やはり私が先輩に本物を求めるのは間違っていない   作:猫林13世

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ボスで良いのかは微妙


ラスボスの気配

 先輩が注意してくれたからかそれとも単純に小町さんが飽きたからなのかは分からないが、以前のように私と先輩の関係が噂として流れることは無くなってきた。それでも少しは残っているのは、単純に私と先輩の関係を羨んでのものだったり根も葉もないもの立ったりするので気にする必要はないのだ。現に友人も結衣先輩も小町さんが流した噂のように食いついたりもしていないので、噂としてのレベルが低いことが伺える。

 

「そういえば最近彼氏と上手く行ってるの?」

 

「最近も何も、私と先輩が上手く行っていないことはなかったと思うけど」

 

「いや、噂としていろいろ流れてた時があったでしょ? 最近はそう言うことが無いから上手く行ってるのかなーって」

 

「だからあの噂は殆ど尾ひれが付いてただけで、実際には大したことなかったんだって何度も説明してるでしょ」

 

 

 やっぱり先輩の妹が流している噂と言うものはそれなりに信憑性があったようで、私が何度説明しても小町さんの方を信じる人間は一定数いた。それでも根気強く否定し続けていたから大きな誤解が生まれることはなかったし、小町さんの方も本気で私と先輩の関係を破壊するつもりなどないのでそこまで致命傷になるような噂は流さなかった。

 

「でもいろはの体質を考えたら今の彼氏を逃したらなかなか次は出来ないんじゃない?」

 

「それはそうかもしれないけど……」

 

 

 私からしてみれば先輩と別れるつもりなんて毛頭ないし、もし別れそうになったら必死になって関係修復に走るだろうからその心配はあまりしていなかった。だが友人に言われた通り私の体質的に先輩を逃したら次の彼氏なんて何時になるか分からないだろう。戸塚先輩のように身構えなくても大丈夫な異性などそうそういないだろうし。

 

「まぁ私としてはいろはがお独り様に帰ってきてくれた方が嬉しいけど」

 

「いい加減私を巻き込もうとするの止めてくれない? てか、早いところ彼氏作ればいいじゃん」

 

「そんな簡単に出来るなら苦労してないっての!」

 

「てかこのやり取り何回目よ……」

 

 

 私と先輩が別れたら嬉しいと言いながらも関係を心配してくれる友人のことを、私は結構本気で心配している。彼氏が欲しいと言いながらもう二年近く進展がないのだから。

 

「最近は呑み会とかも参加してるって聞いてるけど、いい人いないわけ?」

 

「ああいうところに参加してる人の大半がお酒目当てだったりするからなかなかね……マッチングアプリも使ったりしてるけどいい人はやっぱりいないかな」

 

「理想が高すぎるとかじゃないの? 絶対にこうじゃなきゃダメみたいな」

 

「そんなことはないけどな」

 

 

 同性の私から見ても友人はそれなりに整った顔立ちをしているし、異性が好きそうな性格をしているのに何故か彼氏が出来ない。以前その原因を考えていた時に通りかかった小町さんが――

 

「一緒にいるのが結衣さんやいろはお義姉ちゃんだからじゃないですかね」

 

 

――と言っていたのを思い出した。それを聞いた友人が一時的に私や結衣先輩から距離を置いたのは言うまでもないが、結果として変わらなかったのでこうして友人関係を続けているのだが。

 

「結衣さんはいろはの彼氏のことを諦めきれないから良いとして、どうして私に彼氏が出来ないのかしらね」

 

「逆にがっつき過ぎだからでは? 彼氏欲しいオーラが強すぎて近寄り難いとか」

 

「そんなオーラ出してるつもりはないんですけど? でもよくよく考えたら彼氏欲しくないアピールしてる結衣さんがモテてるのはそう言うことなのかな?」

 

「いやー、結衣先輩の場合は見た目と性格、それとあの二つの大きな膨らみじゃない? 大抵の男はそこに目が行きがちだし」

 

「横から見てても気づくんだから、結衣さんが気づかないはずもないか」

 

 

 結衣先輩はいい意味で鈍感ではあるがそういう視線に鈍いわけではない。先輩も初期のころは視線を向けないように苦労したようだが今では気にせず会話することが出来ているらしい。戸塚先輩に至ってはそういう欲があるのか分からない感じだし、結衣先輩の男友達ってそんな感じだったんだろう。葉山先輩グループにいた男たちは分からないけども。

 

「でもあの二つの凶器は同性でも抗い難いよね……ついつい手を伸ばしたくなるし」

 

「普段は気にしたりしないけど、ふとした瞬間とかね……」

 

 

 付き合いが長いのでそういう感情が芽生える場面などなかなか訪れないが、ふとした瞬間に結衣先輩に対する気持ちが膨張することがある。先輩は私の体質を心配して手を出してこないのか、それとも私の身体に魅力を感じないからなのかと悩んだりする時にふと結衣先輩の身体が脳裏をよぎったりする。その時くらいしか結衣先輩に嫉妬などしないのだが、どうしてもそこに思考が向いてしまうのは持たざる者の運命なのだろうか。

 

「とりあえずもう少し頑張ってみたら? それで駄目なら就職してからでも遅くはないだろうし」

 

「就職って……私たちまだ来年三年生だよ? 少し気が早くない?」

 

「こういうことは早めに考えておいた方がいいでしょ」

 

「普通はね。まぁいろはは永久就職が可能な状態だから焦らなくてもいいのかもしれないけど」

 

「いやいや、何があるか分からないし就活はちゃんとするつもりだから」

 

 

 永久就職もありかもしれないけど、先輩に最初からおんぶにだっこだと後々問題が発生しそうだから暫くは自分で稼いでおきたい。

 

「まぁいろはの言う通り、あんまり焦らなくてもいいのかもしれないけど気が付いたら三十路独身祭りとか一人で開催してそうだし……」

 

「何その闇の深そうな祭りは……」

 

 

 追及しては行けなさそうなネーミングだったので軽く流したが、絶対に足を踏み入れてはいけないような気がしてならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの噂問題以降私たちの関係に問題が発生することもなく、私は無事に三年に進級し先輩も四年生になった。結衣先輩の方も色々とギリギリではあったが一緒に進級できたので一応同窓生関係は続いている。

 

「いろはちゃんとはゼミ違うけど講義は結構一緒だしね」

 

 

 そう言って未だに友人関係を続けてもらっているのは非常にありがたい。以前小町さんが友人に言い放った時は何を言っているんだと思ったけども、結衣先輩と一緒にいる時の方が圧倒的に男子から見られる頻度が減る。男子から向けられる視線は増えるのだが私に向いていないのだ。

 

「そういえばこの間ゆきのんから連絡があってね」

 

「雪乃先輩から?」

 

 

 雪乃先輩と言えば先輩と付き合う前にバチバチやりあって以降会っていないので微妙な関係なままなのだ。だから近況とか知りようがなかったし、私として見れば会えばまたやりあいそうなので出来ることなら会いたくない相手だ。

 

「家の都合で大学を卒業したら隼人君と結婚するらしいよ。でもゆきのんは納得できてないから意地でも家の都合を無視してやろうって考えてるみたい」

 

「大きな家ってのは大変なんですね」

 

 

 高校時代の私なら葉山先輩と結婚なんて羨ましいとか思ったかもしれないけども、今の私はなんとも思わない。むしろライバルの一人である雪乃先輩が葉山先輩と結婚すれば確実に一人ライバルが減るという考えが浮かんでくるくらいだ。

 

「それでこの前ハルさんにも会ったんだけど、かなり大人っぽくなっててびっくりしたよ」

 

「ハルさん先輩は昔から大人っぽかったと思いますけど」

 

「そうだけど社会に出て大人っぽさが増したって言うのかな。私もああなれるのかなって思ったくらい」

 

「結衣先輩とハルさん先輩とじゃ無理じゃないですかね?」

 

 

 元々の持っているものが違い過ぎるので、結衣先輩がハルさん先輩のような大人っぽさを手に入れられるかと言われれば無理と答えざるを得ない。それくらいハルさん先輩の持っている大人っぽさは凄いのだ。

 

「ハルさんもヒッキーのことを気にしてたけど、今はいろはちゃんの彼氏ですって言ったら笑ってたよ」

 

「笑ってた?」

 

 

 何故ハルさん先輩が笑ったのか分からない私は不気味に感じたが、結衣先輩はすぐにその理由を教えてくれた。

 

「ゆきのんが誰に負けたのか分からなかったからじゃないかな? 相手がいろはちゃんだって分かって納得して笑ってたみたいだったし」

 

「そういうことですか」

 

 

 てっきり私相手なら先輩を奪うのは簡単だと思って笑ったのかと思ったけど、そういう訳ではなかったのか。だってあの人はある意味で先輩の唯一の理解者であったし、それなりに先輩に好意を持っていたように見えたから。

 

「ゆきのんが結婚するときは私も招待してくれるって」

 

「そりゃ結衣先輩は招待されるでしょうね」

 

 

 高校時代の数少ない雪乃先輩の友人だ。招待しないわけがない。それがハルさん先輩の嫌がらせだとしても。そう思いながら私は先輩がハルさん先輩に遭遇しないように心の中で祈るのだった。




普通に笑いそうだから怖い
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