やはり私が先輩に本物を求めるのは間違っていない   作:猫林13世

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ちゃっかりしてるから


彼氏の妹との付き合い方

 小町さんの入学式の後、私と結衣さん、そして折本さんに小町さんからお誘いがかかった。

 

「どうして私まで呼ばれたんだろう」

 

「カオリンも先輩なんだし、呼ばれても不思議じゃないと思うけど」

 

 

 小町さんは折本さんの連絡先を知らない。なので結衣さん経由で折本さんにも誘いを入れたのだが、誘われた折本さんは不思議そうな顔をしている。まぁ、折本さんと小町さんの関係は微妙だから仕方ないけど。

 

「ところで、このメンツならヒッキーも呼ばれてそうなんだけど」

 

「先輩はゼミに参加するからって言ってました」

 

「ちゃんと彼女には予定を話してるんだ。比企谷もしっかりしてるね」

 

「私がしつこく問いただしたから仕方なくって感じでしたけどね」

 

 

 本当は一緒に来てほしかったのでしつこく誘った結果、予定を教えてくれたのだが、そのことを二人に話す必要はない。

 

「それで、呼び出した比企谷の妹は?」

 

「そろそろ来ると思うけど」

 

 

 結衣さんの言葉が合図になったのかは分からないけど、そのタイミングで小町さんが店に入ってきた。そしてすぐに結衣先輩を見つけて手を振っている。

 

「結衣さ~ん!」

 

「小町ちゃん! こっちこっち!」

 

「結衣先輩、少し声量を抑えてください」

 

 

 高校時代のノリが抜けきっていないのか、周りを気にせず大声で手を振るので、私は恥ずかしくなってしまう。折本さんも私と同じ感じだし、やはり結衣先輩がおかしいのだろう。

 

「今日はわざわざ時間を作ってもらい、ありがとうございます」

 

「小町ちゃんのお誘いならいつでもOKだよ」

 

「それで、私まで呼ばれた理由は教えてくれるの?」

 

 

 挨拶もそこそこに折本さんが小町さんに切り込む。小町さんもその疑問は当然だと言わんばかりの顔で頷く。

 

「さすがは兄と付き合いが長いだけありますね。質問の仕方に容赦がないですね」

 

「べ、別に比企谷との付き合いとかは関係ないでしょ。私はただ、そこまで付き合いのない相手に呼び出された理由を知りたいだけで……」

 

「まぁまぁ、そんなに興奮しなくてもちゃんと話しますから」

 

 

 小町さんは自分の分の注文を済ませてから折本さんに視線を向ける。私と結衣先輩は固唾を吞んで二人が向き合っている光景を見守っている。

 

「折本さんが中学時代兄を晒しものにしてくれたお陰で、兄の高校時代はまぁ――あんな残念な感じになってしまったようですが、お陰でロクでもない相手に引っかからなかったので、そこはお礼を言わせてください」

 

「べ、別にそんなつもりがあったわけじゃないし……てか、私が晒しものにしたわけじゃないって」

 

 

 折本さんは先輩に告白されたと友達に話しただけで、その話を面白おかしく脚色して先輩を晒しものにしたのはその友達だ。だが折本さんがその友達に話さなければ先輩が笑いものにされなかったかもしれないので、折本さんが晒しものにしたと言っても過言ではないんだろうな。

 小町さんも折本さんの訂正を話半分にしか聞いていないようで、先ほどの発言を謝罪するつもりはなさそうだ。

 

「てか、そんなことを言う為に私を呼び出したの?」

 

「いえ、兄の件はただの口実です。よりよい大学生活を送るためには、先輩方に知り合いがいた方がいいかなーと思いまして」

 

「さすがは先輩の妹……いい根性してますね」

 

「その辺は高校時代で経験してますから、必ずしも兄の影響ってわけじゃないんですけどね」

 

 

 小町さんが高校に入学した時、先輩と結衣先輩、そして雪乃先輩が三年に、私が二年にいたことで小町さんは上級生から注目されかけていたが、その辺は上手いこと取り込んで目立たなくなっていた。あれは何をどうやったのか未だに分からないが……

 

「まぁ、構内で見かけたら挨拶くらいはするけど、それほどしたしくもないあたしより、結衣ちゃんや一色さんと話した方がいいでしょ」

 

「そんなこと言わずに、カオリンも小町ちゃんと仲良くしようよ」

 

「そうですよ。もう兄の件は恨んでいませんから」

 

「少しは恨んでたんだ、やっぱり」

 

「ところで小町さん。この後は千葉に帰るんですか? もしそうならそろそろ時間が――」

 

「あっいえ。この後は兄の部屋に泊まることになってますんで」

 

「そうなんですか?」

 

 

 先輩から何も聞かされていなかったので、私はあからさまに動揺してしまう。その表情を見て、小町さんが小悪魔的な笑みを浮かべて詰め寄ってくる。

 

「ひょっとしてこの後兄の部屋に行く予定だったんですか? だったらお邪魔になっちゃいますかね」

 

「そ、そんな予定はありません。ただ、先輩は今部屋にいないからどうするのかなって思っただけです」

 

「それなら心配ご無用。母から兄の部屋の合鍵を借りてきましたので」

 

 

 小町さんがバッグの中から鍵を取り出す。その鍵を結衣先輩は少し羨まし気に眺めているが、私は一瞬息が止まりそうになった。

 

「(私の合鍵が盗られたのかと思った……)」

 

 

 正確には私も先輩から借りたまま返していなかったのだが、今はそんなことを気にしてる場面ではない。

 

「あっ、別にお義姉ちゃんの部屋でもいいんですけどねー」

 

「き、急に言われても困ります」

 

「ですよねー。なので今日のところは兄の部屋で我慢しておこうかと思いまして。千葉には明日の昼に帰る感じです」

 

「そうなんだー。それじゃあ、この後この辺りのお店を案内してあげるねー」

 

「お願いしまーす。あっ、もちろんいろは先輩と折本さんも一緒ですからね」

 

 

 私と折本さんが逃げ出そうとしているのに感付いたのか、小町さんからクギを刺されてしまった。私と折本さんは渋々この後も小町さんに付き合うことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小町さんが先輩の部屋に向かうということは、私と同じ方向へ向かうということ。さっきまで小町さんの話し相手を務めていた結衣先輩はいないし、折本さんもそそくさと帰ってしまった。つまり私は今、小町さんと二人きりで帰路についていると言うことなのだ。

 

「まさかいろは先輩が兄のことを好きだったとは思わなかったので、挨拶に来たときは本当に驚いたんですよ」

 

「その話は前も聞きましたって」

 

「それくらい衝撃的だったんですよ。だって私が入学した時、一年の間ではいろは先輩は葉山先輩のことを狙ってるって噂されていたんですから」

 

「まぁ、未練がましくそばにいたから、そう思われてたのかもしれないですね」

 

 

 正直、進級した時点――いや、あのディステニーで告白する前から葉山先輩のことは諦めていた。あの告白だって一応のけじめとしてしただけで、まさかあそこまで泣くとは自分でも思っていなかったレベルなのだ。

 それなのに私は、先輩の評価があまり高くないとか、自分の見る目を否定されるのが嫌で堂々と先輩に付きまとうことができなかったのだ。もしあの時先輩と付き合えていれば、もっと早く先輩とキスができていただろうに。

 

「ところで、あれから何か進展ありました?」

 

「っ!?」

 

 

 心の裡を見透かされたかと勘違いするような質問に、私は音を立てて小町さんの方を振り向く。私の慌てっぷりに一瞬首を傾げたが、すぐに何かあったと察して人の悪い笑みを浮かべて詰め寄ってくる小町さん……

 

「この間会った時は何もないって言ってましたけど、あれからやっぱり何かあったんですね?」

 

「べ、別に大したことは――」

 

「いろは? それに小町まで……何やってるんだ?」

 

「お兄ちゃん、今日は泊めてね」

 

「は? 何も聞いてないんだが……」

 

 

 私が慌てたタイミングで曲がり角から先輩が現れてくれたお陰で、私はそれ以上追及されることはなかった。だがどうやら先輩も小町さんの来訪は聞かされていなかったようで、驚いた表情を浮かべている。

 

「いろいろな人の話を聞いてたら疲れちゃって。その後結衣さんたちとお出かけしたら帰る元気もなくなるかなってことで、最初からお泊りの予定だったのです」

 

「聞いてないんだが?」

 

「うん、言ってないもん」

 

「はぁ……食材買ってくるから、お前はいろはと二人で先に部屋に行ってろ」

 

「元々そのつもりだったらか問題なし。それじゃあお兄ちゃん、お買い物よろしく」

 

 

 来た道を戻っていく先輩を見送り、私と小町さんは二人で部屋へ向かうのだった。まぁ、私の目的地はあくまでも自分の部屋なのだが。




八幡の扱い方が一番うまいのは小町
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