転生ユウリちゃんはガラル地方に行きたい   作:ちゃっぱ

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第五話 ピンクの悪魔に惑わされ

 

 

 

 ミュウツーと言えばある意味ゲームでの終盤にて登場する伝説の野生ポケモン。

 レッツゴーより以前のゲームでは捕まえることも難しく、節約だと言ってハイパーボールなどを大量にぶん投げた覚えがある。

 

 

 そのポケモンが目の前で威圧を放ち、殺意を込めた目でこちらを睨みつけている。

 おそらくは特性がプレッシャー。レベル70はあるはず。

 

 ……ゲームで考えるなら、だけど。

 

 

(この世界は現実! 伝説で勝てる相手じゃないのは分かってるけれど……っ)

 

 

「ニンフィア、逃げ――――」

 

 

「フィアッ!」

 

 

 

 逃げようとした私の腕を引っ張ってくるニンフィアは、決してミュウツーから顔を逸らそうとはしない。

 私を見ることなく、ただ前を踏み出して守ろうとしてくる。

 

 リボンでのみ腕をつかんで、私に背を向けるなと言ってくるのだ。

 

 

 

(……逃げられない、ってこと)

 

 

 

 

 背を向けたら容赦なく攻撃してくるだろうということか。

 でも私はニンフィアの技構成をよくわかってはいない。

 

 あの男たちへ向けて技を放ったアレが、フェアリータイプの技なのは分かる。

 それ以外で、それもイーブイからニンフィアになってすぐなんだから、有効なものはあまりないはず……。

 

 

 

「っ――――――!」

 

 

 

 どうやら私を攻撃するためにはポケモンを先に倒す方がいいと理解したらしい。

 身体が震えるけれど、殺意を向けられて死ぬかもしれないという意識が冷静さを失わせてしまうけれど……。

 

 ニンフィアがリボンで必死に私の腕に絡みついて、一緒に対峙してくれていることで発狂も何もせずに立ち止まって奴を見ることができているんだと理解した。

 

 

 

 だから、ミュウツーが私――――だけではなく、ニンフィアをも認識したのだろう。

 

 

 

 

「来る……ニンフィア、避けるよ! 右上に飛んで!」

 

 

「ふぃーあ!」

 

 

 

 己の能力強化の技は使ってきてはいない。

 ただ攻撃をして倒すことだけを考えているのか、鋭い刃のような風がいくつも展開されニンフィアへ向けて放たれる。

 どんな技なのか分からないけれど、見える技だったら躱すことは可能だ。

 

 

 しかしミュウツーの攻撃技は真っ直ぐに飛ばされるのではない。

 いくつかは斜めへ飛び交い、飛び上がったニンフィアにぶつかると見えた。

 

 

 

「避けられない……ニンフィア、攻撃技で相殺!」

 

 

 

「ふぃっ!」

 

 

 

 ニンフィアの鳴き声と共に、洞窟内で風が吹き荒れる。

 小石が飛び、頬や手足にかすれて血が出てきたが、そんなのを気にする暇はない。

 じくじくと痛むそれは、今起きている光景が現実のものだとはっきりと知らしめてくれた。

 

 

 

「フィッ!」

 

 

 

 それと同時にニンフィアの口から煌めいた波動のような何かが飛んで、ミュウツーの攻撃技とぶつかって小さな爆発が広がった。

 

 

 

 

「ぐっ……げほっ。ニンフィア、大丈夫!?」

 

 

「ふぃーあ!」

 

 

 

 

 爆発によって黒煙が発生し、周囲の視界を曇らせる。

 ニンフィアはどうやらミュウツーがどこにいるのかをはっきりと認識しているらしく、頼もしい鳴き声と共に何かの攻撃を行うような強烈な音が響いた。

 

 

 

 それではっきりと理解する。

 ミュウツーの技を相殺した時点で、ニンフィアのレベルも意外と高いということを。

 

 

 

(イーブイだった時点であの子は良く育てられてた……んだよね……)

 

 

 

 

 本当はあの時、相殺ができていなくとも放たれた攻撃技の軌道が逸れることを期待していた。

 それだけだったというのに、爆発が起きるほどの強烈な技を放った。

 

 ようせいのかぜではない、別の技を――――。

 というかそもそもニンフィアってようせいのかぜ覚えたっけ?

 うぅ……なんかこう、図鑑が欲しい……。

 

 

 でもこれだけははっきりと分かる。

 あの時に口から放った強烈な技は、アニメやゲームで見たムーンフォースに似たものだったと。

 

 

 まさかあのふしぎなアメを三つ食べた時点で覚えたってこと?

 

 だとしたら、やっぱりとんでもないぐらいレベルが高いんじゃ……。

 

 

 

「フィッ!」

 

 

 ミュウツーではなくニンフィアについて気を逸らした私に対して、不意にリボンで腕を引っ張って集中しろと叱咤する。

 

 

 

「あっ、ごめんニンフィア」

 

 

「ふぃーあ!」

 

 

 

 その様子もまるで先輩トレーナーが後輩にバトルに集中しろと言っているかのようだ。

 

 

 

(ううん……いいのよユウリ。これはむしろ好都合)

 

 

 

 ここで死ぬわけにはいかない。

 ニンフィアのレベルが高いけれど倒せるかどうか不明なら……。

 

 

「ニンフィア、ミュウツーの天井に向かって攻撃!!」

 

 

「フィア!」

 

 

 とりあえずここは逃げる場面!

 私はミュウツーを捕まえる気はないし、伝説なんて面倒事はガラル地方に行ってからやるつもりなんだからッ!

 

 

 そう叫んだ私の意志を継ぐように、ニンフィアがミュウツーのいた天井部分を崩壊させる。

 

 落盤が起きて私たちの身も危ないだろうけれど、あの圧倒的プレッシャーから隙ができて逃げられるならそれでいいと――――。

 

 

 そう思っていたのに。

 

 

「っ――――――!」

 

 

 

 

「えっ」

 

 

 

「フィッ……!」

 

 

 

 

 落盤と共に、ミュウツーがこちらを睨みつけて両手を広げて何かの技を放つ。

 それがどういうものなのかわからず、ただニンフィアが庇うように私の前へ出たのが見えて―――。

 

 

 そうして、空が見えた。

 

 

 

「はっ?」

 

 

「ふぃ、ふぃあっ!?」

 

 

「いやいやいや待って。洞窟だったよねッ!? あれー?」

 

 

 

 ミュウツーらしきプレッシャーは何もない。

 ただあるのは草むらと青空。

 それと海が近くにあると分かるほどの潮風を感じる。

 

 

 ……ハナダシティって海近くだったっけ?

 いや、水がたくさんあるイメージは……でも……。

 

 

 

「ふぃあ……」

 

 

「えっ、何どうしたの?」

 

 

 

 

 ニンフィアが引っ張って私に見せたのは、どうやら道路へとつながる看板だった。

 

 

 

 ここは アサギシティ

 しおかぜ かおる みなとまち

 

 

 

 

「アサギ、シティ……って」

 

 

 

 

 

 あのミュウツー、テレポートか何かでジョウト地方へ飛ばしやがったなッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

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