ボールがくれた出会い 作:御沢
時はたち、いよいよ明日はアジア予選決勝戦、対カタール代表『デザートライオン』との最終決戦の日になった。そして、その次の日は、いよいよ私が、イギリスへと旅立つ日。
「はぁ・・・なんかやっぱり緊張してきたなぁ・・・」
「未雲・・・大丈夫かい?」
ふっと気がついたら、横にいたのは緑だった。緑は、私が明後日引っ越さなくてはいけないことを知っている。緑の表情は、私以上に辛いようなものだった。私は、努めて明るくふるまった。でも、それは逆効果だったみたいで、緑の顔はさらに暗く沈む。
「無理、しないでよ。僕は・・・僕には、ちゃんと本当の心で接してよ」
あぁ、何で緑はこんなに優しいの・・・?彼の優しさに、私はもう何度も救われた。本当に孤独に感じて辛かった時、先が真っ暗でわからなくなってしまいそうになった時、私を支えてくれた、とても愛しい人。そんな彼とも、もう明日でお別れ。私たちは、明日でこの関係を終わらせる。どんなに好きでも、別れなくてはいけない時がある、それは、まさにこの事なのだと思った。
すぅ・・・頬を何かが伝った。それは、私の流してしまった涙だった。―――涙なんか、絶対に見せないって決めていたのに、私、なんでっ・・・!
ぎゅっ・・・!!
緑が、私のことをきついくらいに抱き締める。いつもは、ちゃんと手加減してくれていたのに、今日は別れを惜しむように、ただ抱いてくれた。その瞬間、私の瞳から、あふれんばかりの涙がこぼれおちて行った。
「わぁぁぁぁんっ・・・ひっく・・・うぅ・・・ぐずっ・・・」
「・・・」
無言でただ、私の背中をさすってくれる緑。愛しい、あぁ、別れたくない。もっと、ずっと一緒に日々を過ごしたい・・・!しかし、時は過ぎて行ってしまう。
対デザートライオン戦、当日。
「よし、皆!気合入れていけっ!!」
「「「「はいっ、監督っ!!」」」」
円堂監督と、選手皆の声が響く。そして、今日は楓はマネージャー。上はピンク色のジャージ。中には、紅のTシャツを着ていて、下にも同じくピンクのジャージを着ている。腰には、ベージュや赤の混じった、美しいウエストポーチを付けている。
ピピぃ―――!!!
試合開始のホイッスルが鳴った。
「神童先輩っ!!フォルテッシモですっ!」
「あぁっ!『フォルテッシモ』!」
ピィ―――!!あっという間に、1点を日本代表が取る。あっという間のこと過ぎて、皆が、ただ呆然とした。また、緑の『グリーンリーフズ』という技も決まり、日本代表は、前半だけで2点も取ってしまっていた。もう、ただあっという間のことで、驚く暇さえもなかった。
ただ今、休憩中・・・
「はぁい、皆ぁ~!!お疲れぇ~!!」
私が、頑張って大きな明るい声で、皆を励ます。
「あ~っ!意外と簡単に2点取れたけど・・・」
「まだ油断はできないな」
「そうだな。まだ油断は禁物だ」
皆の、気を抜かない姿勢。あぁ、こんなところが日本代表『真イナズマジャパン』なんだ。私の惚れた、ほれなおしたサッカーは、イナズマジャパンの美しいサッカーなんだ。
「ほら、未雲!まだドリンクあるぅ?」
「えっ、あ、うん、大丈夫だよっ、楓!」
楓が、気を聞かせてくれる。そんな優しさにも、私は惚れているんだと、また思った。だから、私もそれにあう様に、明るく返事をした。
そして、いよいよ後半が始まる。
いよいよ、本当の最終対決(ラストゲーム)だ・・・!