ボールがくれた出会い 作:御沢
対韓国戦まで、あと1日となった今日。
イナズマジャパンのメンバーたちは、最終調整へと入っていた。昨日の観光の疲れが出ていないか、それ以前に、ここまで来る長旅の疲れが出ていないかなど、自分の体のことも気にしつつ、特訓にも励むメンバーたちの姿が、そこにはあった。
「皆、頑張ってるね」
「そうだね。だって、世界への第一歩だもん」
「でも、ほどほどにしておかないと、明日体調を崩しでもしたら、元も子もないわよ」
「確かに、楓ちゃんの言うことはうなずかるカモ・・・」
「そうですね、紫音さんの言うとおりです。葵さんや、未雲さんの『頑張ってほしい』という気持ちもありますけど、楓さんや紫音さんの『無理はしてほしくない』っていう気持ちも、分からなくもないし・・・難しいところですよね・・・」
「でも、ちかちゃん。皆、特訓するなって言う方が、難しいみたいだよ?」
「うん、そうみたい」
「だな」
「和葉ちゃん、茜さん、水鳥さん・・・確かにそうかもしれませんね」
私たちマネージャーも、様々な思いを抱え、明日への練習を眺めていた。
私は、そんな姿を見ながら、ふと、雷門中学校に転校してきた日のことを思い出していた。
―――全ての始まりは、あの転校初日だった。
不安と期待、半々の気持ちで転校してきた私は、後ろからかけられた声に正直ドキッとした。恐る恐る振り返ると、そこにいたのは藍色の髪の毛の女の子と、金髪っぽい茶髪(赤髪?)の女の子、葵髪の毛の男の子、茶色い巻き髪の毛の男の子、茶色い髪の毛で、水色のバンダナを付けている男の子、黒髪をお団子にしている女の子がいた。この6人が、空野葵、山吹楓、剣城京介、松風天馬、西園信助、黒谷ちかという名前だなんて、その時はまだ知らなかった。
その後、6人は私を職員室へと連れて行ってくれて、音無先生と会った。そして、楓と剣城君が、クラスメイトだと知った。
そして、ドキドキのあいさつ。私は、長い赤毛のツインテールを揺らしながら頭を下げて、決して堂々しているとは言えない小さな声で、「宜しくお願いします」と言った。みんながその後拍手をしてくれて、とっても恥ずかしかったっけ。
そして、休憩時間に楓に「サッカー部のマネージャーにならない?」って言われた。
私は最初、本当にサッカーなんて興味もなかった。むしろ、私たち家族を・・・いや、なんでもない、だから、平気で『サッカーなんて興味ない』って言ってしまった。今、そんな事を言っている人がいたら、私、怒っちゃうなぁ。それくらい、また、サッカーが大好きになった。
楓の話すことは、すごく楽しそうなことばかりだった。その話を聞いているうちに、私は、サッカーに少し興味を持ち直した。そして、サッカー部のマネージャーになることにした。
サッカー部の部員の人たちは、皆面白くて個性豊かな人達だった。私は、ますますサッカーに興味を持ち直せた。・・・でも、今思えば、あのときは『サッカー』に興味を持ったんじゃなくって、『雷門中学校サッカー部の部員』に興味を持ったのかな・・・?
そして、私はたくさんのことを知った。昔は知らなかったようなこと。それは、必殺技や、必殺タクティクス、そして化身。全てがサッカーのことだけど、覚えていてすごく楽しかった。皆が、やっているのを見ていても楽しかった。だって、皆がきらきらしていたから。
そして、緑君とも出会った。彼は、やがて、私の『大切な人』になった。そして今日までが、ずっと夢のような日々。こんな日々が、ずっと続けばいいのに・・・
そう願い続けて、早半年。
今は、もう10月の終わりにさしかかっていた。HRIアジア予選まであと1日、本戦まであと1カ月にさしかかっている。
本当に、この半年間、楽しかったな~♪
私が1人で思い出に浸っていると、ポケットに入っている携帯が鳴った。
ディスプレイを見ると、そこにはお父さんの名前があった。
「なぁに、お父さん?」
私がいつもの調子で出たのに、お父さんの声は沈んでいた。そして、次にお父さんの発した言葉によって、私は呆然とした。
「すまない、未雲。本当に急なんだが、今週の日曜日をもって、我々は日本から離れることとなった。移転先は・・・イギリスだ」
「・・・ウソ・・・なんで、そんな急に・・・」
「未雲・・・」
「私、嫌だからっ!」
思わず張り上げてしまった私の声に、マネージャーのみんなも、選手のみんなも、私に注目する。
それでも、私は自分を止められなかった。―――いやだ!絶対に、日本を離れたくないっ!皆と一緒にいて、日本代表の一員として、戦いたいっ・・・!
「未雲、よく聞いてくれ!」
「お父さん1人で・・・行ってよっ!私、嫌だっ!絶対に嫌だっ!・・・そんな、イギリスなんて・・・あそこには、私たちをおいて行った人たちがいるんだよっ!?お父さんは・・・お母さんや、最愛の息子に置いて行かれて、悲しくなかったのっ!?悲しかったんでしょっ!?だから・・・あんなに泣いてたんでしょっ!?毎日、毎日・・・っ!」
「っ!!」
「・・・私は、絶対にあの2人を許さないっ!だから、イギリスになっていかないっ!」
私はそういうと、無理矢理お父さんからの電話を切った。そして、皆の目線が私に向いていることに改めて気がつき、固まった。その皆の気持ちを代弁するかのように、楓が前に出て、私に問いかけた。
「未雲・・・イギリスって・・・?お母さんって・・・?最愛の息子って・・・?」
「・・・」
私はただ、黙りこくって、その場に立ち尽くした。
未雲の秘密とは・・・?