刀使ノ巫女 ~特別祭祀遊撃機動分隊録~   作:刹撥丸

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皆さん新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
大分遅筆で更新遅くなってしまいましたが、頑張って書いて行きますのでよろしくお願いします。
今回も過去回想になります…


-case2-

ジリリリリリリリ……

セットした目覚ましが何時ものように朝を知らせる。

その音に眠りの底から引きずり出される、未だに軽くまどろみの中にある身体と頭を懸命に動かして目覚ましを止めると欠伸を一つして身体を起こす。

身体に掛かっていた布団をどかすと薄ら寒い空気が身体を包む、気温はまだまだ暖かいとは言えないが特別寒いというわけでもない。

後ろ髪を引く布団から脱出し、カーテンを開ける。

開け放たれた窓から燦々と朝日が差し込み、この身を包む。

うん、今日もいい天気だ!

顔を洗い、髪を整え、スーツに着替えてタイを絞める。

朝の一連の動作は習慣付いたことなので手早く支度を整えると部屋を出る。

部屋を出ればそこはすぐに玄関ではあるが、そこにあるのは外への扉と俺の部屋に続く扉だけではない。2階へ続く階段もある。

玄関の壁に鞄を立て掛けると2階へ登る。

階段を登りきり廊下を少し行くと大きめのダイニングキッチンに出る。

キッチンでは既に千颯がエプロンをして朝食を作ってる最中であった。

 

「おはよう千颯」

 

「おはようございますチーフ、コーヒー入ってますよ」

 

そんな彼女に挨拶をするとこちらを見て挨拶を返した後すぐ朝食作りに向き直る、キッチンテーブルに目をやると確かにマグカップに注がれたコーヒーが湯気を立ててる。

 

「ありがとう、毎朝悪いね」

 

礼を言ってから席についてコーヒーを一口飲む、口の中に広がる苦味と薫りが頭を覚醒させる。

毎朝俺が起きる頃を見計らってコイツを淹れてくれる千颯には感謝の言葉もない。

朝食が出来るのを待ちがてらTVの電源を付ける、この時間帯はどこもニュース番組だ、今日も他愛のないニュースばかりで正直見聞き流しているようなものだが、してるとしてないとではやはり違う、我々の業務的にも世間の情勢を頭の片隅にでも入れておくことは重要だ。

そうこうしているともう一人、琉阿がいかにも眠そうな顔と欠伸をして部屋に入ってきた。

 

「ふぁ、おはようございまス……」

 

「うん、おはよう」

 

「おはようございます、るーさん」

 

"るーさん"というのは琉阿の愛称だ、喬が呼びはじめてから千颯もそう呼ぶようになった。

琉阿は一旦中を経由して部屋の外に出る、恐らくは顔を洗って来るのだろう。

多少スッキリした顔で戻ってきた琉阿は冷蔵庫を開ける。中からパック牛乳を取り出すとコップに注いで元に戻すとキッチンテーブルに座る、多少すっきりしたとはいえその顔はまだまだ眠気が取れていない様子。

 

「また夜更かしか?」

 

「今作ってるものがそろそろ出来上がりそうなんでスよね……」

 

「まぁ仕事に支障が出ない程度にな」

 

ういっスと返事の後に琉阿は牛乳を口に含んだ。

琉阿はかなりの機械オタクで趣味も機械弄りだ、その延長で色々と発明品を作っては業務に持ち込むのだが、出来はピンキリで役に立ったり立たなかったりだ。

昨晩も遅くまで作業していたのだろう、目の下に隈ができていつも半目気味な目は更に眠そうだ。

そうこうしてるうちに朝食が出来たようだ、そんな雰囲気を察すると立ち上がりキッチンに向かい二人分の皿を取る。

今朝の朝食はハムエッグにトースト、オーソドックスだが、故に理想形の一つとも言える朝食だろう。

 

「あっ、チーフ座っててもらっても大丈夫だったのに……」

 

「作ってもらってばっかりじゃ悪い、これくらいさせてもらわないと」

 

申し訳なさそうに言う千颯だが、ほぼ毎日全員分の朝食や夕飯を作ってくれているのに座ったままではこちらの方が申し訳ない、

せめて運ぶのくらい手伝わなきゃ年長者として立つ瀬が無いというものだ。

二人で四人分の朝食を配膳すると席に着くが、一人分の皿が余る、喬の分だ。

それを見た千颯がため息を吐く。

 

「はぁ、喬はまだ起きてこないんですか?仕方ない……」

 

そう言って千颯はエプロンも外さずパタパタと部屋から出ていく。

 

「喬!もうご飯できてるんだからいい加減起きなさい!!」

 

出て行った先から怒号が響く、今頃は千颯が寝てる喬の布団を引っぺがしてる頃だろう。その様は正に姉かお母さんだろうか。

 

「千颯サンには悪いでスけど、これを聞くと朝が来たって感じがしまスねぇ」

 

「そうだなぁ」

 

二人で和みながらそれぞれのコップに口をつけ、TVに目を向ける。

俺は分隊の部下3人と一つ屋根の下で暮らしている。この家は分隊の生活用に配備されたものだ。

分隊の性質上、緊急時には迅速な対応が求められる、よって『各学園の寮に待機して有事に迎えに行ってから出動』では対応に遅れが出るからだ。

建物は部分共用型の二世帯住宅といった感じ、玄関とガレージへの勝手口以外は1階と2階で独立していて、ガレージには分隊のバンが停めてある。

1階が俺が住んでいて、2階が3人の住居だ、人数の関係上2階の方が間取り・部屋数共に多い。

流石にセパレートされているとはいえ年ごろの女の子たちと住んでるため、こうして食事と仕事のとき以外はなるだけ干渉しないようにしてる。

最初は食事も別にしようとは思ったのだが、千颯が全員分作ってくれるということになったのでお言葉に甘えている次第だ、他の二人は料理するタイプじゃないしな…

そういう俺だって自分一人ではここまで手の込んだことはする気起きないので実際とても助かっている。

まったくもうとため息交じりに言いながらダイニングに戻ってきた千颯はエプロンを椅子の背に掛けて座る、少し遅れてのそのそとさっきまで寝てた目を擦りながら喬がダイニングに入って来る。

 

「ふぁ~あ、おはよございま~す」

 

「ああ、おはよう」

 

「おはようございまス」

 

大きく伸びと欠伸をしながら席に座る喬、全員が食卓に着くのを確認すると姿勢を正す。

全員でいただきますと礼をしてから朝食を食べ始める。

 

「全く、毎度毎度あんな大声で怒鳴りながら起こさなくてもいいじゃんか……」

 

「喬が中々起きないからよ、目覚まし掛けてるんでしょ?」

 

「掛けてるけどさ…」

 

喬が千颯の起こし方に文句を垂れる。

それに対し正論で返す千颯、だが喬は納得しかねるような表情で返事する、あれは起きられないもんは起きられないって言葉を飲み込んだ顔だな。

しかし前まではイヌ派だネコ派だの、きつねだたぬきだの、きのこだたけのこだのとなんでもかんでも喧嘩していたものだが、今ではそういうこともない。

 

「しかも醤油かよ、目玉焼きにはソースだろ!」

 

「うちは醤油なの!」

 

前言撤回、今もそんなに変わってないわ。

確かにテーブルの上には醤油と塩しか乗ってないけど……

そこからお互いヒートアップし始めるがそんな二人を後目に琉阿が慣れたもんだと欠伸をしながら席を立つ。

そしてソースを取ってきて二人の間に置く、

 

「あっ……」

 

「うっ……」

 

すると口論がピタリと止んだ。

 

「朝は時間がないので、喧嘩はホドホドにしてくだサいね。」

 

「「ご、ごめんなさい……」」

 

「ハハハ」

 

琉阿はもう一つ欠伸をすると再び席に付いて朝食の続きを食べ始める。

そんな様子を見て俺も自然と笑いが零れた。

琉阿も別に怒ってるわけじゃない、ただ朝は本当に時間の余裕があまりないのでああやって手早く喧嘩を収めたのだろう。

当初は喧嘩が起こる度にあわあわしていたのに今では慣れたものだ。

千颯と喬、性格が正反対なため、口論はよくあることだ、

喬は適当すぎるところがあるし、千颯は言ってることは正しいのだが、真面目すぎて言いすぎるきらいがある。

今でこそいいバランスで落ち着いたけど、分隊設立当初はそれはもうそのまま解散しちゃうんじゃないかってくれい酷い有様だった……

 

 

 

 

 

分隊設立初期のとある任務でのこと、

近隣の市街地に荒魂発生の報を聞き、さっそく分隊の機動力を活かして現場に一番乗りしたときだった。

民間人の避難誘導まではよかったのだが、問題はその後起こった。

当時は隊員の役割分担がしきれておらず、琉阿も戦闘に出ていたのだが、それが災いした。

喬が突出しすぎて隊列が伸びてしまい、結果付いていけなかった琉阿が横からの奇襲を受けて写シが解除され、怪我を負ってしまった。

幸い、千颯が迅速にカバーしたおかげで大事には至らず、荒魂のほうも無事に討伐できたものの、隊列を乱し琉阿の怪我の原因となった喬に千颯は烈火の如く怒った。

 

「ちょっと龍美さん、前に出すぎ!隊列乱さないで!」

 

「なんだよ、荒魂倒せたんだからいいじゃんか。」

 

「いいわけないでしょ!!」

 

あまりに悪びれも無く言い返す喬に千颯の怒りは更に盛り上がる。

 

「あなたねぇ、大事にはならなかったからいいようなものの、金石さんが怪我したのよ!?もうちょっと周りをみて慎重に行動しなさいよ!」

 

「ちっ…っさいなぁそこまで怒鳴るなよ、付いてこれなきゃこれないで後ろにいりゃいいじゃんか、無理矢理追ってくるから怪我なんかするんだろ!」

 

「なんですって……!!」

 

「ま、まぁまぁ隼水サン、大した怪我じゃないですから…」

 

怒られることに嫌気が刺したか喬も語気が強くなる。

そしてそのあんまりといえばあんまりな言い草に完全にキレる千颯、それを察した琉阿は急いで宥めようとするが時すでに遅し……

 

「あなたねぇ、私たちはチームなのよ!協力しないでどうするの!」

 

「じゃあアンタが後ろに控えてりゃいいだろ!前はアタシだけで充分だ!ぎゃあぎゃあ大声だして、お前はアタシの母さんじゃないだろ!」

 

「あわわわ……」

 

「おいおい、どうしたんだ!?」

 

俺は戦闘中、荒魂相手では基本的に役に立たないので民間人の避難誘導・確認を行っていた、その後途中で怪我をしたことは聞いて心配していたが大したことないとのことで胸をなでおろし3人を待っていた。

しかし、討伐完了の報告からなかなか戻ってこないので探しにいくと現場で繰り広げられていたのは、うろたえる琉阿を挟んだ怒号の応酬というとても見るに堪えないものだった。

現場に着いた俺を見て、ある程度冷静さを取り戻した千颯だがひたすら喧嘩していたのか肩で息をしてその眼には明らかに怒気を宿らせていた。

 

「二人ともまずは落ち着いて、チーム組んだばかりでお互いをわかってないところもあるんだろうけど協力して……」

 

「チーフ、こうも協力してくれないんじゃやってられませんよ」

 

なんとか二人を落ち着かせようとするも、食い気味に千颯が割り込んでくる。

静かな声だったがそこには呆れを通り越した刺々しい雰囲気だった。

へっと言い捨てながらそっぽを向いたままの喬。

だが次の千颯の言葉が喬の忌諱に触れることになる。

 

「『鬼切龍美』なんて言われてるからどんな人かと思ったけど、これじゃそこらの不良と変わりないじゃない」

 

「……っ!そうかよ!!」

 

千颯の一言に明らかに顔に怒りを浮かべた喬は千颯を一睨みした後背を向けて歩き出す。

 

「ちょ、ちょっと!どこいくんだ!?」

 

「歩いて帰るんですよ!一緒の車なんかに乗ったらまたそこのと喧嘩しちまいそうですからね!」

 

明らかに千颯への敵意を隠さずにそういい捨てるとずんずんと歩いて行ってしまった。

予想外の出来事にあたふたする琉阿、俺もどうしたものかと考え込んでいると千颯も構わず歩いていってしまう。

 

「放っておきましょう、歩いて帰るっていってるんですから」

 

「隼水さん、ちょっと待ってくれよ!」

 

この大喧嘩はしばらく尾を引き、俺を悩ませることになるのだった……




ありがとうございました。
分隊内の関係性を表現するために今回と次回あたりまでは過去回想が続きます…
それと今回から投稿速度とモチベの維持の為に3~5千字あたりで小気味よく書いていこうかなと思います。
感想・コメント・意見等々も励みや参考になりますので、もしあればどしどしくだされば幸いです。
よろしくお願いします。
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