ボールがくれた出会い 作:御沢
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・
規則正しい音が、静かな部屋に響く。
俺は間に合わなかった。
楓が、ZSKSに誘拐されて、奴らの基地を見つけ、それを警察に知らせたまではよかったのだ。しかし、そこで予想外の事態が発生した。―――楓が、奴らに全身を拳銃で、撃たれてしまったのだった。
楓は、病院に着くと一息つく間もなく緊急手術室に運ばれていった。そして、4時間もの間手術され、全身にあった弾丸を摘出した。弾丸は全部で9つ。腹部に5つ、肩に2つ、腰のあたりに1つ、腕に1つだった。そのほかにも、足や腕を少なくとも11発ほどの弾丸がかすめた跡があった。その全ての傷口から大量に出血し、大量出血で死に至るところまで来ていた。しかし、それは俺や神童先輩たちをはじめとする多くの部員、マネージャーたちのの血液型が、楓と同じO型だったため、なんとかまぬがれることができた。
しかし、その後に襲ってきたのは今までの疲れと、高熱・・・命の危機は、なかなかなくならなかった。
皆が、円堂監督に先導され合宿所へ戻った後も、俺と神童先輩、霧野先輩と鬼道コーチは病院から帰らなかった。同じ班の班長、副班長、親しいメンバー、それに血縁者・・・皆、それぞれ楓とは結構かかわっていた。だから、皆がのこった。
しばらく、鬼道コーチが消えていた。それは、楓のお母さんである桜子さんに電話をしていたからであった。鬼道コーチは、帰ってきたときに暗い表情をしていた。そして、
「伯母さんに・・・怒られた。まぁ、当然だ。俺は、従妹(かえで)を守れなかったんだからな。怒鳴るに・・・泣くに決まっているか・・・」
と、それだけ言い残して、楓の病室に入って行った。それに続くように俺たち3人も楓の病室に入った。
楓の病室は、俺たち4人の仮眠室でもあった。6つベットがあり、1つには楓がたくさんの機械や点滴につながれて眠っている。残りの5つのベットのうち、1つ以外全てカーテンを取り払った。1つだけ残したのは、1人になりたい時用だった。
皆、努めて顔には出さないようにしているが、ショックは大きかった。いつも一緒に戦っている少女が、突然目の前で真っ赤に染まったのだ。ショックじゃない方がおかしい。あの時のことはもう忘れようとするが、忘れようとするたびに、涙がこみ上げてくる。そういう時に、1つだけ残ったベットを部屋として使うのだ。
部屋に入ると、真っ先に目に飛び込んでくるのは、楓である。
たくさんの機械につながれ、腕には大量の点滴。他にも全身を包帯でぐるぐる巻きにしている。そんな姿を見るのが痛々しくて、3人でそろって目をそらす。
そして、各自の仮眠用ベットに入り込む。しかし、皆なかなか眠れなかった。そして、霧野先輩と鬼道コーチが寝たころ、俺は神童先輩に呼ばれ、2人で屋上へといった。
「剣城。大丈夫か?」
「はい・・・というとウソになります。本当は、隠しきれないほどつらいです」
「そうだな。俺も辛い。しかし、幼いころから楓を見てきた剣城はもっと辛いんだろうな」
「そうかもしれません・・・しかし、皆さんもそれくらい辛いはずです。仲間ですから、楓は」
「そうだな・・・もし」
「もし・・・?」
「もし、警察に知らせていなかったらこんなことにはならなかったんだろうか?」
「・・・分かりません。でも、もう終わったことです」
「剣城・・・そうだな。悪かった」
「いいえ。気がおかしくなったり、過去を悔やむことはあってもおかしくありませんから」
「すまない。じゃあ、もう寝るか・・・」
「・・・はい」
俺たちは、話し終わって屋上を後にした。
そして、今度こそ自分の仮眠用ベットで眠りに就いた。
楓と再び出会った1年前から感じるこの気持ち・・・
楓が笑っていたら、俺も嬉しい。
楓が泣いていたら、俺も悲しい。
楓がほかの男子(ヤツ)と話していたら、なぜか悔しく、その男子に怒りを覚える。
楓が危険にさらされそうになったら、守ってやりたい。―――守れなかったが
楓を幸せにさせてあげたい。
この感じ、何なんだろう・・・
俺は、ずっと昔の夢を見ながら考えていた。