ボールがくれた出会い 作:御沢
「楓、どうしたの?その、髪留め!」
「あ・・・これね」
私は、宿に帰って来て真っ先に未雲に朝はつけてなかった『髪留め』について突っ込まれた。その髪留めは、小さくてきれいな紅の紅葉のついた繊細なものだった。
未雲が突っ込んだことにより、私の周りにたくさんの人がやってきた。その中で、来ない人が数人いた。今日、一緒に行動していた神童先輩、霧野先輩、ちかちゃん、そして京介だ。私の髪留めの理由を知る神童先輩、霧野先輩、ちかちゃんは、京介をニヤニヤしながら見つめている。そして京介は、顔を真っ赤にして、先輩たちのいないこちらを見ている。
これは、今日の昼、観光中の出来事だった。
「やっと来た!in 韓国!」
「ったく、ちかはテンション高いな」
「だって、初めての海外だもんっ!それに、ここにいる人たちは、私と蘭丸君が付き合ってるって知ってる人たちだもんっ♪」
「・・・そうだったな。じゃ、盛り上がるぞ!」
私と京介と神童先輩と霧野先輩とちかちゃんで、私たちは韓国観光をすることになった。
しかし、私は韓国にも留学経験ありなため、あまり盛り上がらない。そんな私の気持ちになって、気がつく人はいるはずがない。でも、それに気が付いている人がいたらしい。
―――京介だ。ずっと私の顔を覗き込んでいる。
「・・・京介、私の顔に何かついているの?」
「別に。ただ、何かあったんだろうなと思ったんだ。楽しくないとかか?」
私は驚きを隠しつつ、京介にだけは、小声で本音をぶちまけた。
「だって、韓国は一番長い4カ月も留学していたんだもの。しょうがないわ」
「でも、このメンバーで来たのは、初めてだろ?だったら、楽しいんじゃねぇのか?」
「!!」
京介の口から出た、その言葉に私は考えさせられ、そして最高の笑顔だと思う顔で
「そうね」
と返した。その会話が終わったころ、少し前を歩いていた3人が、私たちを呼んだ。どうやら、ちかちゃんが可愛いアクセサリーショップを見つけたから、入りたいらしい。私たちもOKを出して、5人でそのアクセサリーショップへと入った。
ショップの中は、結構質素だった。しかし、全てが手作りの品らしく、1つ1つが繊細だった。それはまるで、1つ1つの形の違う雪の結晶のよう・・・。その中に、私の目を引くものがあった。決して派手とは言えないそのアクセサリーは、きれいな赤い紅葉のついた髪留めだった。
でも、私は特別ほしかったわけでもなかったから、そのままスルーしようとした。
その時だった。京介が、私の肩を掴んで、こっちに振り向かせたのだった。私は驚いて、目を見開いた。しかし、京介は何かを私の頭に当てているらしく、こっちを見ていない。
「な、何しているの?」
「・・・」
「ちょっと、京介!?」
「よし、これだな」
そして、京介は私の頭から何かをはずした。―――それは、私の目に留まっていた紅葉の髪留めだった。私が驚いている間にも、京介はその髪留めをレジに持って行き、軽いラッピングを済ませてもらっていた。そして数分後、再び私のところへ戻って来て、私にそのラッピングされた包みを渡した。
「はい、これ」
「えっ・・・?」
「これ、気になってたんだろ?」
「そ、そうだけど・・・」
「実は俺も、楓に似合うと思ってた。だから、俺からのプレゼントってことで」
「で、でも・・・悪いよ」
「いいんだ。俺があげたかったんだ」
戸惑っている私の手をとった京介は、その手に包みを握らせた。そして、
「絶対返すんじゃねぇぞ?」
とだけ言った。その光景を、ただ黙って見ていたらしい3人は、京介がそう言った後、冷やかしの口笛を吹いた。でも、私はすごくうれしかった。だから、すぐに包みから出して、髪につけた。その髪留めは、私の金髪に映えているように思った。
私は、そのことを思い出して、1人でくすっと笑った。
今日は、なんか、楽しい1日だったわ♪