やはり私が先輩に本物を求めるのは間違っていない   作:猫林13世

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質問攻めは大変だ


親の興味

 先輩に駅まで送ってもらい、私はこれから実家へ帰る。先輩のように小町さんが追い込みなので帰ってくるなと言われているわけでもなく、むしろ帰ってこいと言われているので仕方なく帰るのだ。

 

「それじゃあ先輩、またお迎えお願いしますね」

 

「めんどい……」

 

「良いじゃないですか。私の事情を知っていて、私が平気な異性って少ないんですから」

 

 

 先輩を除けば戸塚先輩くらいしかいない。そして戸塚先輩をこんなことに付き合わせられるほど、私は戸塚先輩と付き合いがない。

 

「どれくらい向こうにいるつもりなんだ?」

 

「一週間はいないつもりです。バイトもありますから」

 

 

 実家に帰ると言ってあるので、年始のシフトに入れられることはなかったが、それでも何時までも休めるわけではない。それにあまり長いこと実家にいると、お父さんが五月蠅そうだし。

 

「それじゃあ先輩、またです」

 

「あぁ、行ってこい」

 

 

 なんだか恋人っぽい会話だけども、私と先輩の関係はそんないいものではない。何時までも進展していない先輩と後輩。昨夜だってお風呂上りに誘惑してみたのだが、先輩は冷めた目で私を見てくるだけだった。

 

「(まぁ、先輩が誘いに乗ってくるなんて思ってなかったですけどね)」

 

 

 もしあの程度の誘いで釣れるのなら、結衣先輩がとっくに付き合っているだろうし、過去に何度か私のお風呂上り姿を見たことあるんだから、その時に襲われていたかもしれない。

 

「(ひょっとして私、先輩なら手を出してこないって分かってて誘惑したのかもしれない)」

 

 

 その時は真剣に誘っていたのかもしれないけど、冷静になって考えるとそんな気がする。だって、先輩なら私が本気かどうか分かるでしょうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二、三日実家でゆっくりしたら戻るつもりだったのだが、お父さんがしつこくいろいろと聞いてくるせいであまりゆっくりできない。お母さんがそれとなくお父さんに言ってくれたお陰で、二日目以降はしつこくは無くなったが、それでも私の状況を知ろうと話しかけてくるのだ。

 

「お父さんだって悪気があって聞いてるわけじゃないのよ」

 

「それは分かってるけど。それでも年頃の娘に対してずけずけと聞いてき過ぎ」

 

「あんたの状況はそれとなくしか教えてないからね」

 

 

 私が男性恐怖症になっていることは知っているので、詰め寄ってくることはない。もしそれで拒否反応を示されたら立ち直れないからと母は言っていたが、さすがにお父さん相手に拒否反応を示すことはないだろう。

 

「それで、例の『先輩』とはうまくやってるの?」

 

「な、なんのこと」

 

「夏にいろはのことを迎えにわざわざ千葉まで来てくれた先輩よ。その後進展はないの?」

 

「ないよ、そんなの……そもそも私はあくまでも高校の後輩でしかないんだから」

 

 

 自分で言っていて傷ついている自分がいる。先輩の中で私がどんな存在なのかは分からないが、今のところその程度でしかないと思うし。

 

「高校の後輩ってだけで、わざわざ千葉まで迎えに来てくれないと思うけどね」

 

「あの先輩はそういう人なんだよ。捻くれているけど、根は優しい人だから」

 

 

 周りには評価されていなかったが、あの先輩の功績は凄いものがある。ただ表面上はあの人がしたことは褒められるものではないので、あの人が日の目を見ることはなかったのだが。

 

「随分と信頼しているようだし、やっぱり紹介してもらおうかしらね」

 

「やめてよね。先輩に迷惑掛かっちゃうし、何よりお父さんが暴走しかねないし」

 

「どこの家の父親も、娘には幸せになってもらいたいって思ってるのよ」

 

「だからって根掘り葉掘り聞かれたら面倒だし」

 

 

 よくよく考えたら、先輩は私の両親と会ったことがない。雪乃先輩や結衣先輩のお母さんとは会ったことがあるのに……

 

「(まぁ、そもそも先輩はこの家に来たことすらなかったですし)」

 

 

 雪乃先輩が一人暮らししていた部屋や、結衣先輩の家には、奉仕部の集まりとして訪れたことがあったり、お菓子作りをするために訪れたりしたそうだが、私とはそういったイベントはなかったし……

 

「はぁ……」

 

「随分と深いため息ね。そんなに気になるなら告白すればいいのに」

 

「だって……」

 

 

 あの人は難攻不落に近い。私から見ても雪乃先輩や結衣先輩は魅力的だし、以前先輩に告白していたゼミの人もそれなりにレベルが高い女性だった。にも拘らず先輩はその告白を受け入れることなく断り続けている。

 

「そろそろ帰ろうかな」

 

「あと一日くらいゆっくりしていきなさい。お父さんには、私から言っておくから」

 

「うん、お願い」

 

 

 実家に帰ってきて気疲れしてるようじゃ、なんのために帰ってきたのか分からない。私は早々に東京へ帰ろうと思ったのだが、お母さんに言われてもう一日こっちにいることにした。

 

「先輩にメッセージ送っとこ」

 

 

 明日の午後に実家を出るとメッセージを送ると、最寄り駅まで迎えに来てくれるとのこと。

 

「(ほんと、どうして先輩は私に優しくしてくれるんですか?)」

 

 

 私がこの体質になった原因を知っていて、尚且つ隣の部屋で生活しているからなのか。それともほかの理由があるのか。

 

「(もしそうだったら良いんだけどな……)」

 

 

 先輩が私を好きでいてくれている。そんな妄想をしながら、私は実家での時間を過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先輩が最寄り駅に着いたとのことなので、私はお母さんに挨拶をして実家を出る。お父さんに話しかけるといろいろと面倒なことになりそうだったので、黙って待ち合わせ場所まで向かうことにしたのだ。

 

「先輩、わざわざありがとうございます」

 

「断ったところでしつこくしてくるだけだろうし」

 

「だって、結衣先輩も戸塚先輩も忙しそうですから」

 

「俺は良いのかよ……」

 

「だって先輩、まだ時間に余裕ありますよね?」

 

 

 担当している子がそろそろ受験の追い込みなので、先輩も忙しくなるのだろうが、さすがにまだ余裕があるのは知っている。なのでこうしてお迎えを頼んだのだ。

 

「まぁ、模試の結果も上々だから、あとは凡ミスを減らせれば合格はできるだろうしな」

 

「ほんと、真面目ですよね」

 

 

 高校時代もこうやって全面的に真面目キャラでいれば、もっと楽しい高校生活を送れていただろうに……でもそうしたら、私は先輩と接点が持てなかったかもしれない。だって、先輩が奉仕部に入れられたのは、その不真面目さが原因だったのだから。

 

「せっかくこっちに帰ってきたんですし、先輩もご実家に顔を出したらどうですか? 今ならかわいい彼女付きですし」

 

「誰が彼女だ、誰が。それに、帰ったところで追い返されるだけだろうしな」

 

「先輩、本当にご両親に興味を持たれてないんですね」

 

「あの二人の中では、俺は何時までも不真面目な学生なんだろうしな」

 

 

 さすがに呼び出しを喰らうようなヘマはしていないのでそこまで悪く思われているとは思えないのだが、先輩のご両親の期待は妹の小町さんにすべて向けられているようだ。

 

「それに、俺の実家の最寄はここじゃないからな」

 

「知ってますよ。結衣先輩や雪乃先輩と一緒ですしね」

 

「まぁな」

 

 

 二人の名前を出しても、先輩はそれほど反応を示さない。むしろ私の方が若干動揺しているまである。

 

「そういえば先輩、成人式はどうするんですか?」

 

「行かない。行ったところで話す相手なんていないしな」

 

「戸塚先輩は行くんじゃないですか?」

 

「どうだろうな。戸塚が行くなら行っても良いが」

 

「相変わらず戸塚先輩ファーストな考えなんですね」

 

「でも、いくら戸塚がいたとしても、中、高の同級生に遭うのは面倒だな」

 

 

 それほど知り合いがいるとは思えないけど、この人は悪い意味で有名人だった人だ。今もその勘違いをしたままの同級生に絡まれたら面倒だと思ったのだろう。

 

「それじゃあその日は、私が先輩の部屋でお祝いしてあげますよ」

 

「はぁ? 二十歳の誕生日にお祝いしてもらったから、別にしなくていいぞ」

 

「この間のリベンジです。今度こそ美味しい料理を作って見せますから」

 

「十分美味かったけどな」

 

 

 とりあえず拒否はされなかったので、私は成人の日に先輩の部屋でお料理することに決まった。今度こそは失敗しないようにしないと。




自然と八幡の部屋に入ってるいろは
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