ボールがくれた出会い 作:御沢
日本代表は、次の対戦相手のオーストラリア代表『ビッグウェイブス』に呼ばれて、なぜか沖縄に来ていた。
「なぜ、沖縄なのかしら?」
「そうだな。稲妻町に戻ってはいけないのか?」
私は京介に質問する。
そんな質問が、チームのあちらこちらから聞こえてくる。皆、謎が解けていないみたいだ。それは、監督・コーチたちも同じらしい。
「何の用なんだ?」
「さぁ、俺もわかんないんだよな~」
その時だった。後ろから、キキィィィィ・・・という大きな音が聞こえてきた。皆が一斉に振り向く。そこには、眩しいくらいに輝く、黄色のオープンカーがあった。その車が止まった時、その車の中から、誰かが降りてきた。黄土色の肌で金髪、グリーンの瞳のその人に、私は見覚えがあった。
「イルカお兄ちゃん・・・っ!?」
「あぁ、そうだよ。やっぱりメイプルは日本代表だったか」
「えぇ、久しぶりだね」
「楓、その人は・・・?」
私は、未雲に聞かれてその人のことを紹介することにした。―――といっても、かつてのイナズマジャパンである、監督・コーチ達は分かっているみたいだけど。
「彼は、イルカお兄ちゃんことニース・ドルフィンさん。私が、7歳だったころに留学していたオーストラリアで、私の面倒を見てくれていたお兄さんです。なぜイルカお兄ちゃんかというと、お兄ちゃんが通称ドルフィンって呼ばれているからです。だから、私もお兄ちゃんには私の『楓』から、サトウカエデなどの樹液を濃縮した甘味料であるメイプルシロップの『メイプル』を取って、メイプルって呼ばれているの。そして、監督たちは分かると思いますが、11年前の『ビッグウェイブス』のキャプテンでした」
そう、お兄ちゃんはそんなすごい人なのだ。私は、オーストラリアには1ヶ月半しかいなかったから、あまり特別な思い出は無いけれど、青い海、白い砂浜など、美しい風景が今でも目に焼き付いている、そんなところなの。
「そっか~、楓はやっぱりドルフィンとも知り合いだったのか」
「はい、監督。・・・それにしてもイルカお兄ちゃん、何で沖縄になんか呼び出したの?」
私は、最初の疑問を解くべく、質問をする。
「あぁ、それはね・・・俺の住んでいるオーストラリアの地域が、今、大変なことになっているんだよ、メイプル―――」
「大変な・・・事?」
「あぁ・・・」
お兄ちゃんの美しいグリーンの瞳が、悲しげに曇る。私の大好きなそのグリーンが曇るのが、私はいやだった。
「お兄ちゃん!!私、手伝うわ!だから、私にも相談して!!ドルフィンお兄ちゃん!」
「メイプル・・・楓・・・」
きれいなグリーンが、再び晴れてきた。私は、より一層力が入る。
「ちょっと待った」
気合が入ってきたころに、京介が私を呼び止める。
「何よ、京介」
「楓1人じゃさせないぜ?俺も手伝う」
その京介の言葉に、私はポカァンとした。その間に、他の人たちも口々に
「そうだよ!」
とか
「僕もする!!」
や
「手伝いますっ!」
など、口々に言う。私はイルカお兄ちゃん―――ドルフィンお兄ちゃんの方を振り向く。お兄ちゃんも、唖然としている。
「どうする?お兄ちゃん・・・?」
「どうするって・・・」
私は、お兄ちゃんのその美しいグリーンの瞳を見つめながら、しばらくだまって、それから息を吸って、皆に向かって言った。
「皆、お願いしてもいいかしらっ!!」
「いいに決まってるじゃん!!」
「当たり前だよ」
「no program(ノープログラム)・・・って言うんだよな?」
皆が、快く引き受けてくれて私は嬉しかった。そして、本題に入る。
「じゃあ、お兄ちゃん。その、大変なことって・・・?」
「それは・・・オーストラリアの海が、消えたんだよ。とある少女・青山楓(あおやまかえで)が引っ越してきてからね・・・彼女は、別名『マーメイド界の魔女』と呼ばれているらしい」
「青山・・・」
「「「「「楓っ!?」」」」」