ボールがくれた出会い   作:御沢

58 / 83
幼馴染×幼馴染

「未雲・・・大丈夫かしら・・・」

私は、未雲が駆けて行った方を見て目ながらつぶやいた。

 

 

私、未雲のあんな顔を見たことがなかった。―――怒りに震え、透き通るようなピンク色の瞳は、私と同じ赤色・・・しかし、それは怒りと憎しみに満ちた鮮血のような赤色・・・そんな赤色に変化し、その瞳には大粒の涙を浮かべていた。

ふと、よこにいる仲間(みんな)の方を見た。よく考えれば、イナズマジャパンにメンバーたちの生い立ちについて、私はよく知らない。知っているのは、ごくわずか。その中にも、京介のように兄に取り返しのつかないような怪我をさせてしまい、日々負い目を感じている者、神童先輩のように大型財閥の跡取り息子として、日々やりたくもないような勉強に励む者、天馬のように幼いころから親戚に預けられ、親と一緒に過ごした時間の少ないもの、そして、私のように父は生まれたときから居ず、母も幼いころになくなり、兄妹とも引き離され、超巨大財閥の跡取りに引き取られた者・・・というような複雑な事情を抱えるものはたくさんいる。

 

 

そして、未雲もその1人だった―――。

 

 

そのことに気がついてやれず、未雲が必死に考えた嘘を信じ切ってしまっていた自分が恥ずかしい・・・気付いてやれなかった自分が情けない・・・ずっと、あの優しい瞳の奥に、あんな憎しみに満ちた感情が眠っていたなんて、知らなかった・・・

 

 

「ごめんなさいっ・・・」

「か、えで・・・」

そう隣にいた京介が呟いて、私の頬をなでた。京介の雪のように白い指先には、私が流したのであろう涙がついていた。そして、自分でも頬に触れる・・・涙が、流れていた。その涙は、かつて私が緑の前で流した、あの『冷たい涙』だった。その涙は最初、頬伝うように流れていたのに、いつの間にかボロボロ・・・とあふれてしまっていた。そんな私を気遣ってか、京介は皆にばれないように

「じゃ、俺たちはちょっと・・・散歩してきます」

とだけ言い残して、私を連れていってくれた。皆、この状況だから各自の思いは自分たちの思いと同じだと思ったのだろう。だから、だれも止めなかった。

 

 

「ひっく・・・ひっく・・・ひっく・・・」

「大丈夫か?」

「きょ、京介・・・あ、りが、と・・・ひっく・・・」

「あの状態じゃ、楓、ヤバかっただろ?」

「う、ん・・・た、ぶん・・・」

私は、何でも見透かされたような気持ちになって、なぜか恥ずかしくなった。そして、気がついた。―――私、京介の前だったら、自分に似合わないようなこと・・・思いっきりの笑顔で笑ったり、こういう風に泣きじゃくったり、すぐ怒っちゃったり・・・全部、出来るんだ・・・

「ねぇ・・・京介?」

私は、嗚咽のとまった声で、静かに話した。

「私、アンタの前でなら、何でもできる見たい。皆に見せているのは、自分でもかっこよく見せようとする笑顔―――それが偽りの笑顔だとは言えないけど・・・や、こんな風に自分らしくないくらい泣きじゃくったり、すぐにカチンってきて、怒っちゃったり・・・とにかく、何でもできるみたいなの。だから、お願い。もう少しだけ、一緒にいて・・・」

京介の白い肌が、少しだけ赤くなったように感じた。私の肩に回している手が、少し熱くなっているように感じた。私は、熱でもあるのかと心配になって、

「大丈夫?熱でもあるの?」

と聞いた。すると京介は、意表を突かれたように眼を見開いて、それからいつものような顔に戻った。そして、

「ちげぇよ。ったく、楓は自分のことになるとすっごい鈍くなるよな」

「へっ・・・?そうなの?」

「そういうところが、鈍いって言ってるんだ。まぁ、これもオレにしか見せられない一面なのか?」

「ん~・・・そうかもね」

「なら」

京介がまわしていた腕の力が、少し強くなった。

「もう少しと言わず、ずっと一緒にいてやるよ。お前が死ぬまでな」

言ったあとで、京介は顔を真っ赤にした。でも、私にはその理由が理解できない。やっぱり熱があるのかと心配になり、

「ほらっ!やっぱ、顔が赤いよっ?熱がないにしても、なんか疲れがたまってるんだよっ!明日、大切な試合なんだから、もう私は落ち着いたし、旅館に帰ろっ?」

というと、京介はまた驚いたように目を見開いた。

「え・・・あ・・・うん・・・」

そう返してくれた京介は、少し落ち込んだような顔をしていたけど、私は気にせず、京介の手を取って旅館へと走った。

 

 

「ったく、楓はいつまでたってもかわんねぇな」

「へっ?なんか言った?」

「・・・いや、何も言ってねぇよ」

「そうっ?ほら、急ごっ!」

 

 

私が、京介の言った言葉を理解するのは、もう数年後の話・・・

 

 

 




京介の言ったあの言葉・・・

「もう少しと言わず、ずっと一緒にいてやるよ。お前が死ぬまでな」

の意味・・・❤いやぁ~っ、言わせてみたかったんですよね~ww

鈍感な楓ちゃんと、ちょっと背伸びしたい京介君・・・この2人の気持ちは、果たして実るのでしょうか?

・・・実らせますっ!!絶対っ!!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。