やはり私が先輩に本物を求めるのは間違っていない   作:猫林13世

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開き直ってる


小町の追求

 冬休みに私の実家に先輩を連れて行かなければいけない。この予定は私にとってかなり大きな意味を持つ。私が先輩の実家に招かれた時は割と歓迎されている感じだったし、事前に小町さんからいろいろと情報を得ることが出来た。だが今回はお母さんからなんとなくの情報しか入手できないし、お父さんが先輩に対してどう思っているかなどの重要な部分は一切教えてくれない。

 電話口の雰囲気から察するにお母さんは楽しんでいるようだから、そこまで悲観的にならなくてもいいのかもしれないけども、もし先輩がお父さんに殴られるなんて展開になったりしたらどうしよう――などといろいろな妄想をしてしまうせいで講義中も上の空になりがちなのだ。

 

「いろは、あんたまたぼんやりしてたでしょ。単位大丈夫なの?」

 

「一応は大丈夫だと思うし、年明けには解決してるとは思うから」

 

「ということは年内に何か大きなイベントがあるってことか」

 

 

 普段は察しが悪い友人だがこういうところだけは察しが良い。私が年明けというキーワードを使ったことで何か普段と違うことがあると感付いたようだ。

 

「何々? ついに彼氏と初体験とか?」

 

「そうだったらどれだけ良かったか……」

 

 

 先輩が私の求めに応じてくれるだけならこんなにぼんやりしなかっただろう。いや、別の意味でそわそわしたりしてただろうけども、ここまであからさまな態度にはならなかったと思う。それくらい今回の予定は私にとって予定外過ぎるのだ。

 

「それじゃあなに? 彼氏の浮気を見つけて問い詰めるための証拠集め中とか?」

 

「どうして貴女は私を別れさせようとするわけ?」

 

「今年もお一人様確定な私に一人でも多く仲間を作ろうとしてるだけよ!」

 

「そんな大声で言わなくても……」

 

 

 どうやら今年も彼氏が出来ないで確定のようで、散々私と先輩が破局するのかと弄ってくるのだ。普段なら軽く流して終わりなのだが、今回に関してはお父さんの出方次第で本当になりかねない。先輩がお父さんに対してどう出るのかが分からないし、その逆も然りで対策しようがないのだ。

 

「まぁいろはなら上手いことやるでしょうから、年明けにでも結果を教えてよ」

 

「教えられる結果ならいいんだけど」

 

「本当に何があるって言うのよ……」

 

 

 私が不穏な空気を醸し出したのを感じ取ったのか、さっきまでからかいムードだった友人も神妙な顔つきに代わる。別にそこまで真剣に付き合ってくれなくてもいいのに、この友人は本当にノリがいい。

 

「周りからしたら本当に大したことじゃないんだけど」

 

「なんだか気になる前置きね」

 

 

 私は別に隠すこともないと思い友人に思い悩んでいる原因を告げることにした。

 

「――と言うわけ」

 

「あー、年頃の娘を持つ父親がどんな反応をするかなんて分からないわよね」

 

「先輩の方が激昂することはないだろうけども、お父さんの出方次第ではどうなるか分からないからさ」

 

「別に健全なお付き合いなんでしょ? 爛れた関係ってわけでもないんだし酷いことにはならないとは思うよ」

 

「だといいんだけどさ……」

 

 

 何せ私の一人暮らしに最後まで反対していたくらいだから、私に彼氏が出来たと知ってどんな反応を示したかなんて想像に難くない。恐らくお母さんに今すぐ呼び寄せろとかなんとか言ったんだろうし、実際お母さんが宥めてくれてなかったらそうなってただろう。てか、そんな感じだったってお母さんも言ってたし……

 

「私も彼氏が出来たらお父さんに呼び出されるのかな?」

 

「そんな先の心配よりも彼氏を作る努力を続けた方が良いんじゃない? もしかしたら相手がいないことを心配されてるかもしれないし」

 

「これが彼氏持ちの余裕か! 嫌味にしか聞こえないわ!!」

 

 

 とりあえず友人をからかう元気は出たので心の中で友人に感謝しつつ、私はこういう時に誰に相談すればいいのか分からない現状にもう一度頭を悩ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一日中上の空で講義を終えて帰ろうとしたら背後から声をかけられた。

 

「お義姉ちゃん、ちょっとお時間いいですか~?」

 

「小町さん……頼むから構内でその呼び方は止めて――って、結衣先輩も一緒でしたか」

 

「やっはろー、いろはちゃん」

 

 

 てっきり小町さんだけだと思って振り返ったら結衣先輩もいたので、私は小町さんに対するツッコミをキャンセルして結衣先輩に挨拶をした。

 

「それじゃあお義姉ちゃんも確保したことですし、カフェテリアへレッツゴーです」

 

「おー!」

 

「はぁ? ちょっ――」

 

「問答無用で連行です」

 

 

 小町さんに腕を引っ張られ、私は構内にあるカフェテリアは向かうことに。小町さんの力と私の力はさほど変わらないので抵抗しようとすれば出来るのだが、別段そこまで抵抗することでもないと判断して大人しく連れていかれているのだ。

 

「それで、わざわざ引っ張ってまでここに連れてきた意味は何です?」

 

 

 若干の不機嫌さを隠せないが、私は極めて冷静な態度で小町さんと対峙する。この人を相手にする時少しでも油断を見せると一気に崩されるので、出来ることなら対峙したくないのだがそうもいかない雰囲気。私は覚悟を決めて小町さんに尋ねた。

 

「最近お兄ちゃんが構ってくれないんですけど、何か特別なことでもあるんですか?」

 

「そんなこと先輩に聞いてくださいよ。私が分かるわけないじゃないですか」

 

 

 本当は分かるのだが、ここで馬鹿正直に小町さんに教える義理はない。そもそも今回の件に関して小町さんは無関係で面白おかしく話す内容でもない。先輩もそう思って小町さんには黙っているんだろうし、私だって話すつもりはなかった。

 

「てか最近は小町さんの相手をまともにしてないんじゃないですか? 来年には司法試験もありますし今は少しでも勉強に集中したいでしょうし」

 

「お兄ちゃんがそこまで真剣になるとはどうしても思えないんですよね。効率重視と言いますか何と言いますか」

 

「高校時代と今とではだいぶ違いますよ。それは小町さんだって分かってますよね?」

 

 

 高校時代の先輩なら『できないことはできない』として片付けていたでしょうけども、今の先輩はそうではない。私が分かることが身内の小町さんに理解できないとは思えないし、そもそも先輩が元々やればできる人だってことは私よりも小町さんの方が分かっているだろう。

 

「それはそうなんですが、何と言うかここ最近のお兄ちゃんは鬼気迫る勢いというかなんというか……」

 

「ヒッキーがそこまで真剣になるってことはいろはちゃんと何か関係してるんじゃないかって思ってね」

 

「………」

 

 

 どうして結衣先輩がここにいるのか疑問だったが、小町さんに余計な入れ知恵をしたのはこの人だったのか。普段は的外れなことばっかり言うくせに、どうして今回だけは的確に原因を見抜いたんだろうか……いや、もしかしたら本人としては当てずっぽうだったのかもしれないが。

 

「ここで沈黙したってことはやっぱりいろは先輩と関係してるんですね」

 

「全くの無関係とは言いませんけども、小町さんには関係ないことだとは言い切れます」

 

「私はお兄ちゃんの妹です。無関係なんてありえませんよ」

 

「高校時代は先輩がシスコンなんだと思っていましたけど、今は小町さんが重度のブラコンなんだって思えます」

 

「そりゃ、私はお兄ちゃん大好きですから」

 

 

 清々しいくらいはっきりと言われ、私は思わず反論の言葉を失くした。小町さんがブラコンだってことは分かっていたのにここまできっぱり本人の口から聞いたことがなかったからもあるが、彼女相手に良い度胸してるなと感心してしまったのもあるだろう。

 

「とりあえず何かがあったということが分かった、と言うことで今日は満足しておきます。ですが、もしお兄ちゃんに何かするんであれば――」

 

「私が先輩を傷つけることはありません。というか、何を言われたって私の方から先輩と距離を取ることなんてありえませんから」

 

 

 一発触発の雰囲気に結衣先輩がおろおろしてしまったので、私と小町さんは互いにバツの悪い表情を浮かべながらそれぞれから視線を逸らすのだった。




バチバチしてたなぁ
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