やはり私が先輩に本物を求めるのは間違っていない   作:猫林13世

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あまり他はいないかな


八幡のカテゴリー

 友人や結衣先輩とおしゃべりしていると、向こう側から小町さんがその友人たちと楽しそうに話しながらやってきたのが見える。小町さんは昔からコミュ力が高く、交友関係も広いから不思議ではないのだが、ここ最近は私や結衣先輩といることが多かったから、ちょっと意外に思ってしまった。

 私がそんなことを考えているとは思っていない小町さんは、私と結衣先輩を見つけて笑顔で手を振っている。普通年上相手にあんなに笑顔で手を振るなんてできないと思うんだけども、そこらへんは小町さんだからで説明がつく。あれが先輩だったら絶対にありえないだろう。

 

「あれって一年生だよね? いろはや結衣さんの知り合いの」

 

「そうだよ~。高校の後輩でもあるし、いろはちゃんの彼氏のヒッキーの妹の小町ちゃん」

 

「彼氏の妹が同じ大学って、結構きつくない?」

 

「そんなことないけど……それなりに友好的にしてるし」

 

 

 高校時代はバチバチだったが、流石に大人になったのでそこまでではない――はず。たまに小町さんに嫉妬したりしているが、それは顔に出していないし、ましてや小町さんに覚られるようなヘマはしていない。先輩には呆れられているが、あの人が小町さんに話しているとも思えないし。

 

「さすがにこっちに合流することはないんだね」

 

「向こうも別の友達と一緒だし、小町さん以外は面識ないし」

 

「てか、彼氏の妹なのにさん付けなの?」

 

「いろはちゃんは高校時代小町ちゃんのこと『お米ちゃん』って呼んでたのにね」

 

「お米? ……あぁ! こまちだからか」

 

 

 一瞬不思議そうにした友人だったが、お米の意味に合点がいったようで大きく頷いて、そして呆れたように私を見る。

 

「いろはって高校時代から今の彼氏のことが好きだったんでしょ? その妹相手にそのあだ名はないんじゃない?」

 

「そ、そんなこと言ったって、高校時代はそこまで本気で先輩のことが好きだったわけじゃ――」

 

「嘘だよね? いろはちゃん、高校時代から結構本気でヒッキーのこと、好きだったよね?」

 

「……はい。自覚はしていなかっただけで、先輩のことはかなり本気で好きだったです」

 

 

 自覚していなかったではなく、自覚しないようにしていた、の方が正しいかもしれない。高校時代の先輩を好きなんて公にしたら、私の評価が下がりそうとか、そんなことを考えていた。

 そもそも葉山先輩を彼氏にできたら私の評価が上がりそうだという理由で粘着していたのだし、あの時の先輩の評価を考えたら、私がそんなことを考えていたとしても不思議ではないだろう。

 何故他人事のような感じで考えているのかというと、私も実際のところどうして先輩に執着しなかったのか分かっていないからだ。雪乃先輩がフラれたと聞いて、チャンスだと思わず少し自重したのは、遠慮とかではなかったはずなのに。

 

「てか、結衣さんもいろはも高校時代からその人のことが好きだったんでしょ? 何か理由とかあるの?」

 

「理由?」

 

「私も見たことあるから容姿から好きになったならわかるけど、それだけだとそんなに長期間好きでいられるのかなって。ほら、外面的な理由ってすぐに別の人に惹かれたりしちゃったりするし」

 

「なかなか実感の篭った感想だことで……」

 

 

 彼氏が欲しいと豪語しながら、なかなかできないのはその辺りも影響しているのではないだろうか。コロコロとタイプが変わっているから、コレという相手に出会えないのだろう。

 

「私は、命がけで飼い犬を助けてもらって興味を持って、ヒッキーのことを調べているうちに、かな」

 

「命がけで? どういうことですか?」

 

「あぁ、そういえば結衣先輩の家の犬が飛び出して、雪乃先輩の家の車に轢かれそうになったのを先輩が助けたんでしたっけ? そのせいで先輩は入学早々入院。復帰したころには既にグループ形成が出来上がっていたからボッチになったとか聞きました」

 

 

 恐らく入学からちゃんと通っていたとしても、あの人はボッチになっていただろうけども、先輩の名誉を守るためにも、その辺りは黙っておこう。

 

「えっと……確か雪乃先輩って、いろはの彼氏に告白したって相手だよね? よく轢いた相手に告白しようと思ったよね」

 

「まぁ、雪乃先輩が運転していたわけじゃないし、あれは不幸な事故が重なっただけだから」

 

 

 あの時間に先輩が登校してなかったら、あの時間に結衣先輩が犬の散歩をしていなかったら、雪乃先輩が新入生代表として早い時間に登校しなければ。どれか一つでも欠けていたら、あの事故は起こらなかっただろう――先輩が欠けていたら、もしかしたら結衣先輩の家の犬は――だけども。

 外から見た奉仕部というのは、事故の加害者、被害者、きっかけを作った人の集まりだったが、そのことを詳しく知っている人間はいなかった。私だって当時は知らなかったから、知っている人はいなかったんだろう。

 

「先輩も雪乃先輩が悪いわけじゃないから、気にする必要はないって言ったみたいですし」

 

「私も病院に謝罪に行ったんだけど、あえなくて二年になるまでお礼言えなかったしな」

 

「結衣先輩はタイミングが悪いんですよね」

 

「わ、悪くないし!」

 

 

 どう考えても悪いのだが、これ以上イジメると結衣先輩が泣きそうなので止めておこう。本当に年上っぽくない人だ。

 

「結衣さんは分かったけど、いろはは?」

 

「………」

 

 

 せっかく話を逸らせたと思っていたのに、簡単に話を元の流れに戻されてしまった。

 

「そういえばいろはちゃんって、何時からヒッキーのことが好きだったの?」

 

「……私の本性を知って尚、私に付き合ってくれたのは先輩が初めてだったので、そこから気にしだしてたんだと思います」

 

「いろはの本性って、真っ黒すぎるお腹のこと?」

 

「否定したけど自覚してるだけに何も言えない……」

 

「その本性を知って一緒にいるのは中々の猛者だね。もしかして、彼氏さんってドⅯ?」

 

「いや、最初から見抜かれてたからそういうんじゃない」

 

 

 あの人は私が外面を装っているのを一目で見抜いたのだ。まぁ、ハルさん先輩の外面も一瞬で見抜いたみたいだし、私程度の装いなんてすぐにバレても仕方がないのかもしれないが。

 

「随分と人を見る目がある人なんだね」

 

「あの人の場合、人の悪い面を見抜くのが上手いから、それでだと思う。逆に人の良い面は見ないようにしてたっぽいし」

 

「ヒッキー捻くれてるからね。小町ちゃんに捻デレって言われるくらいに」

 

「何その新ジャンル……」

 

 

 先輩のカテゴリーを聞いて、友人は絶句する。まぁ、初めて聞いた単語だろうし、そんなジャンルがあるなんて普通は思わないよな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大学のカフェでお喋りしていたせいで結構な時間になってしまった。私は家路を急ぎ、何とかトラウマが発動することなく帰ってこれた。

 

「ただいまです」

 

「いやだから……」

 

 

 当たり前のように先輩の部屋に入ってきた私に、先輩は何かを言いかけてやめた。恐らくは言ったも無駄だと分かっていながらも言わなければいけないと思ったのだろうが、言っても無駄だという気持ちが勝って途中でやめたのだろう。

 

「随分と遅かったな」

 

「カフェでお喋りしてたらこんな時間になっちゃいまして」

 

「あぁ、女子は喋りだすと長いからな」

 

「先輩だって、戸塚先輩とだったらこれくらいの時間までは喋れますよね?」

 

「戸塚相手だったら余裕。むしろそのままお泊りまである」

 

「さすがにそれは引きます……」

 

 

 先輩と戸塚先輩が仲が良いのは知っているが、流石にそこまで行かれると……嫉妬の前にドン引きしてしまう。

 

「冗談はさておき、あんまり遅くなるなら電話しろ。予定がなければ迎えに行ってやるから」

 

「そこは予定を差し置いてでも私を優先してほしいところですが、先輩は律儀ですからね。まぁ、その気持ちは嬉しいです」

 

「飯は?」

 

「まだでーす」

 

 

 恐らくはそういう理由で聞いたのではないだろうが、私は先輩が作ってくれたご飯を食べる気満々なので動くつもりはない。先輩も私の行動はお見通しだったようで、やれやれと首を振りながらもキッチンへ移動する。

 

「やっぱり先輩は捻デレですよね」

 

「なんだいきなり」

 

「いえ、そういう話題だったので」

 

「は?」

 

 

 何のことかわからないという顔でこちらを見つめる先輩。まぁ、流石に今日私たちが何を話していたかなんて知らないでしょうし、私も話すつもりはないので結局先輩は首を傾げ続けるのだった。




捻くれは沢山いるんだけどな……デレまで行くと
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