魅力を引き上げて今度の試験で周りがざわつく程度には毛並みもコンディションも一番よくしてやるんだって決めたから。
「さて、ミナモデパートは……まだ開いてないのか」
お母さんは私がニンフィア達と一緒だしあまり人気のないところにはいかないと約束しているので、ミナモ美術館に行ってもらっている。そこには何もないけれど、お母さんなら惹かれると思っての頼みだ。
バトルとかそういうのは、できれば母同伴より自分自身の手でやっていきたかったから。
「さてとキモリちゃーん。進化のお時間だよ!」
ボールから出したキモリが不安げな様子で私を見上げる。
「あなたを強くするために、これから連続バトルをします。覚悟は良い?」
「きゃ、きゃも!」
何度も頷いて気合いが入った様子のキモリに笑って頭を撫でてから、別のボールを取り出して投げた。
その中に入っていたニンフィアはミナモシティに興味津々といった様子で、周りをぐるぐると回ってから私を見る。
「ふぃ?」
「ニンフィアは私たちのことを見ていてほしい。君が私の指示を聞けると思えるよう努力するから」
「…………ふぃあー?」
「今度の試験では、私の指示を聞いてほしいからなの」
このままでは多分ニンフィアは私の指示より自分の経験を活かしてバトルをしてしまうだろう。
ニンフィアにとってはそれが勝つためなんだと、私のためなんだと思っているようだけれど……それじゃあいけないということを教えなくてはならない。
「キモリ、あなたにはジュプトルに進化してもらいます……ああでも、もしも進化が嫌だったら―――」
「きゃも!」
「オーケー。じゃあやるよー!」
私には努力値とか、どのポケモンを倒していけばいいのかとかいう細かな知識はない。
だからやるべきは道具込みの育成。
そのために、キモリがここの草むらを耐えられると思える程度にはバトルをして経験値を稼いできたのだから。
「野生狩りじゃあああ!!」
「きゃも!」
・・・
強いポケモン、弱いポケモン。そういう考えで接するつもりはない。
ただ私の手持ちになったからには、レベルを上げて強くして育てるということ。
それと同じく、ダンデさんに褒められるためでもある。
「君のポケモンかい? レベル上げの育成なんて幼いのによく頑張ってるね」
「ああどうも」
「じゅ?」
ジュプトルに進化し、それでもなお草むらで戦い続けていた私たちに対して話しかけてきたのは見たことある大誤算……じゃない、ダイゴさんだった。
そういえばこの世界ではホウエンチャンピオンって誰なんだろう。
まあチャンピオンに挑むと決めたのはガラル地方だから気にしなくてもいいか。
「もっと強くなりたいかい?」
「そうですけど……あの、急に何です?」
「これからバトル大会が開かれる予定なんだ。君ならエントリーしても勝てるんじゃないかなと思ってね」
「バトル大会……でも私、まだトレーナーの仮免ですけど?」
「大丈夫だよ。ポケモンを手持ちに持っていいという認可証があるなら、仮免でも歓迎する。それに僕からも大会側にいくつか話しておこう」
「はぁ……」
「君が大会に出たら面白そうだ」
なんかよく分からないことを勝手に言いながら即席で書いた手紙を渡してくる。
そうしてどっかへ消えていったダイゴさんを見て、初対面の幼女相手に大誤算だなと思いつつも母のもとへ向かい話を通した。
ぶっちゃけ面倒事ではあるが経験値的には問題ないといえるので。
「お母さんは私が大会に出てもいいの?」
「あなたがやりたいならね。ユウリ、お母さんはあなたに好きなことをしてほしいのよ」
「お母さん……ありがと!」
「それにしてもバトル大会ねぇ。優勝賞品はシンオウ旅……あら、準優勝には世界のチャンピオン写真集。その戦略方法の特集が書かれた限定品なんてあるのね!」
「はっ?」
え、待って、世界のチャンピオン写真集とか一定の人にしか受けないけれど。
ねえ待って?
世界のってことは、ダンデさんも載ってる?
はっ?
何それ取らなきゃじゃんか!?
「おっしゃあ準優勝目指して全部叩き潰すわよジュプトル!」
「じゅかっ! …………じゅ?」
「ふぃーあ」
気合いを入れたジュプトルが少しして考えてから微妙な顔をして私を見上げた。
それに気づいたニンフィアが苦笑しつつもジュプトルの肩に手を置いて諦めろと同情したこと。
その肩ポンでジュプトルがちょっとだけ顔を赤らめて騒いでいたことを知らない。
「ダンデさんの写真……ダンデさんの言葉が書かれた本ッ!!!!」
気合十分、目標は準優勝だ!!
全然怒ってねーって?
ほら、ニンフィアに対して怒ってるよ。照れ隠しだけどね。