やはり私が先輩に本物を求めるのは間違っていない   作:猫林13世

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今回はちゃんとしたデートの予定


デート前夜

 小町ちゃんが帰るとのことなので、結衣先輩も先輩の部屋をお暇する。私も二人と一緒に先輩の部屋を出て自分の部屋に戻り――

 

「やっぱり先輩の淹れてくれたお茶は美味しいですね」

 

 

――二人の姿が見えなくなってから先輩の部屋に戻った。

 

「何でお前戻ってきてるの? 鍵かけたよね?」

 

「先輩からもらった愛の鍵で入ってきたんですよ」

 

「お前が返してない合鍵だろうが」

 

「少しくらいはのってくれてもいいじゃないですかー」

 

 

 せっかく冗談を言ったのに、先輩は相手にしてくれない。まぁ、確かにつまらない冗談だったからスルーされても仕方が無いとは思いましたけども、ちょっと冷たすぎないだろうか。

 

「それで、何で戻ってきたんだ? 由比ヶ浜と一緒にどこかに出かければ良かったじゃないか」

 

「どこかに行くにも中途半端な時間でしたから」

 

「だったら自分の部屋で大人しくしてろよ。せっかく今日は一日休みだったのに、何でお前の相手をしなきゃいけないんだよ」

 

「まぁまぁ、せっかく可愛い後輩が先輩の相手をしてあげてるんですから、もうちょっと喜んでくださいよ」

 

「わーうれしいなー」

 

「感情が篭ってないですよ」

 

 

 棒読みで言われても嬉しくないですし、そもそも表情が死んでいますから……この人に演技をさせるのは無理そうですね。

 

「合鍵のこと、小町さんに言うかと思いました」

 

「鍵?」

 

「私が借りパクしてるのを。それで小町さんと結衣先輩を味方につけて取り返すのかと」

 

「その方法も少しは考えたが、別の面倒事に発展しそうだったからな。というか、さっさと返せ」

 

「嫌でーす。せっかく先輩の部屋に堂々と忍び込める道具を手に入れたんですから、そう簡単に返しませんよーだ」

 

「人の部屋に忍び込んで何をするんだよ……」

 

 

 心底呆れてるようですが、無理矢理鍵を取り返そうとしない当たり、本当は私に鍵を渡しても良いと思ってるのではないか――なんて思ったりもするのですが、この人が好きな人は私ではない。恐らく今も昔も雪乃先輩のことが好きなのだろう。

 

「ねぇ先輩」

 

「何だ?」

 

「今度の土曜日って暇ですか?」

 

「土曜? 夕方から居酒屋でバイトだが、それまでなら時間は――いや、のんびりするので忙しい」

 

 

 途中で何かを感じ取ったのか急に忙しいアピールをしてきたが、のんびりすると言った時点で私の勝ちです。

 

「それじゃあ二人で出かけましょう! デートです、デート!」

 

「どうせお前の買い物に付き合わされるだけだろ……いい加減俺以外に大丈夫な異性を探せっての」

 

「いいじゃないですか。先輩だってこんなに可愛い後輩とお出かけできるんですよ? なんだったら学部のお友達に自慢――あっ……」

 

 

 この人にお友達なんていなかったと思い出し、私は可哀想な人を見る目を先輩に向ける。

 

「止めて。その「可哀想な人を見る目」は止めて」

 

「だって、高校時代の友人を除けば、大学に友人なんていない人だなんて……可哀想ですって」

 

「好きで友達を作らない人だっているんだから、偏見良くないと八幡思う」

 

「まぁ、こんな茶番はさておき」

 

「お前が始めたんだろうが!」

 

 

 先輩が少し問い詰めるように身体を乗り出してきたけど、とりあえずは話を進めよう。この人のボッチ体質について話し合う場面ではないですし。

 

「今回は本当にデートですよ。先輩には何時もお世話になってるので、いろはちゃんが先輩をエスコートしてあげます」

 

「気持ちだけで結構です」

 

「素直に受け取ってくださいよ~。じゃないと、先輩に襲われたって結衣先輩に言っちゃいますよ?」

 

「事実無根だ。もしそんなことを言いふらすなら、名誉棄損で訴えるぞ」

 

「先輩だって私のプライドをズタズタに傷つけてるじゃないですかー! それに、先輩の名誉なんてちっぽけなものですよね?」

 

「お前な……俺じゃなかったら寝込むようなことを平然と言うなよな……」

 

「先輩にしか言わないので大丈夫でーす」

 

 

 無理矢理押し切った感じだけども、これで先輩とお出かけの約束ができた。私はこれ以上居座って先輩に逃げ道を作られるのを避ける為に自分の部屋に戻る。合鍵は返さないままで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お出かけの前夜。普段なら先輩が逃げ出さないように部屋に押しかけてお泊りするところですが、今回は自分からデートと言いだした手前、多少なりとも意識してしまっている。

 

「先輩は私のこと、どう思ってるかなんて聞くまでもないのにな……」

 

 

 手のかかる後輩、または妹みたいな異性としか思っていないのだろう。何度も「私は先輩の妹ではない」と言ってきたというのに……

 

「この間だってデートって単語出したのに、全然反応しませんでしたしね」

 

 

 少しでも異性として見てくれているのなら、この単語で動揺してくれても良かったはずなのに、あの人は興味なさげな態度しかとってくれませんでした。これには少しショックを受けました。

 

「これでも大学では注目されている方だと思うんですけどね……」

 

 

 結衣先輩とセットとして見られてる感じもしますが、一人でも十分異性の目を惹くと思う。本性はさておくとしても、外面は悪くないと自負していますし、胸だって……

 

「結衣先輩と比べるのは止めましょう」

 

 

 私だってそれなりにある方だと思いますけど、隣にいるのが結衣先輩だからそこを自慢することはできない。でも先輩はあまり気にしない方だと思うので、今は沈鬱になる必要は無いでしょう。

 

「もし先輩が大きい胸が好きなら、結衣先輩にあれだけ密着されて何もしないのもおかしいですし」

 

 

 顔を赤らめる程度のことはしていましたが、それ以上のことはしていない。もちろん押し倒したりなんかすれば、社会的に終了を迎えるのでしないでしょうし、あの人は「理性の化け物」と言われるくらい我慢強い人です。据え膳を与えられても手を付けることはしないでしょう。

 

「例えば、私がお風呂上りの姿で部屋を訪れても、何もせずに追い出しそうですし」

 

 

 実際私のお風呂上がりの姿を見ても平然としていたのを思い出して、今更ながら腹が立ってきた。そりゃ私では色気に欠けるかもしれませんけど、異性の湯上り姿を見ておいてなんのリアクションも取らないとか。失礼にもほどがありますよ!

 

「って、そんなことを思い出してる場合じゃなかった……明日、何を着ていこう」

 

 

 せっかくのデートなので、少しは可愛らしい恰好をして先輩を動揺させてやりたいのですが、生憎私の持っている服は普通の物ばかり。これと言って特別可愛らしい服を持っていないのです。

 

「今から買いに行くのも変ですし……そもそも、こんな時間に出歩くのは怖いですし……」

 

 

 既に九時近くになっており、人通りはまばらになり始めている。幾ら金曜日の夜とはいえ、この辺りは人が集まるような店があるわけではないので、助けを求めなければいけなくなった場合、人を見付けるのは困難だ。そもそも私は、先輩以外の異性がダメなのに、助けてくれそうな人がいたとしても話しかけられるかどうか……

 

「少しはアピールできればいいんですが……そもそもあの人のタイプってどんな女性なんでしょう?」

 

 

 それなりに付き合いが長いですけど、先輩の好みって知らないんですよね……トマトが嫌いってくらいしか知りませんし。

 

「そもそも外出が嫌いな人ですから、そこから情報を得るのが難しいんですよね……」

 

 

 数回は一緒に出掛けたことはあるが、ラーメン屋だったりファミレスだったりと、女子とデートで行くような場所ではなかったですし……

 

「戸塚先輩から教えてもらったカフェは、ちょっと良かったですけど」

 

 

 先輩から教えてもらった戸塚先輩に連れて行ってもらった場所ですが、あのカフェは私も気に入っている。デザートメニューも豊富ですし、何より席の間隔が離れているので、異性がいたとしても気にしなくてもいいのだから。

 

「兎に角明日は、少しでも先輩に異性として意識してもらえることを目標に頑張らなきゃ!」

 

 

 なんとも情けない目標だと私自身も思うが、何時までも後輩ポジションでは何の見込みもない。私は少しでも異性として見てもらえるよう、ベッドに潜り込みながら作戦を練るのだった。




目標が何となく情けない気も……
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