ボールがくれた出会い   作:御沢

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楓ちゃんと出会って1日後・・・

突然、楓ちゃんが自分の生い立ちについて話し始めた。何がきっかけか、何が起こったのかは誰にもわからないが、話そうとしてくれたから、聞くことにした。

 

 

「皆さん、私は、皆さんに話しておかないといけないことがあります。私は・・・実は・・・」

楓ちゃんの肩がふるえている。瞳は、少し涙腺が緩むと、すぐに涙があふれてきそうなくらいに潤っていた。

「私は・・・実は・・・交わってはいけない存在なんです。そして・・・生まれてきてはいけない存在だったんです」

楓から話を聞いていた人たちは、暗い顔のままうつむく。知らなかった人は、目を見開いて、楓ちゃんを見つめる。でも、今は質問してはいけないし、話し終わっても質問してはいけない、という雰囲気を皆、感じとっているのだろう。誰も口をはさまなかった。

「私の父は・・・この島に伝わる魔女伝説の主であるブロワ=マサガールの子孫、青山豪(あおやまごう)です。そして、私の母は、名もなきマーメードでした。でも・・・」

間が一瞬あく。皆、真剣な目でその空気に耐える。

 

 

「母は、私を産んですぐに父に殺されました。その後、この島の島民の皆さんの話によると、父は不治の病に冒されて、魔法の力も役に立たず、呆気なく亡くなったそうです。そして、私もこの島から島流しにされました。でも、私は海の底で生きる美しき民、マーメードの娘です。だから、水の中でも息ができ、ドルフィンさんの住む、オーストラリアに流れ着いたのです。しかし、私は海に近寄ると、全ての水が引いてしまうという恐ろしい魔力を持ってしまっていた。だから、流れ着いたオーストラリアの地でも、様々なうわさが飛び交いました。そして、とうとうこの地についてしまった・・・それが、私の『始まり』でもあって、『終わり』・・・」

「え・・・!?」

今まで保たれていた沈黙を破ったのは、意外にも楓だった。

「どういうこと、楓ちゃん?この地が、あなたの『始まり』であって『終わり』・・・って・・・まさか、あなたは、この島に伝わる伝説のブロワ=マサガールと、同じ『終わり』方をするわけじゃあ・・・ないわよ、ね・・・?」

「・・・そのまさか・・・だよ・・・」

「いやっ!やめてっ!!あなたが、こんなとこで終っていいはずはないっ!!まだ、あなたの未来は無垢よ!何色にも染まっていない白だわ!今からなら、何色にだって染められるわ!!だから、考え直してっ!!」

今までにないほど、楓は大声で何か私たちには理解できないことを、楓ちゃんに向かって叫ぶ。

「どういうことだ?楓」

剣城君が、楓に何を叫んでいるのか聞く。振り向いた楓の瞳は、あせっていることを物語っていた。

 

 

「楓ちゃん、この島の伝説の魔女であって、楓ちゃんの祖先でもあるブロワ=マサガールのように、自分の手首を切って、海に身を投げるつもりだわ!!」

「「「えぇっ!?」」」

皆が絶句した。天馬君が、その続きを聞こうと質問をした。楓は、その質問にも答えた。

「マーメードの血は、海に混じると海の栄養素となるの。それに、いくら海の中で息ができるからといっても、血が出ていたら、おぼれ死んで、海の泡となって消えてしまうの!!・・・そう、おとぎ話の『人魚姫』のように・・・楓ちゃんっ!!」

また楓が叫ぶ。ふと、楓ちゃんの方を見ると、私も大声で叫んでしまった。―――彼女は、すでに片手に刃物を持って、崖のある岩のところまで行っていた。私たちは、ただひたすら楓ちゃんの名前を叫びながら、その方向へと向かって走った。

 

 

そして、楓が腕をつかんだ。そのすきに、すぐ後からついてきていた剣城君が、刃物を振り落とす。きゃ、と短い悲鳴が響いた。そして、パァァァァンッ・・・乾いた音も響いた。―――楓ちゃんが、葵にしばかれた音だった。瞳から涙を流して、しばかれた左ほほを抑える楓ちゃんに向かって、静かに楓が言い放った。

「あなたは確かに『交わってはいけない存在』だったかもしれない。でも、『生まれてきてはいけない存在』じゃないの。そして、もちろん『消えてもいい存在』でもないの。あなたは今、ここにいる。今、ここで生きている。大丈夫、あなたの運命を受け入れてくれる人はいる。そんな人が見つかる、それまでは、ドルフィンお兄ちゃんが面倒を見てくれるわ。あなたは、もう『孤独(ひとり)』じゃない。私たちも、ついているから」

わぁぁぁぁぁぁんっ・・・!!!楓ちゃんが、へなへなと座り込んで、大泣きをした。その背中を、私がさする。その瞬間、皆が分かりあえた。どんないきものも、共存していかないといけないんだ。

 

 

それから数日後・・・

 

 

「見てみて、皆ぁ!!」

雷門中学校、HRI日本代表部室にて。楓が、ケータイの画面を開いたまま、部室に入ってきた。オーストラリア対日本のサッカーの試合は、昨日終わったところだ。

「なんだ、楓」

「見て頂戴、ドルフィンお兄ちゃんからのメールよ!でも、送ってきたのは・・・楓ちゃん!」

皆の表情が、緩んだ。

「読むわね。・・・日本代表の皆さん、お久しぶりです。青山楓です。昨日のオーストラリア対日本の試合、見ていました。私としては少し複雑だけど、勝利おめでとう!私を助けてくれた、皆の勝利、やっぱり心から喜びます。次は、いよいよ決勝・カタール代表との試合だね。頑張って!!青山楓」

自然と、私たちは顔を見合わせて、また微笑んだ。

さぁ、次はいよいよ決勝、カタール代表『デザートライオン』との試合。

 

 

そして、私の最後の試合(ラストゲーム)。

 

 

 

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