やはり私が先輩に本物を求めるのは間違っていない   作:猫林13世

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知人に俺ガイルを勧められ気に入ったので作っちゃいました、猫林です。この作品を読む前にちょっとした注意点。
まず自分は原作を持っていないので、色々と原作との矛盾点が発生するかもしれませんが、その辺はご了承ください。
次に基本的にこの作品は八幡といろはの恋愛模様を妄想全開で綴るつもりですので、雪乃ファンや結衣ファンの方にはあまりお勧めできません。
更にモブを多用する予定ですが、モブの名前を考える気が無いので、友人Aや先輩Aなど、各自ご自由に区分けしてくださると幸いです。(自分もモノローグでそんな風に表記する予定です)
最後に、戸塚は天使。それではどうぞ。


再会

       『俺は、本物が欲しい』

 

 

 先輩の本音を聞いてから、私は変わった――いや、変わろうとした。だから偽物の恋だった葉山先輩の事は諦め、それ以降は先輩に付きまとった。先輩本人は気付いていなかったかもしれないが、私は本当に先輩の事が気になりだしていた。

 初対面の時は今後関わる事は無いだろうと思っていたから「先輩」としか呼ばなかったのだけども、今ではそれが特別であるような気もしている。実際結衣先輩や雪ノ下先輩の事は苗字や名前で呼んでいたし、葉山先輩や戸部先輩の事もちゃんとその人だと分かるように呼んでいた。

 でもなぜかあの先輩の事は「先輩」としか呼んだ事が無い。先輩が自分の事だと認識しているからとか、今更呼び方を改めるのは恥ずかしいとか、上げればいろいろと理由はあるのだが、その理由が「本物」なのかどうかは分からない。というか、そんな理由に「本物」も「偽物」も無いのではないか。

 結局先輩とは何度か強引にデートしただけで、それ以上の関係にはなれなかった。結衣先輩や雪ノ下先輩の事があったというのもあるけども、あの先輩はいくら私が誘ってもつれない態度を示すのみで、全然本気になってくれなかった。

 私の先輩に対する気持ちは間違いなく『本物』だと言える。だって、先輩が卒業してから数人に告白され、内数人とデートした事はあるけども、どれも楽しいとは思えなかった。

 以前先輩とデートした時「葉山先輩じゃないから減点」という、ある意味理不尽な採点をしたことがあったけども、その時は「先輩じゃないから減点」という採点を下していた自分に気が付いた。

 そこで私が本当に先輩の事が好きなんだという事に気付いた。だが、先輩は既に卒業しており、東京の大学に通っているという事以外の情報が無い。先輩の妹の小町ちゃんに尋ねれば分かるのかもしれないが、それは何となく負けな気がして、先輩が卒業してから小町ちゃんとの交流も殆どない。

 

「(意地を張らず小町ちゃんに聞いて、先輩と同じ大学に進学すればよかったかな……)」

 

 

 そんな事を考えながら、私は今日から一人暮らしをする賃貸マンションへと向かう。東京の大学、という曖昧な情報だけで決めた大学に通う為、私は実家を出て一人暮らしをする事にしたのだ。間取りは1DKで家賃は九万円とちょっと。両親――特にお父さんが心配性で一人暮らしは難しいかなとも思ったんだけど、実家から通うには少し遠いので渋々認めてくれたのだ。

 仕送りなどはあるけども、それだけで賄うには無理があるので、バイトもするつもりだし、こっちに越してくる前も千葉でバイトはしていた。その貯金もあるので、引っ越してからバイトは探そうと思っていたので、現状は何もしていない。

 

「それにしても、私も明日から大学生か……ついこの間高校に入学したと思ってたのに」

 

 

 こんなことを独り言ちていると、なんだかオバサン臭いけども、本当にこの間高校に入学して、嫌がらせで立候補させられた生徒会長になった気がするのだ。そして何の因果か二期続けて生徒会長を務め、先輩が卒業するまで散々手伝ってもらった。

 初めは渋々手伝ってくれていた先輩だったが、次第に本当の役員よりも生徒会の仕事に精通し、他の役員たちも先輩に業務内容を尋ねる、という光景もしばしば見られた。

 

「ほんと、やる気さえ出せばあの先輩はある程度の事は出来るのに……」

 

 

 エリートボッチ、ステルス・オブ・ヒッキーなど、自分を卑下する事と、斜め下の解決方法を思いつく事だけが二年次には目立っていたが、三年に進級してからあの先輩は変わった。具体的な事は分からないが、奉仕部の二人とは距離が出来たというか、奉仕部自体が開店休業状態だったので、次第に関係性が薄れていったのが原因なのかもしれない。

 その結果かどうかは分からないが、先輩は戸塚先輩の練習相手としてテニス部に頻繁に顔を出し、苦手だった数学にも取り組むようになり、三年次のテストでは学年でもかなり上位の成績を修めるようになっていた。

 そうやってだんだんと実力を発揮するようになったからかは分からないけども、新入生の中には先輩の事を「ちょっと好いかも」と囁く娘もいると、結衣先輩経由で小町ちゃんから情報が入ってきた。

 確かにあの先輩は、目が死んでいる以外はカッコいい部類に入るのかもしれない。そして三年次になってからは、目に活力が宿りだして、「死んだ魚の目」から「死にそうな魚の目」と雪ノ下先輩に表現されるようになっていたとか。これも結衣先輩を経由して小町ちゃんから聞いた話。元々やる気がなかっただけで、あの先輩は本当に「やれば出来る子」なのだ。

 

「こんなふうに先輩の事を思い出して後悔するくらいなら、先輩が卒業するのと同時に告白しておけばよかったかも……」

 

 

 結衣先輩や雪ノ下先輩も先輩の事は憎からず想っていたし、そのどちらかと付き合うと思っていたのだけども、先輩は誰とも付き合わずに卒業していった。噂では卒業前に数人の女生徒から告白されたらしいが、その全てを断ったという事だ。

 先輩の上辺だけしか知らない人が見れば、随分と調子に乗っていると思うかもしれないが、あの人の本音を聞いたことがある私からしてみれば、先輩の返事は想定内だ。あの人は所謂「お試しで付き合う」という事が出来ないタイプの人間であり、自分と付き合ってもマイナスしかないと考えるタイプの人間だから。

 

「(ほんと、最近は先輩の事ばかり考えてるような気がする……)」

 

 

 忘れようとしたけども、忘れられなかった男性(ヒト)。私をこんなにも変えたのに、その責任を取ることなく離れて行ってしまった男性(ヒト)。今後の人生で、これだけ私に影響を与えてくれる人と出会えるか分からないくらい、私に影響を与えた男性(ヒト)

 

「……あれ?」

 

 

 自分でも気づかない内に涙が零れる。こんなに泣いたのは、葉山先輩にフラれた時以来かもしれない。それだけ私は先輩の事が好きだったんだと、今再確認した。

 

「(泣いたって仕方ないのに)」

 

 

 軽く涙を拭って、私は今日から私の部屋があるマンションへ入ろうとして――

 

「あれ? 一色さん?」

 

「えっ? 戸塚先輩?」

 

 

――高校時代の先輩である、戸塚彩加に声を掛けられた。

 

「やっぱり一色さんだ。僕の事覚えてる?」

 

「はい、戸塚先輩ですよね」

 

「うん、そうだよ。久しぶりだね」

 

「そうですね」

 

 

 元々女子と間違えられるくらいの可愛らしさがあった戸塚先輩だが、今は少し伸びた髪を後ろで束ねており、ユニセックスの服を着ているので、より女性らしさが増したように見える。

 

「戸塚先輩もこのマンションに?」

 

「ううん、僕は遊びに来ただけだよ」

 

「戸塚殿、お待たせしてしま――ファッ!?」

 

「えっと……お久しぶりです」

 

 

 先輩のソウルメイト(本人談)の……材木置き場? 先輩が戸塚先輩に近寄り、私の姿に気付きおかしな声を上げる。

 

「お二人で遊んでるんですか?」

 

「ううん、多分先に入ってると思うけど、玉縄君もいるはずだよ」

 

「あぁ、あの人ですか……」

 

 

 海浜総合高校の生徒会長で、よく分からない用語を連発するので、あまり得意ではない。でも戸塚先輩とあの人って関係あったかな……

 

「それで、このマンションには誰が住んでるんですか? 玉縄さんですか?」

 

「違うよ。そもそも僕と材木座君、それに玉縄君はそれ程関係があったわけじゃないしね」

 

「まぁ、そうですね……」

 

 

 あの先輩の名前、材木座だったんだ……まぁ、今後関わらないから覚えておかなくても良いかな。

 

「とりあえず、中に入ろうよ。一色さんもこのマンションなんでしょ?」

 

「はい、今日からです」

 

「何階?」

 

「二階です。205号室」

 

「あっ、じゃあ隣だね。僕たちが用があるのは206号室だし」

 

「そうなんですね」

 

 

 階段を上りながら戸塚先輩と話す。私の部屋の隣に戸塚先輩と材木座先輩、そして玉縄さんが集まっているのか……正直、戸塚先輩以外嬉しくないかも。

 

「それじゃあ、私は荷物の整理とかがあるので」

 

「うん、またね」

 

 

 205号室の前で別れ、私は受け取ったばかりの鍵で部屋に入ろうとして――

 

「八幡、来たよ~」

 

「……えっ?」

 

 

 戸塚先輩が口にした名前を聞いてフリーズする。今、なんて言った……?

 

「戸塚……と、材木座」

 

「八幡、今我の事をついで扱いしなかったか?」

 

「いや、視界に入らなかった。目の前に天使がいるからな」

 

「もぅ、八幡ってば」

 

「あ、あのっ!」

 

 

 玄関先で楽しそうに話している三人に、私は声をかける――いや、この表現は正しくない。玄関から顔だけを出している人に、私は声を掛けたのだ。

 

「ん?」

 

「先輩……ですよね?」

 

「……一色?」

 

 

 これが、私『一色いろは』と先輩『比企谷八幡』との再会だった。




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