ボールがくれた出会い 作:御沢
私たちは、元気がなかった。
それは、やはり楓の大怪我が関係していると思う。
「楓・・・」
私は、誰もいないことを確認してその少女の名前をつぶやいた。
1日前に見たときは、熱があったが自身に満ち溢れるかっこ可愛い美しすぎる笑顔で、私たちに接していた。しかし、半日前に起こったあの忌まわしい事件により、あの笑顔は消えてしまった。次に私が楓を見たときには、楓はもう青白い顔で真っ赤に染まっていた。
私と葵をはじめとするマネージャーたち、いつもは冷静な部員たち・監督・コーチたちも声にならない悲鳴を上げていた。
現実を受け入れたときには、楓はすでに救急車に運ばれていた。その救急車に、円堂監督、鬼道コーチ、豪炎寺コーチ、剣城君、神童先輩、霧野先輩が向かっている。私も、救急車の方へ行こうと思った。しかし、足がすくんで動かなかった。楓のことは、本当に心配している。しかし、あの真っ赤に染まった姿を見れる自信がなかった。
次に楓に会ったのは、手術が終わり包帯に包まれて、機械や点滴につながれて病室に運ばれる一瞬だった。
「楓っ!いやっ!どうしちゃったのっ!?」
「緑君っ・・・!」
私は、緑君に抱きつく。そして涙を流した。周りを見ると、葵は天馬君に、ちかちゃんは霧野先輩に、水鳥さんは錦先輩に・・・という様に、付き合っている付き合っていない関係なしに、女子は男子に抱きついて必死に涙を堪えようとしていた。
そのことを思い出し、私はまた涙を流してしまった。
「っ・・・うっ・・・」
泣いている声が聞こえないように、私は泣き声を必死にこらえる。
「未雲ちゃん?」
「りょ・・・緑君・・・っ・・・!」
「大丈夫?辛かったんだね・・・」
「うっ・・・わぁぁぁぁぁんっ!!!!!」
私は、緑君にばれた瞬間、声をこらえず大泣きした。そんな私を、緑君は少し震える手でさすってくれていた。
「・・・落ち着いたかな?」
「・・・うん・・・もう・・・大丈夫・・・」
「辛かったんだよね・・・」
「うん・・・だって・・・いつも・・・元気なのに・・・」
「分かるよ、分かる。皆、辛いもんね。特に、未雲ちゃんと・・・楓は・・・仲いいしね・・・」
「そう・・・だから、見たことないし・・・もういやっ・・・」
「大丈夫。泣きたかったら泣いていいから・・・」
「・・・大丈夫・・・ごめんねっ・・・さぁ!私たちが元気出さなきゃっ!練習するよ~!」
「未雲・・・ちゃん・・・そうだね!頑張ろう!」
私たちは、元気を無理やりにでも出して、表へ出て行った。
「みなさぁんっ!頑張れぇ~!」
「未雲ちゃん・・・何でこんな時に・・・」
「今だからだよ!元気出さないと!だって・・・こんな事、楓も望んでない!じゃないの?紫音ちゃん?」
「未雲ちゃん・・・」
私は、一緒にいた紫音ちゃんに問いかける。
その問いかけに対して、紫音ちゃんは笑顔で答えてくれた。
「そうだね!楓ちゃんも、そんな事、望んでないよね!」
私たちは、本調子は出なかったが、でも、今出せる最高の調子で頑張って練習をした。
―――――いつか必ず元気になる、楓の為に。
HRI(ホーリーロードインターナショナル)まで、あと5カ月・・・