やはり私が先輩に本物を求めるのは間違っていない   作:猫林13世

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小町が興味津々


先を目指して

 先輩の部屋で私の誕生日を祝ってもらって、先輩の妹の小町さんとも少しは仲良くなれた気がする。もともと仲が悪かったというわけではないけども、何処か苦手意識があったのは確かだ。

 高校時代は雪乃先輩や結衣先輩と小町さんの方が仲が良く、私との関わりが薄かったというのもある。まぁ、私から近づかなかったというのもあるけども、そこは気にしないでおこう。

 

「片付けくらい小町がやるよ」

 

「どこに片付けるか分かるのか?」

 

「そっか。じゃあ洗い物はするから、お兄ちゃんが片付けて」

 

「はいよ」

 

 

 兄妹で後片付けをするのを眺めながら、私は食後のお茶を啜る。本当なら私が小町さんのポジションにいた方がいいんだけども、あの間に割って入るのは難しいのでやめておこう。

 

「お兄ちゃん、今日泊まっていいんだよね?」

 

「最初からそのつもりだったんだろ、白々しい」

 

「えへへ。でもさ、いろは先輩がお泊りするなら大人しく帰ろうかなって」

 

 

 そのタイミングでチラっとこっちを見た小町さん。その視線を受けて私は慌てて視線を逸らす。小町さんが居なかったらそのままお泊りするつもりだったのが見抜かれている気がしたから。

 

「何だったら私がいろは先輩のお部屋にお泊りして、いろは先輩がお兄ちゃんの部屋にお泊りでもいいですよ」

 

「馬鹿な事言ってないでさっさと洗え。結局俺が洗ってるじゃねぇかよ」

 

「はーい」

 

 

 兄妹のじゃれあいを見ながら、私は気持ちを落ち着かせるためにもう一杯お茶を淹れる。小町さんの提案はありがたかったけども、今の心情で先輩の部屋に泊まったら自分を抑えられるか分からない。それくらい小町さんに煽られたのが心の中に残っているのだろう。

 先輩と付き合いだしたのがバレンタインだから、私の誕生日で二ヵ月だからまだ何もなくても不思議ではない。だが何かあってもおかしくはない期間でもあるからだろう。

 

「それじゃあ片付けも終わったことですし、いろは先輩とおしゃべりしましょう」

 

「さっきいろはの部屋に連れ込んで喋ったんじゃねぇのかよ」

 

「義姉妹の語らいはしたけど、お兄ちゃんを含めてのお喋りはしてないでしょ? それに、小町はお兄ちゃんともお喋りしたいんだよ。あっ、今の小町的にポイント高い」

 

「そのポイント制度、まだあったのかよ」

 

 

 何回か聞いたことあるし、私も冗談でいろはポイントとか言ったことあるけど、小町さんが言うと私が言った時より可愛く見えるのはなんでなんだろう……やっぱり本家本元だから?

 

「いろは先輩、どうかしましたか?」

 

「な、何でもないです。それで、何を喋るんですか?」

 

「やっぱりお兄ちゃんが何時いろは先輩を好きになったとかですかねー。あっ、いろは先輩がお兄ちゃんのことを好きになったタイミングでもいいですよ?」

 

「んなっ!?」

 

 

 そんなことを聞かれると思っていなかったので、私はとんでもない声を出してしまう。それに対して小町さんはニヤニヤしながら私に詰め寄ってくる。

 

「これはいろは先輩の方が攻略しやすそうですね~。お兄ちゃんはゴミいちゃんだけど、こういうことは人に言わないタイプだから難しいんですよね」

 

「あんまりいろはを困らせるなよな。親父殿に小町が男友達の家に外泊してるって吹き込むぞ」

 

「そんなことされたら小町、しばらく外出禁止になっちゃうよ!? 入学早々単位の危機だよ!」

 

「それが嫌ならあんまりいろはを困らせるなよな」

 

「はーい……お兄ちゃん、本当にいろは先輩のことが好きなんだね」

 

 

 今のやり取りだけで、小町さんは先輩が本当に私のことを想っていると理解してくれたようで、それ以上の追及は諦めたようだ。今の会話にそれだけの威力があったとは私には思えなかったけども、この兄妹の中では今の会話だけで十分すぎるくらいだったのだろう。なんだか羨ましい関係性だが、兄妹と恋人を比べても仕方がないだろうな。

 

「高校時代のお兄ちゃんに今のお兄ちゃんの状況を話したらどうなると思う?」

 

「信じないだろうな。あの時はいろはのことは手のかかる後輩としか思ってなかったから」

 

「そうなんですか!?」

 

 

 先輩の衝撃的な告白にショックを受ける。確かに面倒ごとを先輩に持って行っていた自覚があるだけに反論はできないけど、もうちょっとオブラートに包んで言ってもらいたかった。

 

「あー確かにね。お兄ちゃんがしょっちゅう休日に学校に出かけてるのを見てた小町の気持ちも考えてほしかったですよねー。せっかくお兄ちゃんと遊べると思ってたのに」

 

「いや、小町は受験生だっただろ。誘われたとしても俺は一緒に遊ばなかったと思うぞ」

 

「受験が終わった後だよ。お兄ちゃん、三年生になってもいろは先輩のお手伝いとか、戸塚さんの練習相手とかで家にいなかったじゃん」

 

「そうだったか?」

 

「そうだよ! そのせいでお母さんとお父さんの関心はますます小町に向けられるようになったんだから」

 

「そうだったのか。じゃあ忙しくしてて良かったな。あの二人が俺に興味を向けたとは思えないが、小町の期待度が上がったのは八幡的にポイント高いからな」

 

「全然高くないよ……」

 

 

 どうやら小町さんはご両親の期待が重いようで、恨みがましい視線を先輩に向けている。

 

「両親から無関心だからこそ、俺は自由に実家を出ることができたわけか」

 

「いや、元々大学生になったら家から追い出すってお父さんが言ってたし」

 

「あの親父殿は……まぁ、男親なんてそんなものか」

 

 

 男親が息子に向ける感情は分からないけど、先輩が言うように興味が薄いんだろう。

 

「それじゃあ私はそろそろ部屋に戻りますね」

 

「せっかくだからいろは先輩も泊まっちゃいましょうよ! 小町と一緒のベッドで寝ましょうよ」

 

「えっ?」

 

 

 先輩の部屋に泊まれるのは嬉しいけど、小町さんと同じベッドというのが引っかかる。何かされるんじゃないかという疑念が私の中に渦巻くなか、先輩が疑いの目を小町さんに向けた。

 

「何を企んでる?」

 

「企んでるなんて失礼だなー! 小町はいろは先輩もお泊りしたいだろうなーって思って提案してるだけだよ。決してお兄ちゃんと何かあるかもなんて思ってないから」

 

 

 どうやら思っているようだが、先輩は深く追求することなく流してしまう。私はと言うと、小町さんに強く反発することが出来ず、流されるようにお泊りが決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故か小町さんと一緒にお風呂に入り、その後先輩が用意してくれたケーキを二人で食べている。ちなみに先輩はお風呂に入っている。

 

「いやー、ここまでお兄ちゃんの料理スキルが上がっているとは。小町もうかうかしていられませんね」

 

「そうだね……」

 

 

 小町さんみたいなキャラが近くにいなかったからなのか、未だに距離の取り方が分からない。小町さんはグイグイ来るけど、私はどうするのが正解なのか……

 

「なんだか無理矢理誘っちゃったみたいですけど、いろは先輩は嫌だったりしますか?」

 

「そんなことはないですよ。私も先輩の部屋に泊まれるのは嬉しいですし」

 

 

 壁一つ隔てただけとはいえ、先輩と同じ空間で寝食を共にできないのは寂しいし。付き合いだしてから自分の部屋で寝たのは本当に数える程度しかない。それくらい先輩に甘えているのだと思う反面、これだけ一緒にいるのに何もされていないという不満が私の中に生まれた。

 

「兄は曰く『理性の化け物』だから仕方ないですよ」

 

「え?」

 

 

 急に脈略のない話題を振られて、私は阿呆みたいな反応を見せてしまう。

 

「いろは先輩に魅力がないとかじゃなく、兄からはそういう欲を見せないってだけですから、いろは先輩から誘ってみるのも一つの手かと思います」

 

「何の話?」

 

「えっ? お兄ちゃんに手を出されてないって不満を抱いたような顔をしてたので、ちょっとしたアドバイスをしてるんですよ」

 

「……そんなに露骨に表情に出てました?」

 

「小町レーダーは誤魔化せませんから! ことお兄ちゃん関係なら小町はエスパー並みの観察眼を持っているのです」

 

 

 エッヘンと胸を張る小町さんを見て、私は素直に白旗を上げる。私の気持ちなど、ブラコンの前では隠しようがなかったのだろう。

 

「でも、先輩に引かれないかな?」

 

「まぁ、行きすぎると引かれるかもですが、普通のおねだり程度なら大丈夫だと思いますよ」

 

 

 一応注意した方がいいと忠告を含みつつ、小町さんは多少強引にいけとアドバイスしてくれた。やっぱりそうした方がいいのだろうか……




いろはが決意したら大変だ
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