ボールがくれた出会い 作:御沢
さぁ、いよいよ後半戦―――私の最後の試合(ラストゲーム)―――が始まる。
今、試合は2対0で、日本代表が有利に進んでいる。きっと・・・ううん、絶対に日本代表は、世界への切符を手にすることができるはず!
ピピぃ―――!!!
いつもより、ひときわ大きいように聞こえたホイッスルが鳴って、後半戦が始まった。
始まってしばらくは、ボールの攻防戦だった。その名の通り、両チームが奪っては守り、とられては攻め・・・その繰り返しだった。その時間は、灼熱の太陽の下で過ぎてゆき、確実に、じりじりと選手たちの体力を奪っていた。この日は、もう11月の半ばだというのにもかかわらず、まるで真夏が戻ってきたかのように、とにかく暑かった。だから、両チームの選手たちにも、少しずつ変化があった。
イナズマジャパンで最初に変化があったのは、中1の真男君だった。DFとして、『防』に全力を注いでいた真男君が、突然フィールドの真ん中で、倒れこんでしまったのだ。ピッピぃー!と、短い笛が鳴り、ちかちゃんや和葉ちゃんたちがフィールドへ出て行った。
「真男君っ!?大丈夫っ??」
「ちかっ、清原君、どうっ?」
「和葉っ、真男君、もしかしたら熱中症かもしれないっ・・・!だから、えぇっと・・・キャプテンを呼んでっ!!」
その声は、呼びに行かなくても天馬君の耳に届いたらしく、神童先輩に
「円堂監督に、伝えておいてください」
とだけ言って、真男君のところへと走り寄った。はぁはぁはぁ・・・苦しそうな真男君の声が、ベンチにいる私たちの耳にまで聞こえてきた。そして、しばらくして真男君は、円堂監督に付き添われて、担架で保健室へと運ばれていった。
しかし、だからといって試合が終わるわけではない。それからも、試合は続く。
試合に大きな変化が起こったのは、相手チームのパスが通った瞬間だった。
「今だっ!!」
カタール代表の監督である、ビヨン・カイル監督の声が響いた。にたぁぁ・・・今にもそんな音が聞こえてきそうな、そんなドヤ顔で、ビヨン監督は選手1人1人と何かジェスチャーを交わしていた。
「ビヨンお兄さん・・・?」
横では、もうおなじみの楓が、おそらく留学した時にお世話になったのであろうビヨン監督の名前を、つぶやいていた。そのビヨン監督のジェスチャーの後から、カタール代表の攻撃が変わった。『防』は薄くなったが、その代わり攻撃が強くなっていた。
そして、さすが決勝まで進んできただけのことはあり、化身を選手全員が出すことができていた。そんなチーム全員の化身のパワーを、『化身ドローイング』と呼ばれるものによって、半永久的に持続していた。そのパワーは、キャプテンであるマルコル・サーの化身に注がれる。その化身で、
「『グランドキラー』!!」
そんなシュートが、日本代表のゴールへと向かう。
「信助っ!!」
「っ!・・・任せてっ!!」
信助君が、頑張って力を振り絞って、化身を出してアームドする。しかし・・・
「あぁっ!!」
ピピぃ―――!!!
日本代表が、この予選大会、初失点をした。
皆の表情が、一瞬暗くなる。しかし、それが皆のばねとなった。今までにないほど情熱のこもった声で、天馬君がさけぶ。
「まだ1点あるし、もっと差を広げるぞっ!!」
「「「「おぉ―――っ!!」」」」
この1点は、皆にとってどうやら『未来へのパワー』になったようだった。そこからの、日本代表の巻き返しはすごかった。パスだって普通に通り始めたし、シュートも頻繁に打つ。相手だって、アームドが出来る人はいなかったらしく、アームドをすれば点が入る・・・そんな感じになった。そして・・・
ピピぃ―――!!!
「試合終了、試合終了ですっ!!勝ったのは・・・4対1で、日本代表『真イナズマジャパン』ですっ!!」
わぁぁぁぁぁ!!!!
大きな歓声が、スタジアム中を包む。―――あぁ、終わったんだ。皆が、世界への切符を手にできた。そして、私の最後の試合(ラストゲーム)も・・・終わったんだ。
プルルルル・・・プルルルル・・・
私のケータイが鳴る。ディスプレイには、『お父さん』。
あぁ、ついに時は来たのね・・・
あふれそうな涙をこらえて、私は電話に出た。でも、私はお父さんの第一声によって、脱力してしまい、その場に座り込んでしまった。そんな私に気がついた楓が、心配そうに私の顔を覗き込む。
「未雲?どうしたの?」
「・・・し、・・・った・・・」
「へっ?何、もう1度言ってちょうだい?」
「引っ越し、無くなった・・・」
「そう・・・って、えぇっ!?」
「引っ越し、無くなったのぉ!!」