ボールがくれた出会い 作:御沢
「ほらぁ!楓ちゃんの考えたメニュー、こなせていないわよぉ~!」
「「「は、はいぃ~っ」」」
地獄の強化合宿が、本格的に始まった。
私は、びっくりしている。昨日出会った海帆さんが、鬼と化して選手たちをびしばし鍛え上げている。マネージャーはもちろん、他の選手たちも唖然としている。
「海帆さん、すごいですね・・・」
「未雲もそう思う?だよね」
「私、こんなに厳しくメニュー、組んでいないのよ・・・」
「すっごいですね・・・私、そんなにできないです」
「私もだよ・・・」
「私・・・も・・・」
「すげぇな、あの人」
「うん、すごい。シン様も唖然」
私をはじめとしたマネージャー軍が、海帆さんのすごい鍛え方に対しての考えを、つぶやいていた。
「なに?皆、どうしちゃったの?」
「海帆さん・・・尊敬致します」
「やだぁっ!いくら高校生だからって・・・もう・・・」
「いや、そうではなく・・・」
「じゃあ、何かしら?」
「・・・全てを尊敬するわ」
「もう、何なの?」
練習が終わった後、私と葵と楓が海帆さんと話をした。もちろん、海帆さんの鍛え方についてだ。しかし、海帆さん、意外と天然なわけで・・・
そんな話をしていた時、海帆さんがふと誰かを探し始めた。
「誰を探しているんですか?」
私は尋ねた。
「えっとね、拓人君」
「神童・・・先輩ですか?」
「うん、今日の練習の成果について報告しようかなぁ・・・と思ったんだけど・・・」
「え?何で神童先輩なんですか?天馬じゃないんですか?」
「えっ・・・そ、そうね、天馬くんかしらね」
「そうだと思いますよ、キャプテンですし」
私たちは、その時気がついた。
海帆さんは、神童先輩の事が好きなのだ・・・と。
しかし、私たちは茜さんの手前、海帆さんの恋を応援することができない・・・私たちは、顔をゆがめた。幸い、海帆さんは気が付いていないらしい。
「あっ、拓人君!今日の報告するわね」
「えっ・・・天馬にしてくれればいいのに・・・」
「いいえ、天馬君にするよりよっぽど伝わりやすいわ。今日の練習を見ていて感じたの。天馬くん、確かにまとめる力、リーダーシップはあるわ。でも、きっと報告したところでまたマネージャーに戻ってくれだけよ?」
「そ、そうですね・・・」
「でしょ?じゃあ、私、健康管理をしてくるから、またね」
「はい、また・・・」
そして、海帆さんは遠くの方へとかけて行った。そのあと、私たちは神童先輩のところへと行った。そして、話を聞いた。私と葵は乗り気だが、楓は乗り気じゃないようだ。どうやら、事情を知っているらしい。まぁ、そのことには触れないでおいた。
「海帆さん、絶対神童先輩の事、気になっていますよね?」
「そうか?まぁ、しょうがないとは思うが・・・」
「なんでですか?」
「そ、それはだな・・・」
「先輩と海帆さんが、昔、付き合っていたから・・・ですよね?」
「あ、あぁ・・・」
「「えぇっ!?」」
「先輩たち、付き合っていたんですか?!」
「いつですか?」
「俺が中学校に上がった年、中1の時だ。まぁ、2人とも前の関係の方がよくなったから、2ヶ月で別れたが。俺も、『付き合う』ということがまだ分かっていなかったしな」
「へぇ・・・」
「そうなんだぁ・・・」
私と葵は、顔を赤らめた。そして、私はふと気がついた。
「ねぇ、何で楓は2人の関係、知ってるの?」
「えっ?」
「あ、そうそう、私も不思議だった」
「そりゃ知ってるに決まってるじゃない。先輩と海帆さん、よくウチの庭に来ていたから。お父様たちの仕事についてきたらしいんだけれど」
「へぇ・・・じゃあ、面識あったんだ」
「一応ね。でも、もうかれこれ2年くらい会っていなかったわ」
「何で?」
「それは・・・」
私たちは、見逃さなかった。楓が、おどおどとしながら、神童先輩の方を向いていることに。
「・・・言っても、いいんでしょうか・・・」
「・・・さぁ・・・海帆さんが、自分から言うだろう・・・」
私たちは、2人の表情をうかがって、それ以上追及しないことにした。