ボールがくれた出会い 作:御沢
私は、山吹楓。
今日はサッカー部の練習に来ている。まぁ、サッカー部に所属しているんだから、当然だけど。
普通は集中してやるのだけれど、今日は集中できなかった。1年生からのボールでさえもちゃんと受けることができなかったし、やっと受けたボールもゴールすることができなかった。
そんな状態を心配したらしい先輩たちが、私のところに来た。
「楓?どうしたんだ?」
「いえ、大したことはないんですけど・・・」
「そうか?でもなぁ・・・ゴール出来ないなんておかしすぎる」
「・・・じゃあ、何かあったんです。すいません、聖地(グラウンド)にこんな気持ちを持ちこんでしまって・・・」
「いや、まぁ、大丈夫ならいいんだが・・・ちゃんとしろよ?今日は、剣城も調子が良くないらしいしなぁ・・・」
「つ、剣城も・・・?」
「あぁ。なにか、2人して隠してるのか?」
私は、心当たりがあった。
でも、そのことは先輩たちには言わなかった。
「いいえ、ただ、不思議に思って・・・いつもクールな剣城(あいつ)が、なぜ・・・と思ったんです」
「そうか・・・まぁ、2人とも頑張ってくれよ?チームの2トップなんだからな」
「はい・・・あ、もう練習が終わってしまうので、戻ってもらっていいですよ」
「あぁ、そうだな」
そういうと、先輩たちはそれぞれのポジションに戻って行った。
そして、私は剣城の方を見た。
きっと、剣城の調子が悪いのは、さっき緑に質問されたあのこと。
「『フィフスセクター』って何?」
フィフスセクター・・・
私と剣城(あいつ)にとって、いい思い出は残っていない、あの悪夢のような場所。特に剣城にとってはいい思い出なんか1つも残っていないだろう。私は、聖帝こと豪炎寺さんの真の目的によってサッカー部破壊という任務は受けなかったが、剣城(あいつ)は、ただお兄さんの手術代が欲しい・・・という気持ちだけだったのに、大好きなサッカーを、サッカーによって破壊するなんて辛かったに決まっている。
「剣城・・・」
私は、無意識のうちに剣城(あいつ)の名前をつぶやいていた。
そして、緑と約束した時間が来た。
サッカー部ファーストチームの部室に私と緑だけが残った。
部室の外で、剣城が盗み聞きをしようとしているらしいけど、私にはお見通しだった。だって、幼馴染なのだから。
「楓ちゃん・・・ごめんね。きっと、嫌な事、聞いちゃったんだろうね、僕」
「えぇ、私はもちろん剣城(あいつ)はもっと嫌なことね。でも、謝ることじゃないわ。いつか、話さなきゃいけないと思ってたし。あなたが、化身使いだと告白したように」
「楓ちゃん・・・」
「・・・話すわね。『フィフスセクター』というのは、1年ほど前に解散されたサッカー管理大型組織。この組織があった1年前まで、サッカーは自由なものではなかった」
「サッカーが・・・自由じゃない・・・!?」
「えぇ。そして、弱い学校のサッカーチームを破壊しはじめた。その破壊するためにその学校に送り込まれたものが、シード。そのシードだったのよ、私と剣城は・・・」
「2人が・・・シードっ!?そんなわけない!そんな悪い組織にいたなんて・・・嘘だよ!」
「嘘じゃないわ。しかし、私はフィフスセクターのトップに立つもの、聖帝の真の目的によってシードとして送り込まれた特別な存在だった。だけど、剣城(あいつ)は・・・サッカーぶ破壊の為だけに送り込まれたシード。でも、本当はお兄さんの手術代が欲しかっただけなのに・・・お兄さんを助けたかったのに・・・」
「そんな・・・辛すぎじゃないか・・・」
「っ・・・もう、いいかしら・・・話するのも、結構つらいもので・・・っ」
「か、楓ちゃん!?」
私は、ただ無意識で泣いていた。頬を、冷たい涙が伝う。
もう、暖かい思い出がたくさんできたのに、冷たい過去はそう簡単には消えない・・・そのことを痛感した。
「楓ちゃん・・・辛い事、思い出させちゃってごめんね。でも、話してくれてありがとう」
「なんで・・・そんな事、なんにも役立たないのに・・・」
「なんでもだよ。ただ、ありがとう」
「緑・・・ありがとう・・・」
また、私の頬を涙が伝う。
でも、その涙はさっきの涙よりも暖かかった。
緑が帰った後・・・
「剣城、盗み聞きしてばれてないとでも思ったの?幼馴染なのに」
私は、剣城にばれているということを話に行った。
「やっぱ、楓にはばれるよな。俺、ポーカーフェイス得意なんだけど」
「無意味よ。そういえば、1年の時にもあったわね。私の家の使用人に変装して・・・でも、なぜか雷門の制服着てて・・・」
「あれは、キャプテンが近くにいるってわかったからだよ。俺の制服、目立つからな」
「でも、今は普通の着ているじゃない。似合ってるけど?」
「楓もな。1年の時のロングも好きだったけど、2年になってのショートもいいと思うぜ?」
「・・・ねぇ、アンタ、性格丸くなったよね♪」
「お、お前もだ!優しくなったとおもうけど」
「ふふっ、そうかしら?でも剣城、そのまま優しくなったらもてるわよ?」
「・・・うるせぇ。お前も優しくなればいい。昔みたいに、もっと笑え。心の底から」
「剣城ぃ・・・」
「あと、俺の事、京介でいい・・・////」
「!・・・でも、昔、駄目って言ったじゃない?恥ずかしいって・・・」
「もういいよ。解禁」
「はぁい、京介・・・ふふっ、なんか変なのっ」
そして、私たちは久々に2人で帰った。昔の思い出話を、たくさんしながら・・・