ボールがくれた出会い 作:御沢
楓が、高熱を出して早1週間。
楓の熱も、37度台まで下がり、(といっても、まだ熱はあるが)うなされることもなくなって来ていた。そして、話すこともとぎれとぎれではなく、すらすらとしゃべれるようになっていた。
しかし、専属の医師に診てもらってとりあえず明日まで断食する(つまり点滴で栄養を取る)ようになっている。
今は、俺が楓の看病の担当。
「京介・・・練習、どう?」
「練習か?いい感じだな。皆、確実に強くなってるしな。楓の方は、辛くないか?」
「う~ん・・・辛くないって言うと、ウソになるかな・・・って感じかな」
「・・・お前、熱があると素直だな」
「何よ?でも、そうかも。だって、反抗する気力、残ってないしね」
「そうだろうな。まぁ、いつもの楓じゃないのは、時たまでいいんだけど。やっぱ、ちっちぇころからの付き合いだから、変なカンジ・・・って感じだな」
「ふふっ・・・ねぇ、私、いつから練習に参加していのかしら?」
「またそれかよ・・・ったく、少しぐらい体の心配しろってーの。それに、まだ一応熱あんだぞ?」
「そうだった・・・じゃあ、体温計、とって」
「はいはい」
そして、俺は体温計をとる。
後ろを振り向くと、やっぱり熱があるからかしんどそうな顔をしている。まぁ、初めて楓に会った人は分からないと思う。普通の顔をしているけど、心の底ではしんどい・・・って顔だし。
「ほら、やっぱりしんどいんじゃねぇのかよ」
「そんなことないわ・・・ほ、ほら!早く体温計っ!」
「はいはい・・・」
そして、俺は楓に体温計を渡す。
測り始めて約1分後・・・
ピピピッ、ピピピッ
「あ・・・終わった」
「・・・で、何度?」
「37度7分・・・」
「やっぱ熱あるじゃねぇかよ」
「でもぉ・・・下がった方よ?前ほどしんどくないしぃ・・・」
「そうむきになるとこ、フィフスにいたころから変わんねぇよなー」
「京介、もうフィフスのこと話しても辛くないの?」
「あぁ。白竜とも和解できたし、今ではメールとかよくしてるけど」
「本当!?なんか、すごい進展ね」
「俺、マジで嬉しかったんだよな。そして、本当に楽しかったんだよ」
「京介って、白竜のこと話すとき、優しい顔するわ。実はね、私がゴットエデンにいたとき、白竜ってよく京介のこと話してくれて・・・私もその時はもう京介と知り合っていたし、よく2人で話したものよ。今、どうしているんだろう・・・元気かしら・・・ってね」
「そうだったんだ・・・知らなかった」
「・・・でもね、私がごうえ・・・聖帝によってゴットエデンから出たときから、私に嫉妬(?)したのか知らないけど、ああなっちゃって・・・」
俺は、そんな話を懐かしむように聞いていた。
すごく楽しい気持ちになれた。
しかし、その雰囲気はすぐに消え去った。
しばらく俺と楓が話していると、ドアが開いた。
「楓・・・ちょっといいか?」
「神童先輩・・・どうかされましたか?」
「山吹総帥からお電話だ」
「お母さんから・・・?代わっていただけます?」
「あぁ」
楓は、少し外に出てお母さんと話し始めた。
しばらく静かだったが、急に大きな叫び声が聞こえてきた。
一緒に部屋にいた俺、神童先輩、霧野先輩、雅野、喜多先輩が駆けて行ってみると、そこには電話がもう終わり、青い顔をしてたたずんでいる楓がいた。
「楓・・・?」
「・・・ち・・・どし・・・」
「何だ?何があったんだ?」
「母のところに、電話があったんです。今、逃走中の犯罪組織・ZSKS(ジーエスケーエス)から・・・」
「ZSKS・・・!?」
「何だ?それ」
「ZSKS・・・財閥資産家脅迫組織の略称だ。あらゆる財閥、資産家の息子や娘を誘拐し、多額の身代金を要求し、警察が現場に到着したときには、何事もなかったかのように消え失せている・・・そんな恐ろしく手ごわい組織だ」
「そんな組織から楓の家・・・山吹財閥に電話があったってことは・・・まさかっ!?」
「わ、私を・・・誘拐するために、今、どこにいるか教えろ・・・今日じゅうに教えなければ、母はもちろん、娘である私や使用人の皆さん、血縁関係のある鬼道財閥の皆さんまで・・・こ、殺す・・・と」
「「「「「!!!!!」」」」」
その事件と、楓の治りきっていない熱・・・この2つが、大変な事態を起こすなど、誰がこのとき予想しただろう・・・