ボールがくれた出会い 作:御沢
「うむ・・・予想はしていたが、さすが、チェ・チャンスウ。攻略は難しそうだな・・・」
前半戦が終わって、まず発せられたのは、鬼道コーチのそんな言葉だった。その顔は、とても深刻そうに歪んでいた。そんな顔を見ていると、私の顔まで歪んできた。
そんな顔を皆がしたまま、しばらく沈黙の時間が流れた。
その雰囲気を変えようと、楓がまた話し始めた。
「でも、こちらが先取点をとっていますし、相手も同じような雰囲気ですから、おそらくこちらが少しは有利だと思いますよ?」
その声に皆がのった。あちらこちらから、「そうだな!」「そうですよ!」などの声が聞こえてくる。私も、近くにいた葵に
「そうだよね?」
といった。その声に、葵は
「もちろんだよっ!!」
と、びっくりするくらい大きな声で答えた。それが、やはり興奮が冷めていないことを物語っていた。
ピピ―――っ!!
後半戦が始まる笛の音が、今鳴った。
「皆ー!!気合い、入れていきましょー!!」
天馬君が、皆に気合の掛け声をかけた。その声が消えた瞬間、楓がボールをちょこんと剣城君に蹴った。そして、皆が一斉に動き始めた。
チェ・ソンリンをはじめとする『ファイアドラゴン』のDF達が、なぜか一斉に楓をマークした。理解できない私たちと違って、選手の皆が、一斉に顔をゆがめる。そして、剣城君がボールをキープし始めた。どうやら、楓にパスを出すつもりだったらしい。
その瞬間だった。一気に楓に集まっていたDFたちが、剣城君に集まって行った。なかなかパスが通らない日本代表。そして、「『パーフェクトファイアプレス』!!」と誰かが叫んだ。そしてから、何かが剣城君と楓を囲んだ。その光景を見ていた監督・コーチたちが叫んだ。
「あれは・・・パーフェクトゾーンプレス!?」
「いや、違う・・・!威力が、何倍にもなっている!」
その『パーフェクトファイアプレス』に囲まれた楓と剣城君は、しばらくの間戸惑った表情を浮かべていた。そして、その油断に入りこんだファイアドラゴンは、ボールを奪った。虚を突かれたような表情を浮かべた2人は、しばらく動きが停止したが、すぐにボールを奪おうと動いた。
それからしばらく、ボールの攻防戦が続いた。
―――やっとの思いでボールを奪った日本は、化身が出せる人が皆化身を出して、アームドをした。そして、GKの信助君以外の化身が使える人たちが前に出て、錦先輩、緑、神童先輩、楓、剣城君、天馬君の順番でボールを上に蹴りあげた。蹴りあげるたびにボールの威力は増していき、最後の天馬君が蹴るときには虹色に輝いていた。最後に天馬君が蹴りあげたボールを、上で錦先輩と緑が蹴った。そして、いつの間にかゴール前にまできていた楓、剣城君、神童先輩が最高威力でボールをける。当然そのボールの行き先は、韓国のゴールへと突き刺さる。
しばしの沈黙・・・
そして、会場中で大歓声が沸き起こる。
私たちも、大声をあげて喜ぶ。そのさなか、化身アームドをした6人の荒い息が聞こえてくる。
このシュートを受けた韓国代表は唖然。監督のチェ・チャンスウも、唖然としている。
一方日本ベンチでは、鬼道コーチがドヤ顔を受かべてグラウンドを眺めている。その顔に気がついた豪炎寺コーチが、鬼道コーチに質問する。
「鬼道・・・お前、知っていたのか?」
「・・・あぁ。名付けて『キラースター』だ。名付け親は、狩屋だ」
「・・・まぁ、アイツにしてはかっこいいんじゃないのか?」
「そうだろう?だから、そのまま使用した」
その会話を聞きながら、私は興奮していた。―――まばゆい虹色の光―――ものすごい威力―――完成度の高さ・・・そんな技をいつの間に作っていたのか、不思議に思いながらも、やはり興奮は抑えられなかった。
ピッピ―――っ!!
試合終了のホイッスルが鳴った。
試合の結果は、2対0で日本代表の勝ちだった。日本側のスタンドからは、大きな歓声・拍手が沸き起こる。選手たちも、手を取り合って喜ぶ。
そう、真イナズマジャパンは、世界への第一歩を踏み出したのだった。