ボールがくれた出会い 作:御沢
私は京介と今、鉄塔広場にいる。
理由はよくわからないけど、京介は深刻そうな顔をしている。
私と京介は、名門・稲妻高校に通っていた。まぁ、私は高校2年生の時、フィディオお兄さんの誘いでイタリアに1年間くらい留学をしていた。でも、私たちの交際は順調だった。
ラスト1年間は私も日本で過ごして、稲妻高校を卒業した。そして、そのまま市立稲妻大学へ。心友の葵ともずっと仲良くなれて、毎日が順調だった。
でも今から1週間くらい前に、そんな生活が一転した。そのことは、京介も海外にいるお母さんも、お兄さんも知らない。私本人しか知らないとても重大なことだった。
そのことも伝えたくて、私は京介の誘いにも乗った。
ふっと急に京介が口を開いた。
私はこぶしを握り締めて、ただただ京介の顔を見つめた。そして、京介が言った言葉は、予想もしていないことだった。
「楓、名字を変えるつもりはないか?」
私は驚いて、思ったことを口にした。
「何、私の名前をまた変えるの?影山楓から光山楓、そして山吹楓から何に変わるのよ?」
京介は、ポカンとした表情をした。そして、しばらくして苦笑し始めたが、だんだんそれが大笑いへと変わっていった。
「な、何よぉ?」
「い、いやぁ・・・相変わらず天然だよな、楓。俺が言ったのはな、山吹楓を剣城楓に変えるつもりはないか?ってことだよ・・・//////」
今度は私はポカンとする。そして、ようやく理解できたその言葉の意味。―――剣城京介と結婚してください、に、私は驚く。きっと本来なら、泣いて喜んで、「はい、私でよければ・・・っ」とか言うのだろう。でも、今の私にはそんなことは言えない。重大な秘密があるからだ。
「えっと・・・きょ、京介・・・その・・・すごくうれしいけど・・・でも・・・私は・・・あの・・・」
私は涙目になりながら、京介に訴える。その返事―――NO―――だと分かってくれた京介は、私の考えもしなかったことを言う。
「そうか、すまないな・・・俺はお前の夫にはふさわしくないんだな・・・」
「違うっ!でもねっ・・・!」
私は必死で反論する。でも、そう聞こえてしまったとしても仕方がない。だって、今結婚すれば、京介の負担はものすごく多くなる。私の心の中の葛藤を知らない京介は、私に背を向けて立ち去ろうとする。
「待って、京介ぇ!」
「もうこれ以上、えぐらないでくれ!」
私は、ただ誤解してほしくなかった。それだけで、あの重大な秘密をばらしてしまった。
「違うのっ!私は京介が大好きっ!出来ることなら一緒になりたい!でも・・・」
京介もこちらを向いて、真剣なまなざしで私を見つめる。そして、私はとうとう言ってしまった。
「・・・私、子供ができたみたいなの・・・だから、今結婚すれは京介の負担が大きくなってしまう・・・まだ19歳だし、未来は真っ白だもの・・・私は、京介に有意義な人生を過ごしてほしい・・・っ!」
これ以上ないと言わんばかりに驚いた京介が、私を見降ろす。私は、自分のお腹を押さえてぎゅう・・・っと目をつぶる。―――そう、私には京介との子供ができていたのだ。私だって、ずっと悩んだ。この子を下ろせば、京介と一緒になれる。でも、この子はとても愛しい・・・。究極の選択だった。
その時、京介は私の頭をなでた。ぽろり・・・私の瞳から、涙が流れる。京介は、優しい顔をしてこっちを見つめる。そして、思ってもみなかったことを言った。
「なんだ、そういうことか・・・なぁ、自分の子供を愛しくないと思う男が、この世にいると思うか?少なくとも、俺は違う。もし楓たちと別れて、どんなに有意義な人生を過ごせたとしても、俺は一生幸せにはなれない。だったら、どんなにつらい道でも楓と我が子と一緒に生きる道を選ぶ。楓、お前には『俺と子供と一緒に生きる』という選択肢はなかったのか?俺は、楓がどんなことを言っても、一緒に生きる」
ポロポロ・・・と、今までこらえていた涙があふれてきて、私は大泣きをした。こんなに泣いたのは初めてだった。そして、分かった―――あぁ、これが『幸せ』なんだな・・・。
嗚咽しながら、私は言った。
「京介っ、私とっ・・・この子とっ、一緒にっ、生きてっ、くれるのっ?」
すると京介は、私の惚れた笑顔で言った。
「当たり前だ。昔言っただろ?『もう少しと言わず、ずっと一緒にいてやるよ。お前が死ぬまでな』って」
私はあの日のことを思い出した。―――あぁ、あの言葉はそういう意味だったんだ。今、ようやく理解できた。そして、私たちは強く、でも優しく抱き合った。
・・・と、そばで誰かの泣く声が聞こえた。その方向を向いてみると・・・
「あ、葵っ!?い、いつから聞いて・・・」
―――私の心友の葵がいた。そばには天馬がいて、2人の手には指輪がはめられている―――左手の薬指に。
「楓っ、幸せな家庭を築いてねっ!そして、これからもよろしくねっ!」
「葵・・・えぇ、もちろんよ!あなたたちも、幸せな家庭を築いてね!」
そして、私たちは強く抱き合った。すると京介が、
「子供がいるんだけど」
と言ったら、葵は優しく抱きしめてくれた。―――大好きだよ、ずっと大好きだよ、心友(ベストフレンド)。
それから、さらに時はたって、私は元気な子供を産んだ。―――名前は、剣城剣聖(つるぎけんせい)。私たちの愛しい愛しい命。
そして、葵と天馬にも『愛しい命』ができた。
―――そこからさらに、私たちはたくさんの人たちと再会を果たす。