ボールがくれた出会い 作:御沢
「じゃあな、ちか。元気でやれよ?」
「もう、分ってるってばぁ。じゃあね、お兄ちゃん」
私は、雷門中学校の裏庭で、とある人―――お兄ちゃん、黒谷拓也(くろたにたくや)とケータイで話していた。お兄ちゃんは、高校3年生で、とっても明るくて、サッカーが大好き!男女ともに好かれる、いわば私の自慢のお兄ちゃん!・・・でも、お兄ちゃんには少し『普通ではないところ』がある。
「ちかちゃん?何をしているの?」
「あわわっ!!・・・か、楓さんでしたかぁ・・・びっくりしたぁ・・・」
「あらら、驚かせてしまったのね。ごめんね」
そこにいたのは、2年生の先輩、山吹楓さんだった。楓さんは、いつもと違って一般に言う『お嬢さま結び』をしていた。だから、少し雰囲気がお姉さんぽかった。
「いいえ、ただお兄ちゃんと話していたんです。・・・楓さんは、知っていますよね?」
「・・・えぇ、拓也さんのことよね。両目の視力がないのよね・・・」
「はい・・・」
そう、私のお兄ちゃんは、視力がない。
簡単に言うと、盲目なんだ。
だから、サッカーもできないし、サッカーどころか勉強を普通にすることでさえもままならない。そんな姿を見ていると、少し辛かったりもする。私がサッカー部のマネージャーになったのも、実はお兄ちゃんの為でもあった。
「・・・私にもね」
「はい?」
楓さんが、ふと話し始めた。
「私にも、1歳年上のお兄ちゃんがいるのよ」
「初耳ですっ!?」
私は、衝撃の真実を知った。楓さんにも、お兄さんがいたのだ。
「ほ、本当ですかぁ?」
「えぇ、本当。でもね、母親が幼いころになくなったから、私と兄は別々の親に引き取られ、育ってきた。だから、名字も違うのよ」
楓さんの実のお母さんが、飛行機事故で亡くなっていたのは、噂くらいで聞いたことはあった。でも、それが真実だと知ったのは初めてだった。
「でもね、お兄ちゃんったら、私が大けがした時も合宿所に会いに来てくれたの。それで思ったわ。あぁ、別々に生きてても、やっぱりお兄ちゃんなんだ・・・って。それからよ。ずっと、連絡なんか取り合っていなかったのに、最近はちょくちょくとるわ」
「そうなんですか」
「あ・・・ごめんね」
「えっ・・・!?」
楓さんが、急に謝り始めた。理由は分かっていたけれど、そこはあえて言わなかった。そして、
「いいえ、いいんです」
とだけ言った。
私と楓さん・・・
両方とも、家族に複雑な事情を抱えているけれど、それでも毎日が幸せなんだと思う。私は私で、お兄ちゃんが盲目でも、毎日電話で、イナズマジャパンのことを話してあげると、お兄ちゃんは喜んでくれるし、目が見えていたころからの優しい性格は変わっていないから、やっぱり私の大好きで、自慢のお兄ちゃんなんだ。
楓さんの、ちょっといい話も聞けたし、なんだかこの数分が楽しかったな♪
よしっ!明日から、本格的に決勝戦へ向けての練習が始まる。
頑張っていこうっ!!そして・・・世界への切符をつかむんだっ!!
ん・・・?そういや、剣城先輩や未雲さんにもお兄さんがいるんだよね?未雲さんは聞きにくいから、剣城先輩に、今度聞いてみようっ!