ボールがくれた出会い   作:御沢

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ある意味『病』の、心を豊かにする感情

朝からずっと、わくわくが止まらない。

料理長や執事たちにも内緒で、私は京介と出かける。でも、それは今までにないくらいドキドキしていて、それと同じくらいわくわくが止まらない。

 

 

鉄塔広場の見晴らしがようところで、京介が待っていた。赤い無地のロンTに茶色のダッフルコート、ダメージジーンズをはいて、こげ茶のブーツをはいている。

「きょ、京介っ、きゃあっ!!」

私は京介のところへと走ろうとして、つまずいた。きゃあ、と短い悲鳴をあげて倒れ込んだ私を、おっと、と言いながら、京介は私を支えた。

「ったく、大丈夫か?」

「う、うん・・・っごめんね・・・」

その後、京介は顔を真っ赤にして首を振った。そして、私を見つめる。―――分かっている。京介が待っているのは、私の返事・・・。私は歯を食いしばって、上目遣いに京介を見上げる。いつの間にか肩くらいまでのびていた髪の毛が、さらさら・・・と風に揺れた。おそるおそるゆっくり、私は口を開く。そしてギュッと目を閉じて、小さいでもはっきりした声で言った。

「私は・・・私も好きです」

その瞬間、京介がぎゅう・・・と、私のことを抱き寄せた。私もほっぺたが、見る見るうちに赤く染まってゆくのがわかった。お互いに真っ赤な顔を見つめあって、そして―――

 

 

―――私と京介の、影が重なった。

 

 

唇を離した後、また見つめ合い、2人で微笑んだ。

「・・・じゃあ、行くか」

「・・・うん、行きましょう」

私たちは、手を強く握ったまま町に向かって歩き出した。しばらく歩いたころ、前の方に見慣れた顔が2つ見えた。しかし、その2人はどういう関係かわからなかった。―――その2人とは、神童先輩と茜さんだったのだ。2人は、お互いにどうすればいいのかわからないような顔をして、ただ並んで歩いていた。

「あの2人・・・なんだろう?」

私たちは2人でそろって、首をかしげた。ふっと目の前にいた神童先輩の表情を見てみると、困ったような嬉しいような表情をして、横を向いている。先輩の頬は、さっきの私のように紅に染まっている。そして、私たちを見つけたのか、あ・・・という表情でこっちを眺めている。

「楓、剣城・・・」

「先輩、こんなところでお会いするとは・・・」

「楓ちゃん、偶然だね♪剣城君も」

「あ、はい」

・・・ということで、私たち4人は近くのカフェに入った。まぁもっとも、京介は残念でならないような表情を浮かべていたけれど。

 

 

その途中で、霧野先輩とちかちゃんが偶然やってきた。そのタイミングで、神童先輩が私と京介を呼んで、 別の席に着いた。茜さんはというと、さほど気にした様子はなく、笑顔でちかちゃんとはなしている。まぁ、霧野先輩の顔が恐ろしかったが。

 

 

「それで?先輩、どんなお話でしょうか?」

私が問いかけると、先輩は顔を真っ赤にし始めた。京介は、なぜか席をはずした。私にはわからない、この先輩が顔を真っ赤にした理由を、いち早く察したのだろう。

「じ、実はだな・・・俺は、最近山菜さんを見るとドキドキするんだ。目があって微笑みかけられると、やばい・・・」

「・・・えっ?」

それって・・・先輩・・・まさか・・・茜さんに・・・?

「えええええぇ――――!!!」

1人で驚いている私をよそに、先輩は「俺は、どこかが悪いんだろうか」などとつぶやいている。神童先輩って、意外と鈍いのね・・・。まぁ、私に言われたくないでしょうけれど。私は、熟したリンゴのような神童先輩に対して、ただ一言だけ発した。

「・・・それは、ある意味では病ですが、毎日を豊かにする感情ですよ。決して悪いものではありませんから大丈夫です」

目を点にしている先輩をよそに、今度は私がいつの間にか京介まで加わっている4人のいる机に、駆けて行った。

 

 

結局その日はそれで終ってしまったけれど、また今度は京介と2人で行きたいな・・・♪

 

 

その後、朝、京介との待ち合わせに向かっていたときに手配したプレゼントを整理して、監督たちと最終確認をして、引退式の電話を皆にかけた。―――もちろん、皆が参加することになった。

 

 

 

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