ボールがくれた出会い 作:御沢
「つっるぎ先輩っ?」
「ん?なんだ、黒谷」
「いやぁ・・・先輩、お兄さんがいましたよね?」
「あぁ、でも、急に何だ?」
楓さんとのお話から、しばらくたったころ。私は、剣城先輩を見つけて、お兄さんの話について聞くことにした。でも、剣城先輩は、なぜそんな事を私がきくのかわからないから、怪訝そうな顔をして、私の方を見ている。
「えっと、さっき楓さんとお兄さんの話をしていたんです。そしたら、そういや剣城先輩にもお兄さんがいたなぁ・・・って思ってですねぇ・・・」
「なるほどな。まぁ、いい。でも、何で楓と話したんだ?それも、お兄さんのことについて」
「えっ?先輩、知りませんかぁ?楓さんに、お兄さんがいることを・・・」
「!!・・・初耳だ・・・」
「へぇ・・・まぁ、そのことについては、あとで聞いてください、楓さんに。・・・で、先輩のことを教えてくださぁいっ!!」
私の、甲高い響く声にびっくりしたのか、オレンジ色の瞳を見開いて、私のことを見つめる。そして、しばらくそのまま止まってしまったが、また優しい顔をして話し始めてくれた。
「俺の兄さんは、入院しているんだ」
「えっ・・・ご、ごめんなさい・・・先輩・・・」
「いいんだ。でも、聞け」
「あ、はい」
悪いこと、聞いちゃったな・・・そんな気持ちのまま、剣城先輩は私に向かって話し始めた。その顔は、なぜか優しいものだった。―――なぜ、お兄さんのことを話すのに、辛くないの?先輩は、私と違って、強いから・・・?
「兄さんが入院したのは・・・俺のせいなんだ」
私は絶句。
自分が、大好きなお兄さんの未来を・・・その・・・奪ってしまったのにもかかわらず、そんなに優しい顔をすることができるのは、なぜ・・・?
そのことを悟ったのか、剣城先輩は少し苦笑に似た笑みを漏らした。
「最初は俺も辛かった。だから、中1―――今の、黒谷たちのころだな―――そのころは、間違った道へと進んでいた。でもな、それを正してくれたのは、他でもない兄さんだった。まぁ、兄さんだけだとは言い切れないが、やっぱり大方が兄さんだった。そして、俺に対して憎むどころか、むしろ俺を応援してくれた。だから、俺は兄さんがとても大切だ」
「先輩・・・」
「あらっ、ちかちゃんと京介じゃないの。何を話しているの、珍しいメンツだし」
「楓さん!」
「楓、いや、自分たちの兄について話していたんだ。って、お前、兄さんいたんだってな」
「えぇ、って、言ってなかったかしら?」
「あぁ」
そこにやってきたのは、この会話を始めるきっかけとなった、楓さんだった。さっきまでは『お嬢さま結び』をしていたのに、いつの間にか『ポニーテール』になっている髪の毛を、軽く揺らしながら、私たちの近くにやってきた。そして、どうやら事情を知っているらしい楓さんは、剣城先輩の方を少しだけ心配するような視線で見つめた。
そんなことはもうわかっているのだろう。剣城先輩は楓さんの方を見もせず、ただ
「大丈夫だ」
とだけ言った。
あぁ、やっぱりこの2人は信頼や、友情や・・・全てのものを共有しているんだ・・・私も、いつか蘭丸君と・・・
「ちかぁ~、探したぞぉ~?」
「蘭丸くんっ!」
その時、私の頭の中を埋め尽くしていた本人が、私の目の前にやって来てくれた。私の顔は、花がパッと咲いたように明るくなった。その顔を見て、楓さんと剣城先輩は顔を見合せて笑った。
私達、お兄さんに対しては、何かしらの複雑な事情を抱えてる・・・
でも、それに負けないくらいそれぞれの兄弟に『愛情』を持っている。だから、なんてこともないんだ。
それに、それと同じくらい大切な人もいるから・・・!!