やはり私が先輩に本物を求めるのは間違っていない   作:猫林13世

27 / 134
前回空いちゃったから今週も更新します


関係性

 先輩の誕生日パーティーを開くために、私の部屋でいろいろと準備を進める。参加者は私と結衣先輩、そして戸塚先輩の三人だけなので、それなりに時間はかかったけど、先輩の為ということで結衣先輩はかなり頑張っている。

 

「由比ヶ浜さん、随分と張り切ってるね」

 

「先輩にできることは限られていますからね~」

 

 

 ケーキを作ると意気込んでいたようだが、他の友人に止められたとかでそれはしないことに。まぁ、結衣先輩に料理をさせるつもりなんて、私にも戸塚先輩にも無かったのですが。

 

「いろはちゃん、これって何処に置けば良いかな?」

 

「あー、それはそっちにお願いします」

 

「分かった」

 

 

 簡単な飾りつけだけをして、後は先輩が帰って来るのを待つだけなのだが、結衣先輩はさっきからそわそわと配置を変えてみたり、うろうろとしたりと落ち着きがない。そんな姿を私と戸塚先輩は微笑ましげに眺めている。まぁ、私と戸塚先輩とでは、心の裡は随分と違うのだが……

 

「(やっぱり結衣先輩も先輩のことが好きなんですよね……まぁ、知っていたから良いんだけども、こんなにもはっきり見せつけられると、少し考えちゃいますよ……)」

 

 

 結衣先輩が先輩のことが好きということは、高校時代から知っていたし、本人も隠していないので知っている――というか、以前本人の口から聞いたことがある。だが私も自分の気持ちを自覚してしまった以上、素直に応援なんてできるはずが無いではないか。

 

「ところで、本当に玉縄君や材木座君は呼ばなくて良かったの?」

 

「だってあの二人を呼んだところで大して戦力になりませんし、そもそも先輩が嫌な顔をするだけだと思いますよ? 普段から何もしないで食べるだけだって愚痴ってるくらいですし」

 

「あはは……僕もあまり何も出来てないんだけどね」

 

「戸塚先輩はちゃんと後片付けをしたり、買い出しをしたりと手伝ってるじゃないですか」

 

 

 というか、戸塚先輩はいるだけで先輩が喜ぶので、呼ばないという選択肢は存在しない。むしろ戸塚先輩がいないと分かった途端、先輩が自分の部屋に帰ってしまうまである。

 

「いろはちゃん、ヒッキー帰ってきたよ」

 

「じゃあ、お出迎えしましょう」

 

 

 覗き穴から先輩が帰って来るのを今か今かと待っていた結衣先輩から知らされ、私たち三人は隣の部屋に特攻を仕掛ける。

 

「せーんぱい? いるのは分かってるので出てきてください」

 

「ヒッキー! いるんでしょ、開けて」

 

「二人とも、ご近所迷惑になるよ?」

 

 

 私と結衣先輩の特攻を見て、戸塚先輩が引き攣った笑みを浮かべる。確かに私と結衣先輩のセリフだけを聞けば、二股した最低野郎の部屋に突撃してきた彼女二人に聞こえなくもない。実際はそうではないのだが、噂と言うのは独り歩きすることが多々あるので気を付けなければ……

 

「何だうるさいな……何のようだ?」

 

「先輩確保! さぁ、私の部屋に連行します」

 

「彩ちゃん、手伝って!」

 

「八幡、ちょっと付き合ってね」

 

「あ、あぁ……って、くっつくな一色!」

 

「くっついてませんよ。ただこうしないと先輩が逃げると思って」

 

 

 いくら二人掛かりとはいえ、男性の先輩を女の細腕で引っ張れるわけがないので、こうやって捕まえているのだ。断じて私が先輩にくっつきたいからではない。

 

「それで、何の用なんだ? 場合によっては付き合うが」

 

「それは私の部屋でお話しますので」

 

「お前の部屋って、隣じゃねぇかよ……だったらここでも良いだろ?」

 

「ほらほら八幡、とりあえず行こうよ」

 

 

 戸塚先輩も手伝ってくれて、何とか先輩を私の部屋に連れ込むことに成功した。

 

「何なんだよ……」

 

「ヒッキー! お誕生日おめでとう!」

 

「おめでとうございます、先輩」

 

「八幡、おめでとう」

 

 

 部屋に入るなり結衣先輩が先にお祝いしてしまったので、私と戸塚先輩もそれに続きお祝いの言葉を述べる。それで漸く自分の誕生日だということを思い出したのか、先輩は納得したように頷いた。

 

「そう言うことか……別にやらなくても良いと言ったんだが」

 

「まぁまぁヒッキー! 今年は特別な誕生日だしさ」

 

「特別? あぁ、成人ってことか」

 

「そうそう、だから三人でお祝いしようって話してたんだよ」

 

「先輩、祝ってくれる人いなさそうでしたし」

 

「余計なお世話だ」

 

「あはは、とりあえず八幡、座って」

 

 

 戸塚先輩の誘導で先輩を座らせることに成功したので、私たちは恒例のお祝いの歌を先輩に送った。最初は呆れ顔だった先輩だったが、歌い終わったタイミングで私たちに頭を下げお礼を言ってくれた。

 

「ありがとな」

 

「これくらいは当然だって!」

 

「そうですよ。普段お世話になってるわけですし、お祝いくらいしてあげますよ」

 

「僕の誕生日を祝ってくれたのに、僕が八幡の誕生日をお祝いしないわけ無いって」

 

 

 この後は普通にケーキを食べたり、買ってきた料理で盛り上がったりしたが、どうしても先輩が給仕側になってしまうのは避けられなかった。だって、結衣先輩が危なっかしくて見てられなかったから……

 

「ゴメンねヒッキー……」

 

「気にするな。こういうのは慣れてる人間がやった方が早い」

 

「せっかく先輩を休ませようと思ってましたのに」

 

「まぁ八幡だしね」

 

 

 私や戸塚先輩がやっても大差はないので、結局は先輩に任せっきりになってしまったのを反省しつつ、私たちはそれぞれが用意したプレゼントを先輩に贈ることに。

 

「はいこれ。八幡、新しい圧力鍋が欲しいって言ってたから」

 

「いいのか? これ、結構値段するだろ?」

 

「普段から美味しいものを作ってくれてるし、僕の練習にも付き合ってくれてるからこれくらいは平気だよ。むしろ、まだ返しきれてないくらいだし」

 

「ありがとう、戸塚」

 

 

 何だか二人だけの空気が出来上がってる気がして、結衣先輩が慌てて二人に割って入った。

 

「これは私から! ヒッキーの部屋、お客さん多いからマグカップとかあった方が良いでしょ?」

 

「客が多いって、俺から招いてるわけじゃないんだがな……まぁ、サンキュな」

 

「うん」

 

「じゃあこれは私からです。先輩、いろいろと忙しいですし、リラックス効果があるアロマグッズとかいろいろです」

 

「俺、そんなに疲れてるように見えるか?」

 

「高校時代よりかは健康的に見えますが、元々が不健康そうでしたからねー。少しはこれを使ってリラックスしてください」

 

「……そうだな。色々と精神的疲労が溜まってるから、本当に効果があるなら使わせてもらおう」

 

「最初から疑ってたら、効果あるものも無くなっちゃいますって」

 

 

 疑り深い人なので仕方が無いのだが、そんな風に言われたらせっかく選んだのに失敗したって思っちゃうじゃないですか……

 

「ふぇ?」

 

「冗談だ。そんなに落ち込んだ顔するなよ。ありがとう」

 

 

 私の顔色の変化を察知した先輩が、私の頭を優しくなでながらお礼を言う。何だか慰められた形になっていますが、先輩に頭を撫でてもらうのはなかなか気持ちがいい。

 

「……ハッ! もしかして落ち込んでる私を慰めることで口説いてるんですか! ゴメンなさい、慰めてもらって頭を撫でてもらって嬉しいですが、まだちょっと無理です」

 

「相変わらず訳が分からないことを言いだすな……」

 

「でも、ヒッキーって相変わらずいろはちゃんに甘いよね」

 

「そんなこと無いと思うんだが……」

 

「八幡はお兄ちゃんだから、年下女子の扱いに慣れているだけかもしれないね」

 

「まぁ、小町で慣れてるけど、そんなに年下女子の扱いに長けてるつもりは無いんだが」

 

「以前にも言いましたが先輩、私先輩の妹さんじゃないですからね?」

 

「分かってる」

 

 

 妹だと思われてたら何だか望み無いので、もう一度はっきりと言っておいた。先輩は普通のタイプじゃないので『妹だと思ってたけど、もうお前のこと妹として見れなくなった』みたいな展開は望めませんし。

 

「先輩は私のこと妹扱いしてるみたいですけど、そういうことは小町ちゃんでしてください」

 

「そうは言ってもな……一色と小町を同じように扱ってるつもりは無いんだよな」

 

「……そうですよね。先輩シスコンですし、私以上に小町ちゃんに甘いんでしょうしね」

 

「それは否定できないかも……」

 

「いや、何でお前が答えるんだよ……」

 

 

 結衣先輩にセリフを取られた形になったので、先輩はツッコミを入れて誤魔化していた。だがまぁ、先輩が私に甘いのは、私も自覚していたので結衣先輩が嫉妬する気持ちもわかる。なのでこれ以上そのことは掘り下げないようにしておこう。




次回はちゃんと二週間後にできれば……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。