転生ユウリちゃんはガラル地方に行きたい 作:ちゃっぱ
第一話 奴に右ストレートぶちかませ
ジョウト地方まで飛ばされたということは、徒歩で家まで帰るのは困難……というか、無理な気がする。
こうなるともう誰かに頼るしかないだろう。
だとしても、ポケモンを持っているこの状況をどう言えばいい?
ミュウツーに出会ってテレポートさせられたと言って、信じてもらえる?
「ニンフィアの事情を説明して、家に帰るとしても……」
誘拐されたのは本当のことだし、ぶっちゃけ嘘だと思われたとしても、マサラタウンからここまで来るのに幼女の足では限界がある。
だから絶対にいくつか信じてもらえるはず……だと、思いたい。
「ふぃー?」
「んん。ポケモンセンター……は、無理か。ニンフィア、怪我とかは大丈夫?」
「ふぃあ!」
トレーナーカードを持っていない私が公共機関を利用できるのは限られる。
ううむ。このポケモン世界って意外と便利そうに見えても不便な部分もあるんだよなぁ。
(今日中に帰れたらいいけど……最悪野宿を覚悟しなきゃな……)
現在時刻はお昼を過ぎた頃だろう。
ジョウト地方ということでマサラタウンへ帰れる船か何かないか探しては見たが、やはり故郷へ帰るにはお金もかかるし時間も相当かかるらしい。
幼女が珍しいポケモンを連れてうろついているということで話しかけてくる人はたくさんいた。親切で優しい人が多いんだろう。
笑いかけて私に目線を合わせるようにしゃがみ込み「どこから来たの?」と聞かれ、そこから「そのポケモン可愛いね。名前なんていうの?」という話をして、そうしてちょっとしたお菓子をもらうことができた。
――――正直に言えば、自分一人で帰れる手段がなくなった以上誰かに助けてもらうしかないだろう。
でも私が前世で一方的に知る人以外は怖いので頼ることはできない。
誘拐されたこともあるし、ロケット団が本当に解散していても悪人は全員捕まったというわけじゃないから。
「とりあえず……お腹空いたから何か食べよう」
「ふぃあー」
ニンフィアは相当珍しいらしいから、町中を歩くだけで人に何度も声をかけられるし、じろじろと見られることも多々ある。
それに状況が変わりすぎてて冷静さを失っている部分もあったような気がするし、じっくりと考える時間が欲しいから人の視線がない場所に行こうと決意する。
なので少し道路側へ外れて森の中で座り込んだ。
周囲は草むらに覆い隠されているため、人に見られる心配はない。
ニンフィアは取り出したポケモンフーズをがつがつと食べており、私も携帯食料である棒状のチョコレートをかじる。
「とりあえず、私は被害者だからポケモンを持っていることに対して怒られはするかもだけど取り上げられる心配はない……と思う」
「ふぃ?」
ただ問題なのが、このニンフィアがとてつもなく強い可能性があるということ。
モンスターボールに入ったということは野生であることは間違いないけれど、それでも……。
「ニンフィアは、私と一緒で本当に良かったの?」
「ふぃ、ふぃあ!」
あったりまえでしょ!
という感じで、私の膝に乗り頬をぺろりと舐めてきた。
「……うん。ありがとうニンフィア。じゃあとにかく家へ戻るために誰かに……どうせなら、ジムリーダーとかに助けを求めてみようか」
アサギシティのジムリーダーと言えば灯台のお話で印象に残るミカンちゃんだろう。
うんうん。ミカンちゃんに頼るとかとてもいい考えなんじゃないかな。
乱暴な人ではないし、ポケモンを労わるとても優しい女性だし。
「よし、助けてもらおう。あのジムリーダーだったらポケモンを奪われる心配もないから―――――」
「助けてもらうとは、何かあったのか?」
聞こえてきた声に、体が硬直した。
それと同時に、ニンフィアが警戒したように私の背後を守ろうとする。
気づかなかっただけだろう。
ニンフィアは気づいていたかもしれない。
近づいてきた段階で警戒していたのかもしれない。
考えに集中していたから、ニンフィアがどんな顔をしていたのか見ていなかったんだ。
背後に人の影があった。
恐る恐る振り返ってみて、驚愕した。
「ふぇ」
マントを着て、赤色の髪を靡かせたその姿。
リザードンを背後に従わせた男は、ドラゴン使いで知られている人で。
ある意味カントー地方でチャンピオンだったけれど元が付いたりつかなかったりするよくわからない人で。
つまり……。
(生まれて初めてチャンピオンに会うならダンデさんの方がよかったッッ!!!!)
なんで人に向かって破壊光線を放つようなチャンピオンに遭遇しなくちゃならないんだっ!!