なのはと喧嘩中にフェイトそんにNTRれる話   作:梵尻

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END二つ書く


なのはと喧嘩中にフェイトそんにNTRれる話 5-a

 覚悟はできた。

 自分のせいで作ってしまったこの状況を終わらせる覚悟を。

 多分、これからどんな選択肢を選んでも、俺には二人を完璧な幸せに導くことなんてできやしないだろう。もう散々二人を傷つけているわけであるし、何より自分自身にここからより良い結末へ舵を取るほどの器量も無い。

 それでも、最低な結末を出さなければならない。

 これだって自分の罰の一つ、だろう。

 

 完璧に冷えきったコーヒーに手を伸ばす。冷たい指先は震えていて、伸びている自分の手を見て「危なっかしい」と他人行儀に思うほどだ。

 だけれど、それ以上に、口の中は乾ききっていって。それだけじゃなくて、コーヒーを飲むという言い訳を作らないと、到底口が開いてくれる気もしなくて。

 乾いている口の中と、緊張と、自分でもよくわからない黒く濁ったごちゃ混ぜの感情を、真っ黒なブラックコーヒーで全部喉の奥へと流しこんだ。

 

「都合がいいってことも、虫がいい話だってことも、わかってる」

 

 堂々と話そうとしているのに、少しだけその声が揺れているように聞こえる。果たしてそれが、本当に声が揺れているのか、自分の心が、頭の中が揺れているせいなのかは、判断がつかない。

 破られた静寂に、なのはとフェイトさんは視線をこちらに向ける。

 二人の目を見つめる勇気は無い。

 

 ──けど、覚悟ならある。

 

 二人とも、不安そうで、今にも涙をこぼしそうで、弱々しく見えて。

 

 強い二人が好きだった。

 なのはもフェイトさんも、二人とも凄く強くて、自分にとっての憧れであった。そんなにも強い二人を、ここまで傷つけた自分を、その事実をまざまざと知らしめられて、ひどく胸が痛む。

 

「それでも、それでもっ────」

 

 ズキズキと痛む胸を無視する。

 きっと、彼女たちの方がよっぽど胸を痛めているのだから。

 

 俺は、答えを口にする。

 

「なのは、もう一度、俺とやり直してくれないか」

 

 何度目かの静寂だ。

 今はもう、時計の音も、空調の音も、ましてや自分の心臓の音すらも聞こえない。

 

「そして、本当に、虫の良い話だって事はわかってる。わかってるけど、また、みんなで仲良くなれる関係に戻れないか? なのはと、フェイトさんが、喧嘩をしてる姿なんて、もう見たくない」

 

 本当に、都合の良い回答だった。

 なのはとよりを戻したい、二人の反目を見たくない、どちらも我儘で自分勝手な意見だ。

 自分が嫌になる。でも、自分が嫌になったって構わない。これが、きっと俺にできる二人への償いなのだ。せめてもの贖罪なのだ。

 

 先に口を開いたのは、フェイトさんだった。

 

「ごめん、ケイ。それは、出来ない」

 

 当然だ、俺は思った。

 フェイトさんにとって俺の回答は、最も最悪な結末の一つだろう。想い人に振られた上で、なおかつ寝取ろうとした相手と、その妻と、仲良くしろと言われているのだ。だから、きっと彼女にとっては受け入れがたい答えなのだろうと思う。

 

「なのはの事も、好きだよ。でも、ケイの事も、好きなの。諦めて、2人に合わせる顔なんて無いよ。そもそも、そんなつもりなら最初からこんな事してない。もし、諦めるとしても、どんな顔してなのはに謝れば良いの? どんな顔してケイに会えば良いの。どうすればいいの、どうすれば……っ……」

 

 フェイトさんは、その顔を美しく歪めた。そんな表情は、一度も見た事が無かった。美しく、綺麗だった。

 それでも俺は、この自分勝手な、綺麗すぎる幻想を有り得ぬかもしない夢物語を押し通したい、押し通さなければならない。

 だと言うのに。

 

「──もう、いいよ」

 

 そう言い放ったのは、他の誰でもない、なのはだった。

 その言葉に愕然とした。

 どんな綺麗事や、どんな理屈を並べようと、心の奥底では「なのはなら許してくれる」という浅はかで、短絡的で、甘ったれた考えがあったのだ。

 なのはは、憔悴しているくせに、憑物が落ちた顔を見せる。

 

「私、ケイくんと、フェイトちゃんが幸せになってくれるなら、それで良いよ。二人の幸せの助けになれるなら、それで、良い、よ」

 

 先程までとは打って変わって、これ以上にない優しい笑みを浮かべていた。だというのに、彼女は痛々しいまでに涙を流していた。

 

「誰が悪いとか、さ、もう犯人探しはやめよう。ケイくんのことは好きだけど、同じくらいフェイトちゃんも大事な親友なの。最初は、気持ちの整理なんてつかなかったけど、多分、きっとこれが1番綺麗な終わり方」

 

 俺とフェイトさんは、彼女のその言葉にただただ圧倒されていた。何にも言い返すことが出来ず、呆然と見つめているだけだ。

 

 なのははそう言い放つと、おもむろに立ち上がり、ドアの方へと歩み寄る。

 出て行くのだろう、そんな事は分かっていた。分かっていたのに、この瞬間はそんな事実を否定したいとばかり思っていた。体は鉛をくくりつけられたかのように重く、動こうとしない。

 

「さようなら」

 

 だけれどこれは現実だ。

 そうして、彼女は家を駆け出た。

 

 俺は突然の出来事に動揺した。しかし、今回ばかりはそうしてられない。ここでもし、彼女を追いかけなければ必ず取り返しのつかないことになるから。

 彼女のあの言葉が、本心なのか強がりなのかわからない。分からないけれど、自分は、彼女と進む道を選んだのだ。

 なんとか彼女に追いつくために、動かない体を、倒れそうになりながらも無理に起動させすぐに立ち上がり家を飛び出そうとする。

 追いついて、謝って、それから、先のことなんて何も考えていない。それでも今はきっと、行かなければならないのだ。

 ──しかし、それは叶わなかった。

 

「フェイト、さん?」

 

 俺の服の袖は、縋り付くように、祈るように、フェイトさんに強く握られていた。

 なのはが居なくなったこの部屋は依然として薄暗く、妙な静けさだ。そんな中にポツンと取り残された二人は、部屋の真ん中で、時が止まったかのように動きを止めていた。

 

「私、ズルいよね。本当に、ズルい」

 

 服の袖は強く握られたせいか、くしゃくしゃになっている。フェイトさんは下を向いたまま顔を上げない。彼女の口からこぼれ落ちる言葉は、いったい誰に向けて放った物なのか、俺には判断がつかなかった。

 

「……とりあえず、離して下さい。なのはを追いかけないと」

 

「なのはなら────、なのはなら、もしかしたら、こう言うかもって、心の中で思ってた」

 

 その言葉に動こうとしていた足を一度止める。

 

「いつも自分より他人を優先する人だったから……その気持ちを利用して、本当に最低だよね」

 

 なんとなく、推測に過ぎないのだがフェイトさんの気持ちが分かった気がした。きっと彼女は、ついに耐えられなくなったのだ。

 自分自身のために行った今回の行為、もしなのはが真っ向からぶつかって来てくれたなら、フェイトさんにとってはそれが良かったのだろう。

 でも、なのはの選んだ答えは、自分を犠牲にしてでも、自分を裏切った二人を優先する物だった。

 その答えに、フェイトさんは、ついぞ罪悪感を感じてしまったのだろう。後悔も謝罪もしない、そう言っていた彼女は、その発言のせいで自分を制約していて、溜まりに溜まった悔恨が胸中を支配しているのだろう。

 フェイトさんは、嗚咽を漏らしながらその心情を吐露する。

 

「どうしよう、どうすれば、なのはは許してくれる? 

 ──どうすればケイは、私のこと許してくれるの?」

 

 顔を上げ、縋り付くような目でこちらを見ている。

 しかしその目には、俺は写っていなかった。

 

 ああ、最悪な終わり方になってしまった。

 もう、救いなんてないのだろう。今からどう取り繕おうと、どの道を進もうと、どんな選択肢を選ぼうと、きっとそれらは意味を持たない。

 全員が全員、自分の意見を押し通そうとしてしまったのだ。

 

 俺は、なのはとの関係を戻して、二人が昔の関係になることを望んだ。

 なのはは、自分を犠牲にして、俺とフェイトを幸せにしようとした。

 フェイトさんは、ずるいやり方で俺との関係を続けようとした。

 

 その全てが、過ちだと、誰も気がつく事は無かったのだ。

 ──いや、気がついていたとしても、それを選ぶしか無かったのだ。

 俺の押し通そうとした意見では、フェイトさんを幸せにすることが出来ない。

 なのはが最終的に通した意見では、俺を幸せにすることが出来ない。

 フェイトさんの叶ってしまった意見では、なのはを幸せにすることが出来ない。

 そして、それぞれの意見が自分を不幸にするのだ。

 その全てが、最悪の形として叶ってしまったのだ。

 

「もう、間に合わない、よな」

 

 もう、今更、追いつくことは叶わない。

 出ていったなのはに、到底追いつく事はできない。今からこの家を駆け出て追いかけたところで間に合うはずもない。壊れてしまった3人のこの関係が、正常に動き出せるような回答なんてない。もう、間に合わないのだ。

 

 フェイトさんは俺の袖を掴んだまま、無言で離さなかった。

 俺はその手を振り解く事も出来ずに、無言で立ち尽くしているだけだった。

 

 ・

 

 呆然としたまま、俺とフェイトさんは何かをするわけでも無くただ動けずにいた。

 ──だから、どちらからだったのかは覚えていない。快楽に身を委ねる事を選択したのは。ただお互いが、お互いの体を求めたのだ。

 俺と身を重ねている時、フェイトさんは泣いていた。

 しきりに誰かに謝っていた。

 俺も、彼女との行為の最中はずっとなのはとの事について考えていた。楽しかった過去を、ただひたすらに追憶していた。もう、きっと、幸せな自分とは、幸せな彼女とは、この記憶の中でしか会えないのだから。

 

 フェイトさんとの情交は、自傷行為に似ていた。

 肉体的な快楽は、確実に双方にある。しかし、二人で交わっている時は、二人ともがその心を酷くすり減らすことが出来たのだ。故に、俺たちは行為を続けた。

 許されないのは分かっているから。

 

 もう、堕ちる事でしか、溺れる事でしか、俺たちは自分を保てなかったから。

 

 

 ──BAD END




とりあえずバッドエンド。
次は(比較的)ハッピーエンド、のはず、、、
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